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第十一章 最強魔法対決!

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 復活した魔物たちは、真純たちめがけて突進して来る。真純は、とっさに新たな呪文を唱えていた。霧を発生させる呪文だ。

「ギ……、ギギ?」

 視界が霞んだ魔物たちは、動きを止めた。だが、これは一時しのぎだ。あの噴火でも退治できなかった魔物たちを、一体どうすればいいだろう。その時、フィリッポが真剣な表情で呟いた。

「こうなったら、封印の魔法陣を使うしかありません」
「この場でできるものか?」

 ルチアーノが尋ねる。

「ええ。ですが、道具が……」

 フィリッポが視線をさまよわせたその時、城内から魔術師たちが飛び出して来た。何やら、様々な荷物を抱えている。

「殿下! 皆様! これらをお使いくださいませ!」

 そう言って彼らが広げたのは、羊皮紙だった。フィリッポが、目を輝かせる。

「これは……、魔法陣用の?」
「はい。専用のインクもございます!」

 一人が、壺を差し出す。フィリッポは、大きく頷いた。

「これで、魔法陣を描けるはず!」
「私たちも、手伝います!」
 
  魔術師たちも、口々に言う。フィリッポは、地面に落ちていた木の枝を拾うと、インクに浸した。だが、いざ羊皮紙に向かうと、彼は首を振った。

「ダメだ。ペン代わりにするには、小さすぎます」
「じゃあ、もっと太い枝を探します!」

 真純とジュダは、駆け出そうとしたが、フィリッポはそれを押し止めた。ジュダに向かって告げる。

「ジュダさん。私の荷物の中に、ステッキがあります。持って来てくれますか?」

(ステッキ……!)
 
  ベゲットの形見だという、あれか。インクに浸してしまってよいのだろうかと真純は心配したが、あれこれ考えている暇は無かった。魔物たちが突進して来る気配がしたからだ。真純は再度、霧発生の呪文を唱えた。

「あったぞー!」

 どうにか魔物を足止めしている間に、ジュダが戻って来た。フィリッポの物以外のステッキも、何本か抱えている。

「あの占い狂いの領主、たくさん持ってたから強奪してきたぜ。分担して描くだろ?」

 そう言ってジュダは、フィリッポと魔術師たちにステッキを配った。

「よし、やりましょう!」

 フィリッポの号令と共に、魔術師たちは、羊皮紙に何やら紋様を描き始めた。すごい勢いだ。

(間に合ってくれ……!)

  だが、その時遂に魔物の一匹が、霧を破って飛び出して来た。それを皮切りに、他の魔物たちも続く。
 
「フィリッポ殿、頼むぞ。時間稼ぎをしておく!」

 ルチアーノはそう言うと、高速の風で魔物たちを吹っ飛ばした。だがそれらは、すぐに復活し、こちらへ向かって来る。そこでジュダが、ペンダントを手に呪文を唱えた。たちまち、炎が発生する。それは、一部の魔物に火傷を負わせた。

「殿下、もうすぐです!」

 一人の魔術師が叫ぶ。真純は、羊皮紙をのぞき込んだ。これが魔法陣か。確かに、紙面のほぼ九割は埋まっている。だがその時、インク壺をのぞいたフィリッポが、顔色を変えた。

「インクが足りません!」

 魔術師たちは、愕然とした表情になった。

「そんな……。我々が持って来たのは、これだけです」 
「ええと……、そのインクでないとダメなんですか?」
 
 真純は、恐る恐る尋ねてみた。フィリッポが、黙って頷く。一同は、呆然とした。魔法陣は、あと少しで完成だというのに……。
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