198 / 242
第十一章 最強魔法対決!
20
しおりを挟む
復活した魔物たちは、真純たちめがけて突進して来る。真純は、とっさに新たな呪文を唱えていた。霧を発生させる呪文だ。
「ギ……、ギギ?」
視界が霞んだ魔物たちは、動きを止めた。だが、これは一時しのぎだ。あの噴火でも退治できなかった魔物たちを、一体どうすればいいだろう。その時、フィリッポが真剣な表情で呟いた。
「こうなったら、封印の魔法陣を使うしかありません」
「この場でできるものか?」
ルチアーノが尋ねる。
「ええ。ですが、道具が……」
フィリッポが視線をさまよわせたその時、城内から魔術師たちが飛び出して来た。何やら、様々な荷物を抱えている。
「殿下! 皆様! これらをお使いくださいませ!」
そう言って彼らが広げたのは、羊皮紙だった。フィリッポが、目を輝かせる。
「これは……、魔法陣用の?」
「はい。専用のインクもございます!」
一人が、壺を差し出す。フィリッポは、大きく頷いた。
「これで、魔法陣を描けるはず!」
「私たちも、手伝います!」
魔術師たちも、口々に言う。フィリッポは、地面に落ちていた木の枝を拾うと、インクに浸した。だが、いざ羊皮紙に向かうと、彼は首を振った。
「ダメだ。ペン代わりにするには、小さすぎます」
「じゃあ、もっと太い枝を探します!」
真純とジュダは、駆け出そうとしたが、フィリッポはそれを押し止めた。ジュダに向かって告げる。
「ジュダさん。私の荷物の中に、ステッキがあります。持って来てくれますか?」
(ステッキ……!)
ベゲットの形見だという、あれか。インクに浸してしまってよいのだろうかと真純は心配したが、あれこれ考えている暇は無かった。魔物たちが突進して来る気配がしたからだ。真純は再度、霧発生の呪文を唱えた。
「あったぞー!」
どうにか魔物を足止めしている間に、ジュダが戻って来た。フィリッポの物以外のステッキも、何本か抱えている。
「あの占い狂いの領主、たくさん持ってたから強奪してきたぜ。分担して描くだろ?」
そう言ってジュダは、フィリッポと魔術師たちにステッキを配った。
「よし、やりましょう!」
フィリッポの号令と共に、魔術師たちは、羊皮紙に何やら紋様を描き始めた。すごい勢いだ。
(間に合ってくれ……!)
だが、その時遂に魔物の一匹が、霧を破って飛び出して来た。それを皮切りに、他の魔物たちも続く。
「フィリッポ殿、頼むぞ。時間稼ぎをしておく!」
ルチアーノはそう言うと、高速の風で魔物たちを吹っ飛ばした。だがそれらは、すぐに復活し、こちらへ向かって来る。そこでジュダが、ペンダントを手に呪文を唱えた。たちまち、炎が発生する。それは、一部の魔物に火傷を負わせた。
「殿下、もうすぐです!」
一人の魔術師が叫ぶ。真純は、羊皮紙をのぞき込んだ。これが魔法陣か。確かに、紙面のほぼ九割は埋まっている。だがその時、インク壺をのぞいたフィリッポが、顔色を変えた。
「インクが足りません!」
魔術師たちは、愕然とした表情になった。
「そんな……。我々が持って来たのは、これだけです」
「ええと……、そのインクでないとダメなんですか?」
真純は、恐る恐る尋ねてみた。フィリッポが、黙って頷く。一同は、呆然とした。魔法陣は、あと少しで完成だというのに……。
「ギ……、ギギ?」
視界が霞んだ魔物たちは、動きを止めた。だが、これは一時しのぎだ。あの噴火でも退治できなかった魔物たちを、一体どうすればいいだろう。その時、フィリッポが真剣な表情で呟いた。
「こうなったら、封印の魔法陣を使うしかありません」
「この場でできるものか?」
ルチアーノが尋ねる。
「ええ。ですが、道具が……」
フィリッポが視線をさまよわせたその時、城内から魔術師たちが飛び出して来た。何やら、様々な荷物を抱えている。
「殿下! 皆様! これらをお使いくださいませ!」
そう言って彼らが広げたのは、羊皮紙だった。フィリッポが、目を輝かせる。
「これは……、魔法陣用の?」
「はい。専用のインクもございます!」
一人が、壺を差し出す。フィリッポは、大きく頷いた。
「これで、魔法陣を描けるはず!」
「私たちも、手伝います!」
魔術師たちも、口々に言う。フィリッポは、地面に落ちていた木の枝を拾うと、インクに浸した。だが、いざ羊皮紙に向かうと、彼は首を振った。
「ダメだ。ペン代わりにするには、小さすぎます」
「じゃあ、もっと太い枝を探します!」
真純とジュダは、駆け出そうとしたが、フィリッポはそれを押し止めた。ジュダに向かって告げる。
「ジュダさん。私の荷物の中に、ステッキがあります。持って来てくれますか?」
(ステッキ……!)
ベゲットの形見だという、あれか。インクに浸してしまってよいのだろうかと真純は心配したが、あれこれ考えている暇は無かった。魔物たちが突進して来る気配がしたからだ。真純は再度、霧発生の呪文を唱えた。
「あったぞー!」
どうにか魔物を足止めしている間に、ジュダが戻って来た。フィリッポの物以外のステッキも、何本か抱えている。
「あの占い狂いの領主、たくさん持ってたから強奪してきたぜ。分担して描くだろ?」
そう言ってジュダは、フィリッポと魔術師たちにステッキを配った。
「よし、やりましょう!」
フィリッポの号令と共に、魔術師たちは、羊皮紙に何やら紋様を描き始めた。すごい勢いだ。
(間に合ってくれ……!)
だが、その時遂に魔物の一匹が、霧を破って飛び出して来た。それを皮切りに、他の魔物たちも続く。
「フィリッポ殿、頼むぞ。時間稼ぎをしておく!」
ルチアーノはそう言うと、高速の風で魔物たちを吹っ飛ばした。だがそれらは、すぐに復活し、こちらへ向かって来る。そこでジュダが、ペンダントを手に呪文を唱えた。たちまち、炎が発生する。それは、一部の魔物に火傷を負わせた。
「殿下、もうすぐです!」
一人の魔術師が叫ぶ。真純は、羊皮紙をのぞき込んだ。これが魔法陣か。確かに、紙面のほぼ九割は埋まっている。だがその時、インク壺をのぞいたフィリッポが、顔色を変えた。
「インクが足りません!」
魔術師たちは、愕然とした表情になった。
「そんな……。我々が持って来たのは、これだけです」
「ええと……、そのインクでないとダメなんですか?」
真純は、恐る恐る尋ねてみた。フィリッポが、黙って頷く。一同は、呆然とした。魔法陣は、あと少しで完成だというのに……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
179
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる