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【ゆるネタ番外編】 魔女の日常
番外編 宮廷魔女の日常 ~口を塞がれてしゃべれないプレイ~
しおりを挟む「は……話が、あるんだが」
そう切り出したのはサフィージャだった。
すると王太子どのは、いつものあの、とろんとした甘いまなざしでこちらを見返した。
「はい」
金色の髪をふわりと傾け、うれしそうに聞き耳を立てる絶世の美青年に、サフィージャはそわそわしながら、なんとか言葉を探し出す。
「……こないだのことなんだが」
「ええ。どうしました?」
歯切れの悪いサフィージャを励ますように、クァイツは彼女の手を取った。
まっすぐにサフィージャを見つめながら、指を絡めて手を握る。
王太子どのとはつまり、こういう行動を照れもせずさらりとやってのける男である。
彼が日頃から振りまいている甘ったるい雰囲気に助けられて、サフィージャはもう少し勇気を出してみることにした。
「……お前はこないだ、川べりで私を見かけたと言ってたが」
あのときのクァイツは、サフィージャがちっとも自分を見てくれないといって嘆いていた。
サフィージャはそんなことないと否定したかったのだが、うまく言えないままになっていた。
「じ、実は、わ、私も……」
――私も見てたんだ。
それで、いいなあって、好きだなあって、思ったんだ。
サフィージャがそう続けようとすると。
なぜかクァイツはいきなりサフィージャの口を手でふさいだ。
「聞きたくありません」
えっ。
どういうこと。まだ何も言ってないけど。
戸惑うサフィージャに、クァイツはどこか狂気を感じさせるあの甘い笑顔で言う。
「あの日、強引にあなたを襲ってしまったことは謝ります。でも、だからといって別れてほしいと言われても聞けませんから」
「ふ……ふごっ……」
そんなこと思ってないけど。
あまりの飛躍にサフィージャが口をもごもごさせていると、王太子どのはサフィージャの口を押さえたまま、まぶしい笑顔ではにかんだ。
「……いやだな、私はあなたを離すつもりなんて全然ないって、まだ分かってなかったんですか? どうすれば伝わるんでしょうか。あなたも懲りない人ですよね。私だって今度逃げられたら何をするか分からないって、言いませんでしたっけ?」
一方的にまくしたてられて、サフィージャはなんとなく察した。
なるほど。彼なりにこないだの強引な抱き方に負い目を感じていたということだろうか。
蒸し返されたくないなと思っていたところにちょうど触れてしまったのかもしれない。
サフィージャとしてはむしろその逆だった。
毎日浴びるほど好きだと言われている割に、こちらからはあまり言えていないので、たまにはもう少し素直になってみようかな、というつもりだった。
それで手始めに誤解を解いてみようと思ったのだ。
川べりでたまたますれ違ったあの日、サフィージャが何を感じたのか。
説明したら、喜んでくれるんじゃないかと思った。
もう少し早くにサフィージャがこの件を切り出していればよかったのだろうが、例によって恥ずかしいなーとか、言いたくないなーとか、なんとかかんとかぐずぐずしているうちにクァイツの中で発酵が進んでしまったようだ。
「……でも、こないだのだってよかったでしょう? またしてあげますから、あなたは何も考えずに身を委ねてくださったらいいんですよ。私が責任持って、きちんと幸せにしますから。……ね?」
わー。誤解がー。ふくらんでいくー。
相変わらず人の話を聞かない男である。
困惑するサフィージャをよそに、クァイツは彼女の胸元に手を伸ばした。
片手で口を封じて、片手で胸をもみ始める。
「んー、んー」
もがくサフィージャの鎖骨に鼻先をくっつけ、はだけた胸に唇を這わせる。
その気もないのにいきなり舐められるとぞわぞわして鳥肌が立ってしまう。
それでも執拗に弄ばれているうちに、立っているのがつらくなってきた。
おとなしくなってきた頃合いを見定めたのか、サフィージャは口の中にハンカチをつっこまれて、ベッドの上に転がされた。
ハンカチを吐き出そうにもぎちぎちに詰め込まれていて、舌が動かない。
両手はひとまとめにして彼に拘束されている。
やめてー、取ってー。
誤解だから。話せばわかるから!
目で訴えかけても通じなかった。
「暴れないで。ちゃんと気持ちよくしてあげますから」
ふわふわの甘ったるい声で諭されて、サフィージャはちょっと傾きかけた。
クァイツの言うことは色々おかしいと思う。
思うのだが、彼のきらっきらの王子様フェイスであまーくやさしーく語りかけられていると、だんだんわけが分からなくなってきて、最終的に染まってしまうのである。
「ふふ。かわいい人だ。怖くないですよ」
しいていえば、サフィージャには彼の思い込みが一番こわかったが、抗議しようにも「んー」しか言えなかった。
やさしい手つきでゆっくり髪の毛をなでられ、サフィージャは悟った。
だめだこれ。抗えないやつだこれ。
「大好きです。私のかわいいサフィージャ」
やめて、くすぐったいからやめて。
ああっ、そこは。
はう、ひう。
サフィージャはこのへんで、いろいろあきらめて、脱力した。
心情的にはすでにおなかを見せて寝転がる、撫でられ待ちの犬だった。
***
「ん……っ」
胸の先がじんじんする。
ゆっくりていねいに舌でなぶられ、いじめられ、サフィージャはもう辛くなっていた。
かといって、もう降参だと口にすることもできない。ふさがれてしまっているからだ。
そんなこんなですっかり出来上がってしまい、蜜口のあたりに唇を押し当てられたときには、自分からそこを押しつけていきたくなるくらい身もだえた。
「~~ッ」
よく動く舌が花弁のふちを丁寧に舐め上げ、最上部の花芯を押しつぶす。
何度も往復されただけで、あっけなく登りつめてしまった。
「んんっ!」
敏感になりすぎてぴりぴりするそこに、濡れた感触が押しつけられる。
尖らせた舌先でぐりぐりと押し揉まれて、びくりと腰が引きつった。
からだの反応で達したことは分かっているだろうに、クァイツは止めようとしない。
唇でやわやわと挟み込まれているうちにちょうどいい甘い刺激がどんどん湧いてきて、また簡単にいかされてしまった。
自分の呼吸音が脳内に響く。
口につめこまれたハンカチのせいで呼吸がしにくく、酸素不足で意識があやうい。
救いようのないぐらいとろみを帯びた下腹部を満足げに確認してから、彼はようやく口を離した。
「本当にあなたはいきやすいですよね。自分でもそう思いませんか?」
それはお前がしつこいからだっ。
この男は放っておくと何十分でもサフィージャをいじめてくる。
そんなに長い責めだったらたいていの女は陥落するだろう。
返事をしたくても、首を振るぐらいしかできない。
「きっと相性がいいんですよね。……ね? あなたの相手は私しかいないと思いませんか?」
そこだけはサフィージャもしっかり頷いておいた。
これ以上話をややこしくしたくない。
「やはりあなたもそう思いますか。安心しました」
機嫌を直したクァイツが服を脱ぎ、断りもなく勝手に挿入を果たした。
大きなものが、ぎちりとあちこちに引っかかりながら入ってくる。
小刻みに揺らしながら奥まで一気に突き入れられて、目の前に火花が散った。
「……ッ、ん、んんン……ッ!」
彼は慣らしもせずいきなり竿を引き、奥まで容赦なくがつんと打ち込んだ。
荒っぽい動きで何度か繰り返されただけで、飼いならされきったサフィージャは反応してしまう。
さらに蜜をすくいあげ、湿らせた指先で、真っ赤に充血した花芯をぴんと弾かれた。
ごく弱く刺激されただけなのに、突き上げと同時に食らうと気が狂いそうなほど気持ちいい。
クァイツのものをぎゅっとしめつけるほどからだがはっきりと痙攣した。
「んっんんっ……! んー……!」
指先でクチュクチュといじくり回され、やめてとも言えず、強制的に高みに追いやられる。
首を真横にそらして身もだえるサフィージャに、クァイツが煽るような口調で言った。
「……すごい締め付けですね」
言わないでほしかった。
いつもそう思うのに、言われているうちにだんだん羞恥心と快感がぐちゃぐちゃに入り混じって、わけが分からなくなって、結局信じられないくらい深いところまで落とされるのだ。
蜜口の浅いところに半ばまでを埋め、先端の部分だけをゆっくり出し入れされているうちに、サフィージャはまた限界を迎えそうになっていた。
「もういきそうなんですか? かわいらしいことですね」
ぼそぼそとサフィージャにだけ聞こえるように耳元でささやかれる声の、ざらざらした息づかいや、伝わってくる密やかな興奮がサフィージャを駆り立てる。
びくびくん、と不規則にまた締め付けてしまう。
達したあとも、クァイツは執拗に彼女を攻め続けた。
***
あざやかな陽光色の頭髪をした容姿の美しい男が隣に寝そべっている。
満足したらしく、サフィージャはようやく口に入れたハンカチを取ってもらえた。
「……ふふ。今日もあなたはかわいかったです」
うれしそうな頬ずりを受けて、サフィージャはなんだか気が抜けた。
見た目はとてもそうは見えないが、こういうときのクァイツは少し動物っぽいと思う。
普段はあまり感じられないナマの野心や欲望がちらつく。
相手を屈服させようと思うのは男の本能のようなものなのだろう。
そんなことで喜んでしまうのだから、サフィージャもたぶん、動物的なのだ。
この男にされる意地悪がなぜかやたらに気持ちいいのも、きっとそのせいだ。
「私は動物は嫌いじゃないんだ」
サフィージャがしみじみとそう言うと、クァイツはなんのことか分からないという顔をした。
「虎を飼ってみたいと思っていたこともあるんだ」
「虎、ですか」
「そうだ。虎だ」
きらきらのきれいな毛並みの美青年の頭をなでてやると、なんとなく夢が叶ったような気分になった。
***
それからしばらくのち。
「虎を輸入しました」
クァイツにだしぬけにそう言われて、サフィージャは目が点になった。
「虎……?」
「虎です」
クァイツはまったく悪気のないにこやかな表情で、サフィージャの手を取った。
「先日、虎を飼ってみたいと言ってましたよね」
「……は?」
いつのことだろう。そんなこと言っただろうか。
「あの時はうれしかったです。あなたが閨でのねだりごとをひとつもしてくださらないので、少し寂しく思っていました。虎は確かに、筆頭魔女のあなたであってもなかなか飼いにくいですよね」
そっと手に握らされたのは、用途のよく分からない、檻や家屋のものらしき鍵が大小三つ。
そこまで言われてようやくサフィージャは思い出した。
そういえばいつだったかのベッドでそんな冗談を口にしたことがある。
もう一か月は前のことなので、すっかり忘れていた。
「と、虎を、飼ってくれるのか? 私のために?」
「ええ。管理はこちらでしますから、心配しなくていいですよ」
えええええ。
さすがは王太子どの。
いろんな意味で思考回路が常人の予想をはるかに超える。
プレゼントにしてもスケールがでかすぎるだろう。
「あ、あれはそういう意味じゃ……」
どう訂正したものか考えているサフィージャの気も知らず、彼はにこにこと続けた。
「でも、気を付けてくださいね。人に慣れていないようなので、直接触って遊ぶのはやめたほうがいいとのことでした。ですから、遠くから眺めるだけにしてください」
猛獣は遠くから眺めているのが一番いい。
もしかすると、この男も遠くから鑑賞しているだけのほうがいいタイプなのかもしれない。
そんなことを思いつつ、サフィージャはひきつった笑顔で、とりあえず、礼を述べた。
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