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81.新たな道を(2)
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昨日も訪れた池芳軒の店の前で、私と晶は足を止める。
ホテルを出てここに着くまでの間、晶はほとんど口を開くことなく神妙な面持ちでいた。きっと恐怖や緊張と戦っているのだと思って黙っていたが、彼はそれでも「やっぱり行かない」などとは口にしない。そして覚悟を決めたように小さく頷くと、私より先に池芳軒の店内に足を踏み入れた。
「お邪魔します。柳町寿々音さんとお会いしたく伺ったのですが――」
中に入った晶がそう声をかけた瞬間、何やらどたどたと慌ただしい足音が聞こえてくる。
店先にいた店員さんも含めて三人でぎょっと目を丸くしていると、間を置かず店の奥から寿々音さんが顔を出した。
「美雨さん! もうっ、やっと来はったー! 早よ入って、美雨さんとどうしても話したかってん!」
現れるなりはしゃいだ様子を見せる寿々音さんに、それまで険しい顔をしていた晶はぽかんと口を開ける。
寿々音さんは楽しそうに私の手を引き、昨日と同じように店の奥へと進んでいく。そして困惑している晶を一瞥して「あ、晶さんも入ってええよ」と興味なさげに言った。
「どういうことだ……? あの女、前と別人じゃないか」
「た、確かに……とにかく、晶も一緒に行こう!」
拍子抜けしている晶とともに、店の奥にある座敷へと向かう。そして昨日と同じ場所に二人で座ると、その向かいに座った寿々音さんが待ちきれないといった様子で口を開いた。
「美雨さん、よかったなぁ! 晶さんにちゃんと気持ち伝えられたんやろ?」
「あ……はい! 寿々音さんのおかげです」
「私はなんもしてへんよ。せやけどほんまに私が言うた通りやったやろ、晶さんも絶対に美雨さんのこと好きやって! ああよかった、これで晶さんのことシバく必要なくなったなぁ」
寿々音さんは興奮した様子でそう言って笑ったあと、ちらりと晶のほうを見る。彼はその視線を受けて一瞬びくっと身を強張らせたが、ぐっと拳を握ってどうにか耐えているようだった。
「ふふ、そない怖がらんでええやん。今日はこれ以上近づかへんし、安心して」
「うっ……こ、怖がってはいない、です」
「そう? それにしても晶さん、あなたもようここまで来はったなぁ。大事な仕事放ってでも、美雨さんに会いたかったんやろ?」
茶化すように言う寿々音さんに、晶はしどろもどろになっている。意を決して池芳軒まで来たのに彼女の態度が前と違うことに、まだ戸惑っているようだ。
寿々音さんはそんな晶を見て薄く笑ったあと、ふと眉を下げる。それから、晶に向かって深く頭を下げた。
「晶さん。このまえ笹屋飴さんに行ったときは、わざとあなたを怖がらせるようなことしてごめんなさい」
「え……」
「美雨さんに聞いたかもしれへんけど、あなたに縁談を断られたこと、納得いかへんと思っててん。笹屋飴さんの会社にも魅力を感じたのに、それに関わることすら許されへんと思うたら悔しいて……」
寂しそうに笑う寿々音さんを見ると、彼女が本気で笹屋飴という会社を気に入っていたことが窺える。その気持ちを考えると複雑な思いがして、私は口を閉ざした。
そんな中、晶が真剣な目つきをして姿勢を正す。そして、寿々音さんがしたように深々と頭を下げた。
「俺も……本当の理由を話しもせずに縁談を断ったのは、不誠実だったと思います。申し訳ありませんでした」
謝罪をした晶に、寿々音さんは少し驚いたように目を瞠った。そして「別にええよ」と笑うと、今度は私に目を向けて優しい声音で語り始める。
「縁談については、親同士が勝手に盛り上がって決めたことやし……それに、今はその縁談があってよかったとも思うてるんよ。そのおかげで、晶さんと美雨さんが結ばれたようなもんやろ?」
「え……そ、そうですかね……?」
「そうやろ。ある意味、私が結び付けてあげたようなもんや。謝らんでええから、感謝してほしいわぁ」
冗談めかして言う寿々音さんに、私は思わず笑みをこぼす。初めて会ったときはひたすら彼女が恐ろしかったのに、今ではまるで親しい友達のように思えた。
だからこそ、実家の池芳軒を継ぐこともできず、新たな目標としていた笹屋飴の経営者という道も閉ざされてしまった寿々音さんのこれからのことが気にかかった。
「あの……私、前に寿々音さんのことを調べさせてもらったんです。ネットニュースとか雑誌の記事とか、寿々音さんが池芳軒への思いを語っているのを読みました」
「えっ? 嫌やわぁ、どれ読まはったん? 私、出しゃばりの嫌味な女みたいに見えたやろ」
「いえ。どれを見ても、寿々音さんが本当にこのお店のことを愛してるんだって、痛いくらい伝わってきました」
寿々音さんが笹屋飴を訪れたあと、私は彼女についてできるだけ情報を集めようとしていた。そして各所で取材を受けている彼女のインタビュー記事を読んで、寿々音さんが確かな展望を描きながら池芳軒の未来について考えていることを知ったのだ。それを見た私は「こんな人に敵うはずがない」と絶望したけれど、その力は寿々音さんが地道な努力をして得たものだ。それが「女だから」という理由ひとつで無駄になってしまうと思うと、部外者の私ですら歯がゆくなる。
私の言葉を受けて、どこか気恥ずかしそうにしていた寿々音さんがぴたりと動きを止めた。そして少し寂しそうに薄く笑みを見せると、美しく整えられた中庭を眺めながらぽつりとつぶやく。
「……うん。本音を言うと、そのうちどこかへお嫁に行かされて、ここと別の場所で働くなんて絶対に嫌や。小さい頃から、ずっとこのお店のことだけを考えてきたんやから」
「寿々音さん……」
「晶さんと結婚したいて思うたのも、晶さんが私と同じような気持ちで笹屋飴さんのことを大事にしてるって知ったからや。自分のお店を心から愛せる人にしか、その良いところを伸ばすことはできひんから」
きっぱりと断言する寿々音さんに、晶も険しい表情をしながら頷いた。一般家庭で育った私にはわからない感覚だが、同じような境遇で育ってきた二人にはなんとなく通じ合うところがあるのだろう。だからこそ寿々音さんも、笹屋飴という会社にこだわっていたのかもしれない。
「せやけど……やっぱり、そない簡単にはいかへんなぁ。お店のことばっかり考えとったら彼氏もできひんし、そろそろお父さんの持ってきた縁談を受け入れなあかんわ」
寿々音さんはそう言って笑うが、それが本心ではないことは誰の目にも明らかだった。彼女の笑顔には口惜しさがにじみ出ていて、私も晶も口を引き結ぶことしかできない。
願いを叶えることができない寿々音さんのことを思うと、どうしても表情が暗くなる。悲しい顔せんとって、と寿々音さんは笑うが、どうしても笑みを返すことができなかった。
ホテルを出てここに着くまでの間、晶はほとんど口を開くことなく神妙な面持ちでいた。きっと恐怖や緊張と戦っているのだと思って黙っていたが、彼はそれでも「やっぱり行かない」などとは口にしない。そして覚悟を決めたように小さく頷くと、私より先に池芳軒の店内に足を踏み入れた。
「お邪魔します。柳町寿々音さんとお会いしたく伺ったのですが――」
中に入った晶がそう声をかけた瞬間、何やらどたどたと慌ただしい足音が聞こえてくる。
店先にいた店員さんも含めて三人でぎょっと目を丸くしていると、間を置かず店の奥から寿々音さんが顔を出した。
「美雨さん! もうっ、やっと来はったー! 早よ入って、美雨さんとどうしても話したかってん!」
現れるなりはしゃいだ様子を見せる寿々音さんに、それまで険しい顔をしていた晶はぽかんと口を開ける。
寿々音さんは楽しそうに私の手を引き、昨日と同じように店の奥へと進んでいく。そして困惑している晶を一瞥して「あ、晶さんも入ってええよ」と興味なさげに言った。
「どういうことだ……? あの女、前と別人じゃないか」
「た、確かに……とにかく、晶も一緒に行こう!」
拍子抜けしている晶とともに、店の奥にある座敷へと向かう。そして昨日と同じ場所に二人で座ると、その向かいに座った寿々音さんが待ちきれないといった様子で口を開いた。
「美雨さん、よかったなぁ! 晶さんにちゃんと気持ち伝えられたんやろ?」
「あ……はい! 寿々音さんのおかげです」
「私はなんもしてへんよ。せやけどほんまに私が言うた通りやったやろ、晶さんも絶対に美雨さんのこと好きやって! ああよかった、これで晶さんのことシバく必要なくなったなぁ」
寿々音さんは興奮した様子でそう言って笑ったあと、ちらりと晶のほうを見る。彼はその視線を受けて一瞬びくっと身を強張らせたが、ぐっと拳を握ってどうにか耐えているようだった。
「ふふ、そない怖がらんでええやん。今日はこれ以上近づかへんし、安心して」
「うっ……こ、怖がってはいない、です」
「そう? それにしても晶さん、あなたもようここまで来はったなぁ。大事な仕事放ってでも、美雨さんに会いたかったんやろ?」
茶化すように言う寿々音さんに、晶はしどろもどろになっている。意を決して池芳軒まで来たのに彼女の態度が前と違うことに、まだ戸惑っているようだ。
寿々音さんはそんな晶を見て薄く笑ったあと、ふと眉を下げる。それから、晶に向かって深く頭を下げた。
「晶さん。このまえ笹屋飴さんに行ったときは、わざとあなたを怖がらせるようなことしてごめんなさい」
「え……」
「美雨さんに聞いたかもしれへんけど、あなたに縁談を断られたこと、納得いかへんと思っててん。笹屋飴さんの会社にも魅力を感じたのに、それに関わることすら許されへんと思うたら悔しいて……」
寂しそうに笑う寿々音さんを見ると、彼女が本気で笹屋飴という会社を気に入っていたことが窺える。その気持ちを考えると複雑な思いがして、私は口を閉ざした。
そんな中、晶が真剣な目つきをして姿勢を正す。そして、寿々音さんがしたように深々と頭を下げた。
「俺も……本当の理由を話しもせずに縁談を断ったのは、不誠実だったと思います。申し訳ありませんでした」
謝罪をした晶に、寿々音さんは少し驚いたように目を瞠った。そして「別にええよ」と笑うと、今度は私に目を向けて優しい声音で語り始める。
「縁談については、親同士が勝手に盛り上がって決めたことやし……それに、今はその縁談があってよかったとも思うてるんよ。そのおかげで、晶さんと美雨さんが結ばれたようなもんやろ?」
「え……そ、そうですかね……?」
「そうやろ。ある意味、私が結び付けてあげたようなもんや。謝らんでええから、感謝してほしいわぁ」
冗談めかして言う寿々音さんに、私は思わず笑みをこぼす。初めて会ったときはひたすら彼女が恐ろしかったのに、今ではまるで親しい友達のように思えた。
だからこそ、実家の池芳軒を継ぐこともできず、新たな目標としていた笹屋飴の経営者という道も閉ざされてしまった寿々音さんのこれからのことが気にかかった。
「あの……私、前に寿々音さんのことを調べさせてもらったんです。ネットニュースとか雑誌の記事とか、寿々音さんが池芳軒への思いを語っているのを読みました」
「えっ? 嫌やわぁ、どれ読まはったん? 私、出しゃばりの嫌味な女みたいに見えたやろ」
「いえ。どれを見ても、寿々音さんが本当にこのお店のことを愛してるんだって、痛いくらい伝わってきました」
寿々音さんが笹屋飴を訪れたあと、私は彼女についてできるだけ情報を集めようとしていた。そして各所で取材を受けている彼女のインタビュー記事を読んで、寿々音さんが確かな展望を描きながら池芳軒の未来について考えていることを知ったのだ。それを見た私は「こんな人に敵うはずがない」と絶望したけれど、その力は寿々音さんが地道な努力をして得たものだ。それが「女だから」という理由ひとつで無駄になってしまうと思うと、部外者の私ですら歯がゆくなる。
私の言葉を受けて、どこか気恥ずかしそうにしていた寿々音さんがぴたりと動きを止めた。そして少し寂しそうに薄く笑みを見せると、美しく整えられた中庭を眺めながらぽつりとつぶやく。
「……うん。本音を言うと、そのうちどこかへお嫁に行かされて、ここと別の場所で働くなんて絶対に嫌や。小さい頃から、ずっとこのお店のことだけを考えてきたんやから」
「寿々音さん……」
「晶さんと結婚したいて思うたのも、晶さんが私と同じような気持ちで笹屋飴さんのことを大事にしてるって知ったからや。自分のお店を心から愛せる人にしか、その良いところを伸ばすことはできひんから」
きっぱりと断言する寿々音さんに、晶も険しい表情をしながら頷いた。一般家庭で育った私にはわからない感覚だが、同じような境遇で育ってきた二人にはなんとなく通じ合うところがあるのだろう。だからこそ寿々音さんも、笹屋飴という会社にこだわっていたのかもしれない。
「せやけど……やっぱり、そない簡単にはいかへんなぁ。お店のことばっかり考えとったら彼氏もできひんし、そろそろお父さんの持ってきた縁談を受け入れなあかんわ」
寿々音さんはそう言って笑うが、それが本心ではないことは誰の目にも明らかだった。彼女の笑顔には口惜しさがにじみ出ていて、私も晶も口を引き結ぶことしかできない。
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