9 / 83
回想:意図が分からない不気味さ
しおりを挟む(麗奈は一体何がしたいんだろう?)
ずっと疑問だった。
人の彼氏に悪口を吹き込んで別れさせ、サークルにも居られないようにしたくせに、まだ友達でいられるとでも思っているのだろうか。
怒りよりも不可解さが上回って彼女が不気味で気持ち悪い。
それよりも、どうして自分にこんなにも絡んでくるのか分からない。
「なんで麗奈は私に付きまとってくるの?」
一度、耐え切れずにそう訊ねたことがある。
「ええ? だって理沙ちゃんは私の大好きな親友だからもっと一緒にいたいと思っただけなのに……付きまとうとか、そんな風に思われていたなんてショック」
――親友。
理沙としては親友どころか友達だとも思っていない。麗奈はよくこの単語を使うが、対外的に言っているだけだと思っていた。だがもしかして、麗奈のなかでは本当に理沙とはとっても仲が良い友達だという妄想が出来上がっているのだろうか。
真意が分からずじっと彼女の目を見つめるが、いつものよくできた泣き顔からは何も読み取れない。
「親友? 誰と、誰がよ……」
言うべきじゃないと分かりつつ、そう問い返してしまうと麗奈はひと際大きい鳴き声を上げてその場から走り去ってしまう。
どうせこの話も誇張して理沙が悪く言われるんだろうなと思っていたら、案の定、『お前なんか友達じゃない』と言ったことにされており、麗奈のボディーガード気取りの男連中からさんざん嫌がらせを受ける結果になった。
本当に、ひらすらに、麗奈という存在が腹立たしく鬱陶しい。
だが母親はいまだに麗奈の母とつながりがあるし、またブロックなんてしたら理沙のほうが悪者にされ親から文句を言われることになる。とにかく穏便に距離を取るしか理沙にはできることがなかった。
だから就職したら家を出ようと決めていた。
実家にいる限り麗奈との縁は切れそうにないし、交友関係にいつまでも口を出してくる親のことも鬱陶しく思っていたから、企業から内定をもらっても家族には内緒にしておいて、母親には住所も教えずに勝手に引っ越した。
母親は非常識だとギャンギャン騒いでいたが、そうまでしてでも理沙は麗奈との縁を切りたかった。
実際、就職活動をしているあいだ、麗奈から一緒に会社訪問をしようとか同じ会社を受けようとかさんざん付きまとわれた。
サークルを引っ掻き回した麗奈の噂は構内で広まっていて、特に女子は麗奈を警戒して避けていたので、女子と就活の情報交換ができなくて困っていたようだが、その件に関しても理沙が意地悪をして教えてくれないと親に泣きついたらしく、一度母から注意を受けたりしたから、住所も教えず引っ越すという強硬手段に出ざるを得なかった。
そうして理沙はようやく麗奈に振り回されない平穏な生活を手に入れた。
仕事は最初覚えることが多くて毎日が目まぐるしく、指示されたことをなんとかこなすだけの日々だったから、麗奈のことを思い出す暇もなかった。
こちらが番号を変更してしまえば彼女からの連絡は完全にこなくなった。
実家は父親にだけ電話番号を教え、絶対に母親には教えるなと念を押したので、連絡事項は父から伝えてもらっている。
そのまま一年が過ぎて、その頃には理沙も会社に馴染んで充実した日々を送っていた。
恋愛に関しては、これまでいい思い出がないせいで就職してからも気持ちは後ろ向きのままだった。同期のなかでは恋愛に発展したり合コンを開いたりしている話をよく聞かされたけれど、理沙だけは一歩引いた付き合いを続けていた。
合コンに誘われても絶対断るせいで、同期の人たちから何か理由があるのかと訊かれるようになり、一度同期だけの飲み会で恋愛にトラウマがあることを話して聞かせた。友達に彼氏を盗られたというだけで皆納得してくれたが、一人だけ食い下がってくる男がいた。
それが後に付き合うことになる小林幸生だった。
45
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる