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Side:圭司10
「もしもし、急で申し訳ないんですが、護衛の人を数名手配してもらえませんか。……ええ、そうです。実は彼女が行方不明で、拉致されたかもしれない。今は個人宅に留め置かれているようで……。ええ、はい」
電話の相手は父の会社と付き合いのある杉下という男だった。
この人が興した会社は名目上では警備会社となっているが、警察が介入しづらい揉め事の仲裁や夜逃げの手伝いなどもやっているよろず屋といったほうが正しい。先日の理沙の引っ越しを引き受けてくれたのも、この杉下だった。
顔が広く身元調査や探偵業もやっているため、須藤麗奈の身上調査を頼んだところ、別件で依頼を受けているとの返答をもらい驚いた。
話を聞くと、須藤麗奈が巻き上げた金はそのまま彼女の借金となっているらしく、借用書が闇金に売られてそちらから追われているそうだ。
「拉致されたっていう確証は何もないんですけど、状況的にそうとしか思えないんです。ここ最近須藤麗奈が所在不明になっているんで、恐らくあの女が関わっているはずです」
『少なくとも連絡ができない状況なのですから何かあったと考えて間違いないでしょう。須藤はここのところ言動もおかしかったという報告も受けていますし、危険ですね』
「スマホは間違いなくあの家にあるんですから、強行突入してでも中に入るつもりです。こんなこと頼むべきではない仕事だと分かっているんですが……無理を押してお願いします」
『須藤麗奈が絡んでいる件なら、こちらも行方を追っていたところですので好都合です。喜んで協力させてもらいますよ。若いのを何人か連れて行きますんで』
「すみません、助かります」
スマホが示した住所を杉下に送る。
これだけで多分ここの住民の素性まで移動時間のあいだに調べ上げてくれるだろう。もしどこかの構成員であれば飛び道具を持っている可能性があるから組織を通じて交渉する方法をとるが、住所からしておそらく一般人だ。下手に時間をかけて理沙に危害を加えられる前に、強行突入してさっさと制圧してしまうつもりだった。
車でその住所に向かっていると杉下から連絡があり、人手を確保してそちらへ向かっていると言う。ひとりで踏み込むなと釘を刺され、目的地の近くのコインパーキングに車を停め待機しているとほどなく白のハイエースが到着した。
「お待たせしました。おひとりで殴り込みにいってしまっていたらどうしようかと思っていましたよ」
「無策で押し入ったりしたら、理沙に危害が及ぶ可能性がありますから」
怒りを抑えつつ杉下と突入方法を検討する。杉下が調べたところ、目的の住居は少なくとも反社の所有物件ではない。銃器を所有している可能性はまずないだろうということでまずは話をしてみるが、理沙がいると判断したらすぐに武力で制圧すると意見がまとまった。
「本当に拉致されたのか、まだ断定はできません。まず私が話をしてみますので圭司さんは前に出ないでくださいね。クロだと判断したら合図しますので全員で部屋へ踏み込みます」
ハイエースの中に大きな体を押し込めている男たちが杉下の言葉を受けて静かにうなずいている。
まるで傭兵のような見た目の男たちは、実際海外で傭兵の仕事やSPを務めていた者たちであると以前聞いたことがある。本当に傭兵として今回連れてきているのは、相手が反社ではないにしろ暴力に慣れた相手だと判断してのことだ。
いかつい見た目の男たちは目立ちすぎるため、穏やかな印象の杉下が扉を開けさせる役をやる計画だった。
電話の相手は父の会社と付き合いのある杉下という男だった。
この人が興した会社は名目上では警備会社となっているが、警察が介入しづらい揉め事の仲裁や夜逃げの手伝いなどもやっているよろず屋といったほうが正しい。先日の理沙の引っ越しを引き受けてくれたのも、この杉下だった。
顔が広く身元調査や探偵業もやっているため、須藤麗奈の身上調査を頼んだところ、別件で依頼を受けているとの返答をもらい驚いた。
話を聞くと、須藤麗奈が巻き上げた金はそのまま彼女の借金となっているらしく、借用書が闇金に売られてそちらから追われているそうだ。
「拉致されたっていう確証は何もないんですけど、状況的にそうとしか思えないんです。ここ最近須藤麗奈が所在不明になっているんで、恐らくあの女が関わっているはずです」
『少なくとも連絡ができない状況なのですから何かあったと考えて間違いないでしょう。須藤はここのところ言動もおかしかったという報告も受けていますし、危険ですね』
「スマホは間違いなくあの家にあるんですから、強行突入してでも中に入るつもりです。こんなこと頼むべきではない仕事だと分かっているんですが……無理を押してお願いします」
『須藤麗奈が絡んでいる件なら、こちらも行方を追っていたところですので好都合です。喜んで協力させてもらいますよ。若いのを何人か連れて行きますんで』
「すみません、助かります」
スマホが示した住所を杉下に送る。
これだけで多分ここの住民の素性まで移動時間のあいだに調べ上げてくれるだろう。もしどこかの構成員であれば飛び道具を持っている可能性があるから組織を通じて交渉する方法をとるが、住所からしておそらく一般人だ。下手に時間をかけて理沙に危害を加えられる前に、強行突入してさっさと制圧してしまうつもりだった。
車でその住所に向かっていると杉下から連絡があり、人手を確保してそちらへ向かっていると言う。ひとりで踏み込むなと釘を刺され、目的地の近くのコインパーキングに車を停め待機しているとほどなく白のハイエースが到着した。
「お待たせしました。おひとりで殴り込みにいってしまっていたらどうしようかと思っていましたよ」
「無策で押し入ったりしたら、理沙に危害が及ぶ可能性がありますから」
怒りを抑えつつ杉下と突入方法を検討する。杉下が調べたところ、目的の住居は少なくとも反社の所有物件ではない。銃器を所有している可能性はまずないだろうということでまずは話をしてみるが、理沙がいると判断したらすぐに武力で制圧すると意見がまとまった。
「本当に拉致されたのか、まだ断定はできません。まず私が話をしてみますので圭司さんは前に出ないでくださいね。クロだと判断したら合図しますので全員で部屋へ踏み込みます」
ハイエースの中に大きな体を押し込めている男たちが杉下の言葉を受けて静かにうなずいている。
まるで傭兵のような見た目の男たちは、実際海外で傭兵の仕事やSPを務めていた者たちであると以前聞いたことがある。本当に傭兵として今回連れてきているのは、相手が反社ではないにしろ暴力に慣れた相手だと判断してのことだ。
いかつい見た目の男たちは目立ちすぎるため、穏やかな印象の杉下が扉を開けさせる役をやる計画だった。
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