略奪は 奪い取るまでが 楽しいの

エイ

文字の大きさ
79 / 83

Side:圭司12

 リビングに向かう廊下にまで泣き喚く女の声が聞こえてきて、うんざりした気分でドアを開けると、正座させられている男たちの横で泣いて手が付けられない女が床に突っ伏していた。
 女は言わずもがな、理沙に嫌がらせを続けてきた粘着女の須藤麗奈で間違いない。予想していたとおりではあるが、改めて怒りが湧いてくる。
 杉下は男たちの身分証を確認しているところで、タブレットで個人情報を照合して素性を調べている。

「チンピラかと思いきや、どいつもこいつも裕福な家の息子なんですね。こいつは示談にした事件が複数あり……こっちは○○社の社員か。まったく、脅す材料が多くて助かるねえ……」

 淡々とタブレットをスワイプする杉下の口からは、他人が知るはずない個人情報が次々飛び出してくる。正座している男たちは己の素性が丸裸にされて真っ青になっていた。
 この誘拐犯たちは半グレ集団かと思いきや、単に学生時代にヤンチャしていただけの一般人だった。

「お、俺たちはただ、レーナの友達を連れてきただけだ。なんも悪いことしてねえ」
「そうだ! つかお前らのほうが不法侵入じゃねえか。土足だしマジふざけんな……」

 男たちがごにょごにょと文句を言っていたが、傭兵たちに小突かれてすぐ口を噤んだ。圭司は杉下のチェックしている個人情報を見て、あることに気がつく。
 理沙と同じ社名の名刺を持った男がひとりいた。

「……お前、理沙の元カレか〝小林幸生〟」

 下を向く男は圭司の問いかけにビクリと肩を揺らす。一度顔を見た程度だったが、あの時の理沙の表情と共にこの男の顔も記憶にこびりついていた。

「元カノ追いかけまわして、その挙句誘拐かよ。クソだせぇな。そこのビッチに捨てられて頭イカレたか?」
「っ、違う! 俺はむしろこいつらを止めてた! 理沙の身を案じていたからここに残っていたんだし、麗奈が暴走しないよう見張っていたんだ! 理沙のために……!」

 理沙ためという言葉で耐え切れず、拳を振り上げ幸生の横っ面をぶん殴る。

「オゴッ!」
「何が『理沙のため』だ、このゴミが」

 理沙は残業して退勤したところをピンポイントで狙われている。理沙の退勤時をピンポイントで狙えたのはコイツが手引きしたに違いない。
 横目でちらりと須藤麗奈を見ると、さっきまで泣き喚いていたのが嘘のようにしらっとした表情でこちらを見ている。この誘拐劇を描いたのはこの女だろう。小林幸生はただ駒として使われただけだとしても、男どもが理沙に一体何をしようとしていたのか想像するだけで吐き気がする。

「……アンタ、理沙ちゃんの彼氏?」
「あ?」

 唐突に、低い声で須藤麗奈が話しかけてきた。コイツとは話をつけなければと思っていたが、ふてぶてしく話しかけられるとは予想外だった。

「めっちゃくちゃアンタのこと探したのに、どこにも情報ないしマジで最悪。理沙ちゃん隠したのもアンタの仕業でしょ。あんなマンション、理沙ちゃんが家賃払えるわけないし」

 憎々し気に睨む麗奈の顔は、普段の作り笑顔からは想像もできないほど醜くゆがんでいる。片頬を引きつらせて睨むこの姿が、彼女の本質なのだろう。横に並ぶ男たちも、驚いた様子で麗奈を見つめている。

「……理沙のアパートにそこの馬鹿元カレが待ち伏せとかすっから非難させた。あれもどうせお前の指示だったんだろ?」
「うっざ、マジで邪魔。消えてよ、死んで。アンタがいなきゃ全部上手くいってたのに」
「普通に街中で誘拐なんて杜撰なやり方で上手くいくわけねえだろ。会社周辺に防犯カメラが何台あると思ってんだ。まあどうせ警察沙汰になってもお前はこいつらに責任押し付けて逃げるつもりだったんだろうけどな」
「……あはは。余裕ぶってるけどさ、理沙ちゃん早く病院連れて行ったほうがいーんじゃない? アフターピル早めに飲ませないと妊娠しちゃうよぉ。警察も行けばいいけど、理沙ちゃんがどんな風に犯されたかとかって事細かに証言できるかなぁ? 何度中出しされたかとか聞かれたら死にたくなっちゃうんじゃない? あーあ、可哀そう」
「……っ!」

感想 10

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

全てを奪われてしまいそうなので、ざまぁします!!

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
義母に全てを奪われたジュディ。何とかメイドの仕事を見つけるも義母がお金の無心にやって来ます。 私、もう我慢の限界なんですっ!!