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魔物たちの秘密
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なりふり構わずドレスの裾を翻して二人を追ってくる彼女の姿は鬼気迫るものがあった。
風魔法がピクシーの背中を切り裂いたのを見て、たまらずアメリアはメディオラに向かって叫んだ。
「やめて! ピクシーを攻撃しないでください!」
「それならあなたがこちらに来ればいいだけよ」
そう言い返され、アメリアに一瞬迷いが生じる。だがピクシーは、そちらには行かせないと腕にぐっと力を込めてアメリアを強く抱きしめる。
「しっ、死体でもいいなら他の体を使えばいいじゃないですか! 容姿が似ているだけで、私はなんの才能もないし、健康状態も良くないし! 美しくて健康な死体を探してください!」
一縷の望みをかけて、大魔女の新しい体には貧相すぎてふさわしくないとメディオラに向かって叫んだ。
見た目は似ているが、それでも別人には変わらないし、アメリアの体は魔物たちが散々言っていたように、この体は味覚が壊れていて痛覚や他の色々な部分で不具合がある。
死体でいいなら、こんな不健康な体よりももっと他に優良な体があるはずだ。
そう主張すると、意外なことにメディオラは攻撃を止め、不思議そうに首をかしげている。
「……何を言っているのよ。あなたの魔力量がないと、反魂術が使えないからその体じゃないとダメなのよ。六つある恩寵も、少ない魔力量の体じゃあどれも使えないから意味がないのよ」
「えっ、でも、私は魔法もロクに使えないですよ? 散々出来損ないって言われていたのを、あなただって知らないはずないでしょう!」
諦めてくれるとは思わなかったが、多少の時間稼ぎになればと言っただけの話が別の方向に進んでいる。
よく分かっていない様子のアメリアを見て、メディオラは困ったように笑う。
「あなたの体は、恩寵がないからうまく魔法に変換できないだけで、魔力量だけならどの魔女よりも多いわよ。魔法に使えないから体の中に魔力が溜まり続けて、溢れて止まらないくらいじゃない」
「魔力量が……多い? 私が? だって、誰にもそんなこと、言われなかった……」
兄姉たちにも、歴代の家庭教師からも一度も言われたことがない。そもそも魔力の量は魔法を使ってどれくらいで底が見えるかで測るものだから、魔法がほとんど使えないアメリアには知りようがない。
「知らないわけないでしょう? だってそこの魔物も…………」
そこまで言ったところでメディオラがはたと何かに気付いたようにピクシーに目線を向けた。
メディオラに見つめられてもピクシーは表情を動かさなかったが、それを見て彼女は急に納得したように大きく頷く。
「ああ、てっきりアメリアがその魔力を引き換えに、魔物たちを従えているのかと思ったら、あなたが魔物のエサにされているのね。アハハ! 魂をつないだのも、魔物が食料を確保するためよ。あなたは何も知らなかったのね。騙されて、食い物にされていたなんて、なんて可哀想な子!」
風魔法がピクシーの背中を切り裂いたのを見て、たまらずアメリアはメディオラに向かって叫んだ。
「やめて! ピクシーを攻撃しないでください!」
「それならあなたがこちらに来ればいいだけよ」
そう言い返され、アメリアに一瞬迷いが生じる。だがピクシーは、そちらには行かせないと腕にぐっと力を込めてアメリアを強く抱きしめる。
「しっ、死体でもいいなら他の体を使えばいいじゃないですか! 容姿が似ているだけで、私はなんの才能もないし、健康状態も良くないし! 美しくて健康な死体を探してください!」
一縷の望みをかけて、大魔女の新しい体には貧相すぎてふさわしくないとメディオラに向かって叫んだ。
見た目は似ているが、それでも別人には変わらないし、アメリアの体は魔物たちが散々言っていたように、この体は味覚が壊れていて痛覚や他の色々な部分で不具合がある。
死体でいいなら、こんな不健康な体よりももっと他に優良な体があるはずだ。
そう主張すると、意外なことにメディオラは攻撃を止め、不思議そうに首をかしげている。
「……何を言っているのよ。あなたの魔力量がないと、反魂術が使えないからその体じゃないとダメなのよ。六つある恩寵も、少ない魔力量の体じゃあどれも使えないから意味がないのよ」
「えっ、でも、私は魔法もロクに使えないですよ? 散々出来損ないって言われていたのを、あなただって知らないはずないでしょう!」
諦めてくれるとは思わなかったが、多少の時間稼ぎになればと言っただけの話が別の方向に進んでいる。
よく分かっていない様子のアメリアを見て、メディオラは困ったように笑う。
「あなたの体は、恩寵がないからうまく魔法に変換できないだけで、魔力量だけならどの魔女よりも多いわよ。魔法に使えないから体の中に魔力が溜まり続けて、溢れて止まらないくらいじゃない」
「魔力量が……多い? 私が? だって、誰にもそんなこと、言われなかった……」
兄姉たちにも、歴代の家庭教師からも一度も言われたことがない。そもそも魔力の量は魔法を使ってどれくらいで底が見えるかで測るものだから、魔法がほとんど使えないアメリアには知りようがない。
「知らないわけないでしょう? だってそこの魔物も…………」
そこまで言ったところでメディオラがはたと何かに気付いたようにピクシーに目線を向けた。
メディオラに見つめられてもピクシーは表情を動かさなかったが、それを見て彼女は急に納得したように大きく頷く。
「ああ、てっきりアメリアがその魔力を引き換えに、魔物たちを従えているのかと思ったら、あなたが魔物のエサにされているのね。アハハ! 魂をつないだのも、魔物が食料を確保するためよ。あなたは何も知らなかったのね。騙されて、食い物にされていたなんて、なんて可哀想な子!」
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