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使い魔の契約解除
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ヨミが空を見上げていたので、ロイもつられて同じところを見上げた。しかし、そこには青空と白い雲が浮かんでいるだけ。雨雲があるわけでも、変わった鳥が飛んでいるわけでもない。
「どうしました? ネズミでもいましたか?」
ロイの軽口にもヨミは反応しない。ひたすら空の一点を見つめている。
「……テラが言った通り、ね。本当に早かった」
「普通の空しか見えませんが」
「風景ではなく、魔力を視て」
ヨミに言われた通り、ロイが魔力の流れに注目する。感覚を研ぎ澄ますと、青い空に真っ黒な穴が視えた。しかも、周囲の魔力を吸い込んでいる。
「これは!?」
「世界のバランスが崩れているの。あと十日もしたら、魔法が使えない普通の人でも見えるようになるわ。その頃には、魔力だけではなく、いろんな物を吸い込むようになる」
「どうして、このようなモノが!?」
ヨミは目を閉じて言った。
「私が……原因」
「え!?」
「世界には正と負の魔力があるけど、私は時間をかけて周囲の正の魔力を吸収して甦るの。でも、その時に負の魔力が大量に余る。そして、余った負の魔力は集まり大きくなる」
二人の間に海風が吹き抜ける。
「その結果が、コレですか?」
「そう。普通なら私が甦っても、かなり経たないと、ここまで大きくならないんだけど……今回はいつもと違ったから」
いつもと違う、という言葉にロイが反応した。
「私が使い魔になったことが原因、ですか?」
「そう……ね」
「ちなみに、どうすれば消えますか?」
解決策があって当然のように聞いてきたロイにヨミが驚く。
「どうして、消す方法があると思ったの?」
「貴女が何回も甦っているなら、その度にコレが発生しているはずです。でも、世界は吸い込まれていない。つまり、コレを消す方法があると思いました」
「あるにはあるけど……」
ヨミから解決策を聞いたロイは怒りの声を上げた。
「あのテラという男が死ぬのは、まったく、なんだ問題はありません! むしろ、死んでもらって結構です。ですが、貴女まで死なないといけないのは、納得できません!」
「でも、テラだけが死ぬっていうのは無理だと思うわ。まず死んでくれないと思う」
「別の解決策はないんですか!?」
「あったら、その解決策をしているわ」
ロイが悔しそうに手を握りしめる。
「絶対に他の解決策を見つけますから」
「無理よ」
「なぜ無理だと決めつけるのですか!?」
その瞬間、ヨミの中でナニかが溢れた。ずっと我慢していたナニかが爆発する。
今は猫なのに、髪を振り乱すようにヨミは叫んだ。
「何回もやってきたからよ!」
繰り返される甦り。苦しみも、失望もした。それでも何度も何度も甦った。
世界に希望がもてなくなった。心も壊れかけた。なのに、生きないといけない。そのため、壊れかけた心を凍らせた。もはや、生きることは絶望に近い。
だから、ひたすら甦らずに死ねる方法を探した。そして、やっと見つけたのは……
壊れかけた心の一部を凍らせたことが仇となった。一度凍らせた感情は簡単には溶けない。結局、他の方法を探さなくてはならなかった。
潤んだ黄金の瞳が真っ直ぐロイを睨む。ロイが逃げるように視線を逸らした。
「わかりました。私一人で解決策を探します」
「なにを言っているの? 探している時間なんてないのよ。それに、私が死んだら使い魔の契約は完全に切れるから、記憶と体は元に戻るわ。むしろ、そのほうがいいでしょう?」
空気がピリッと張り詰める。ヨミに気圧されていたロイがヨミと目線を合わせ、怒鳴った。
「どこがいいんですか!」
突然のことにヨミは思わず一歩引いた。そこに、ロイがたたみかける。
「いくら記憶と体が戻ったって、貴女がいなければ……ッ!」
ロイは舌打ちをして言葉を切った。
「とにかく! 私は他の解決策を探します!」
ロイの態度にいろいろ諦めたヨミはため息を吐きながら提案した。
「じゃあ、使い魔の契約は解消しましょう」
「え?」
「でないと、私から離れて自由に動けないわよ」
自由に動けなければ解決策も見つけられない。ロイは渋々承諾した。
ヨミは感情に蓋をして契約解消について説明をする。
「本来、使い魔の契約は一生もの。それを無理やり切るから、完全解消ではないし、制約も付くわ。元の姿に戻れなくなるし、魔力は見えるけど魔法は使えない。それでもいい?」
「いいですよ、別に」
投げやりになっているロイにヨミは肩をすくめた。
「そっちが言い出したことなのに」
ヨミは人の姿になると、胸の谷間から短剣を出した。足元に魔法陣が現れ、二人を包む。すると、二人を繋ぐ無数の白い線が現れた。
ヨミは躊躇うことなく短剣でブチブチと白い線を切っていく。しかし、どうしても一本だけ切れない線があった。
「どうしても、この一本だけは切れないわ。でも、これだけ切れば自由に動けるでしょう」
魔法陣が消える。ロイは体に異変がないことを確認するとヨミに宣言した。
「必ず、解決策を見つけてきます」
ヨミの返事を待たずにロイが背を向けて歩きだす。ヨミは無言で見送った。
「どうしました? ネズミでもいましたか?」
ロイの軽口にもヨミは反応しない。ひたすら空の一点を見つめている。
「……テラが言った通り、ね。本当に早かった」
「普通の空しか見えませんが」
「風景ではなく、魔力を視て」
ヨミに言われた通り、ロイが魔力の流れに注目する。感覚を研ぎ澄ますと、青い空に真っ黒な穴が視えた。しかも、周囲の魔力を吸い込んでいる。
「これは!?」
「世界のバランスが崩れているの。あと十日もしたら、魔法が使えない普通の人でも見えるようになるわ。その頃には、魔力だけではなく、いろんな物を吸い込むようになる」
「どうして、このようなモノが!?」
ヨミは目を閉じて言った。
「私が……原因」
「え!?」
「世界には正と負の魔力があるけど、私は時間をかけて周囲の正の魔力を吸収して甦るの。でも、その時に負の魔力が大量に余る。そして、余った負の魔力は集まり大きくなる」
二人の間に海風が吹き抜ける。
「その結果が、コレですか?」
「そう。普通なら私が甦っても、かなり経たないと、ここまで大きくならないんだけど……今回はいつもと違ったから」
いつもと違う、という言葉にロイが反応した。
「私が使い魔になったことが原因、ですか?」
「そう……ね」
「ちなみに、どうすれば消えますか?」
解決策があって当然のように聞いてきたロイにヨミが驚く。
「どうして、消す方法があると思ったの?」
「貴女が何回も甦っているなら、その度にコレが発生しているはずです。でも、世界は吸い込まれていない。つまり、コレを消す方法があると思いました」
「あるにはあるけど……」
ヨミから解決策を聞いたロイは怒りの声を上げた。
「あのテラという男が死ぬのは、まったく、なんだ問題はありません! むしろ、死んでもらって結構です。ですが、貴女まで死なないといけないのは、納得できません!」
「でも、テラだけが死ぬっていうのは無理だと思うわ。まず死んでくれないと思う」
「別の解決策はないんですか!?」
「あったら、その解決策をしているわ」
ロイが悔しそうに手を握りしめる。
「絶対に他の解決策を見つけますから」
「無理よ」
「なぜ無理だと決めつけるのですか!?」
その瞬間、ヨミの中でナニかが溢れた。ずっと我慢していたナニかが爆発する。
今は猫なのに、髪を振り乱すようにヨミは叫んだ。
「何回もやってきたからよ!」
繰り返される甦り。苦しみも、失望もした。それでも何度も何度も甦った。
世界に希望がもてなくなった。心も壊れかけた。なのに、生きないといけない。そのため、壊れかけた心を凍らせた。もはや、生きることは絶望に近い。
だから、ひたすら甦らずに死ねる方法を探した。そして、やっと見つけたのは……
壊れかけた心の一部を凍らせたことが仇となった。一度凍らせた感情は簡単には溶けない。結局、他の方法を探さなくてはならなかった。
潤んだ黄金の瞳が真っ直ぐロイを睨む。ロイが逃げるように視線を逸らした。
「わかりました。私一人で解決策を探します」
「なにを言っているの? 探している時間なんてないのよ。それに、私が死んだら使い魔の契約は完全に切れるから、記憶と体は元に戻るわ。むしろ、そのほうがいいでしょう?」
空気がピリッと張り詰める。ヨミに気圧されていたロイがヨミと目線を合わせ、怒鳴った。
「どこがいいんですか!」
突然のことにヨミは思わず一歩引いた。そこに、ロイがたたみかける。
「いくら記憶と体が戻ったって、貴女がいなければ……ッ!」
ロイは舌打ちをして言葉を切った。
「とにかく! 私は他の解決策を探します!」
ロイの態度にいろいろ諦めたヨミはため息を吐きながら提案した。
「じゃあ、使い魔の契約は解消しましょう」
「え?」
「でないと、私から離れて自由に動けないわよ」
自由に動けなければ解決策も見つけられない。ロイは渋々承諾した。
ヨミは感情に蓋をして契約解消について説明をする。
「本来、使い魔の契約は一生もの。それを無理やり切るから、完全解消ではないし、制約も付くわ。元の姿に戻れなくなるし、魔力は見えるけど魔法は使えない。それでもいい?」
「いいですよ、別に」
投げやりになっているロイにヨミは肩をすくめた。
「そっちが言い出したことなのに」
ヨミは人の姿になると、胸の谷間から短剣を出した。足元に魔法陣が現れ、二人を包む。すると、二人を繋ぐ無数の白い線が現れた。
ヨミは躊躇うことなく短剣でブチブチと白い線を切っていく。しかし、どうしても一本だけ切れない線があった。
「どうしても、この一本だけは切れないわ。でも、これだけ切れば自由に動けるでしょう」
魔法陣が消える。ロイは体に異変がないことを確認するとヨミに宣言した。
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