「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」

桜庵

文字の大きさ
144 / 170
最後の異世界生活~カノン編~

~うわさ~

しおりを挟む
カノンが大会に向けて精を出している中、学校では二つの噂が流れていた。

その噂の一つは、登校してきたカノンの耳にも微かに入り、自分の席で荷物を整理していると、クラスメイトからの視線がやたらとカノンに集まる。

「(………皆さん…わたくしの方を見て何やら小さくお話しをしていますわ。言いたい事があるなら直接聞きますのに…。

でも、直接言えない方がいるのも事実…。

それに、わたくしを見ているからと言って、自分に関係のある話であるとは限りません。ここは………直接聞いてみましょう!)

あのっ!」

カノンは気にしないという選択も頭をよぎったが、やはり、自分を見ながら何人ものクラスメイトがひそひそと話をしているのを放っておけず、直接聞くために、近くに4人で固まっている女子グループに話し掛けようとした刹那、慌てて教室に入ってきた原さんに呼び止められた。

「カノ…美桜ちゃん!!!なんか変な噂流れているんだけど、知ってる?!」

「おはようございます、いのりちゃん。ちょうど今聞こうとしていましたの。いのりちゃんは何か知っているのですか?」

「あ、お、おはよう…じゃなくて!……それが…この学校、そんなに歴史が古い訳じゃないのに…………出たんだって…。」

「出た…とは…。」

「……幽霊。」

「「「「「え…。」」」」」

「え…。」

原さんが教室に来るまでに耳にした噂を、カノンや女子グループに聞かせると、そこにいるカノンを含めた5人の動きが止まり、それを見た原さんも動きが止まった。

「え、あ、あれ?今、皆が噂しているのって、その幽霊に関する噂じゃないの?」

原さんは皆の予想外の反応に、おどおどした様子を見せ、噂の事を聞いた。
その原さんの疑問に、女子グループの一人が気まずそうな顔をして、カノンを見たり視線をらしたりして、もごもごと小さく話し出した。

「あー…えー…っと…幽霊の事は…初耳で…私達が話してたのは……その…えっと…。」

「……わたくしに関するお噂でしょうか。……ちゃんと…聞かせてくださいまし。事実なら肯定しますし、虚構なら否定致しますわ。」

歯切れ悪く話すクラスメイトに、しびれを切らしたカノンは真っ直ぐに見つめ、聞く覚悟を持った表情を見せた。

そのカノンの表情に、クラスメイトはグッと息をのみ、俯きながら、話し出した。

「……一ノ瀬さんが…峰岸君と別れたって…皆が言ってる…。」

「そんな事…。」

「何それ!!そんな事ないよ!!!そんなのただの噂に決まってるじゃん!!!ねぇ!美桜ちゃん!」

「え…えぇ…。」

クラスメイト達が話していた噂、それは美桜と峰岸君が別れたという内容で、学校中の皆がその噂と、もう一つ、原さんが聞いたという噂で持ち切りのようだ。

女子グループが話していた噂の内容に、カノンが否定しようと口を開いたのと同時に、原さんが勢いよく大声で否定した。
その様子にその場のカノンや女子グループ達は驚いた表情で原さんを見て、他のクラスメイト達の視線も集めた。

そこへ登校した峰岸君がクラスに入ってきて、原さんへ集まっていた視線が今度は峰岸君に向かった。

「……?…何?」

「何?じゃないよ、峰岸君!!美桜ちゃんと別れたって噂が流れてるんだよ!!なんでそんなに呑気なの?!ちゃんと美桜ちゃんの事好きだよね?!ね?!」

「う…うん…。ていうか噂って何?僕、今来た所なんだけど…。」

「だーかーらー!二人が別れたって噂!人の話聞いてた?!」

「あ、あの…いのりちゃん…落ち着いてくださいまし…。み…やび君も、好きって言ってくれてますし…。わたくしも…す…。」

峰岸君は教室に来るまでの間、噂をちゃんと聞いていなかったようで、原さんから聞かされた内容や言葉に啞然とし、少し感情的になり始めた原さんをカノンが止めに入った。

原さんを止めに入った際に、言いかけた言葉…「好き」。
たったその一言を伝えるだけで、幾分か噂の効力をかき消せるはずだが、カノンはその一言を言うのに躊躇ちゅうちょした。

美桜の体に入っている自分が言ってもいいものか、人格が違う今、「好き」と言って峰岸君を不快にさせたくない、たとえ噂をかき消す為とはいえ、「好き」をいう事で、自分の国にいる婚約者のライラックを裏切ってしまうのではないか…そんな考えが頭をよぎり最後まで言葉を出せずにいた。

峰岸君はそんなカノンの考えを汲み取ってくれたのか、カノンに優しい笑みを浮かべて近づいた。

「『好き』って言おうとしてくれたんだね、ありがとう。僕も、ちゃんと『好き』だよ、『美桜』ちゃんの事。」

そう言いながら、峰岸君はカノンの頭を優しくなで、自分の席に向かった。

一連のやり取りを見ていたクラスメイト達は、「なぁんだ、やっぱり噂は噂だな」と期待を裏切られたような表情を浮かべ、原さんは「やれやれ」と言わんばかりの安心したような、呆れたような表情を浮かべた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...