「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」

桜庵

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最後の異世界生活~カノン編~

~いのりちゃんの涙~

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朝のホームルーム前に、クラス内でちょっとした噂の騒動が起きた日の授業中。

時はすでに経ち、カノン達は4時間目の授業、数学を受けていた。

「(......お昼前の数学はお腹が空いているはずなのに、なんだか眠気に襲われますわね...。古文もなかなかの強者ですが、数学も...あなどれませんわ...。)」

カノンは黒板に書かれた数式をノートに書きとめながら、眉間に皺を寄せて、襲ってくる眠気と葛藤しながら問題を解いていた。

だが、ここはさすがと言うべきだろうか。
眠気と葛藤しながらとは言え、早く問題を解き終え、動かしていた手が止まった。

カノンは顔を上げ、クラス内の様子を見るといまだに机に向かい、ペンを走らせる皆の様子があった。

「(......皆さん、まだ問題を解いていますわ。先生も、待ち疲れてきたのか、少しウトウトしてます。......そういえば、朝の噂...いったいどこから、なぜあんな内容が...。

名前呼び...は、気をつけていますし、休み時間や、放課後はそこそこおしゃべりもしますのに......。

デート...してないから...?
いえ、でも、部活がありますし...。
峰岸君も家の事がありますし...。)」

カノンは噂の出処を考え込んでいたが、もう一つの噂の事も頭をよぎった。

「(そういえば、噂はもう一つあるのですよね……。たしか...幽霊が出るといのりちゃんが言ってましたわ。

......どこに出るのでしょうか...。
わたくしが行く場所に出なければよいのですが......。

あ!こ、怖くありませんわ!ただ、拳が通らないという事がやっかいなだけで、怖くありません!)」

カノンは噂の事を考え込んでいたのだが、次に頭をよぎったのは、何日か前に一ノ瀬家の皆と食事をしている時の会話だった。

「(この間…とおるお父様達には、部活がない日も帰りが遅くなる事を相談したのですよね…。空手教室には変わらず通いますが、別件でやりたい事が増えましたし…。)」

カノンが物思いにけていると、時刻はいつの間にか授業が終わる時間を指していた。

チャイムが鳴り、お昼休憩をとる為学校中が少し騒がしくなった。

カノンは荷物を持ち、峰岸君の方へと真っ先に向かい、お昼に誘った。

その様子を見たクラスメイト達はやはり、噂はデマだったのだと思い直し、峰岸君からの二つ返事をもらったカノンは、原さんもお昼に誘い、原さんは一瞬、躊躇ちゅうちょした表情を見せたが、カノンと峰岸君について行く形で三人はいつもお昼を食べている屋上へと向かった。

カノン達三人は屋上に着き、いつもの場所で原さんを真ん中にして座り、お弁当を広げた。

「………。」
「………。」
「………。」

カノンや峰岸君は気まずいわけではなかったが、何故だか無言で黙々とお昼を食べており、そんな二人に合わせるように、原さんも黙々とお昼を食べていた。

「………だぁーーーー!!!何この空気!!!気まずさとはまた別の気遣いが溢れた空気!!こっちも気を遣って皆が気疲れするやつじゃん!!休憩したけど、した気にならんやつよ!!」

その場の空気に耐えられなくなった原さんが、勢いよく立ち上がり、持っていたお弁当を自分が今まで座っていた場所に置き、カノンと峰岸君の二人の前で仁王立ちをした。

「今から、ものを申させて頂きます!!友達だからと言って、遠慮はしないからね!」

「……いのりちゃんは、あまり遠慮がないですわよ…今更ですわ。」

「うっ…~~おだまりなさい!」

原さんの急な言葉にカノンや峰岸君は、驚いた顔で原さんを見て、カノンはツッコミを入れた。
カノンの言葉に図星だったのか、少し悔しそうな表情を見せたが、強気な表情になり、カノンの言葉を一蹴した。

「美桜ちゃんと、峰岸君が別れたって噂!二人のその雰囲気が原因だと思います!!なんか、この間からよそよそしい!特に峰岸君!ノリが良かったり、優しかったりするけど、どこか他人事というか、心ここにあらずというか…

………カノンちゃんと美桜ちゃんが入れ替わってるから?
そうだとしたら…なんで?

……入れ替わる前に、美桜ちゃんから話、聞いてたじゃん…。
受け入れるって話…したじゃん…。

実際、カノンちゃんと関わって、姿や声に違和感はあって戸惑いもあったけど、全然……別人だよ…。

美桜ちゃんは美桜ちゃんで、カノンちゃんはカノンちゃんだよ。

それなのに……峰岸君…なんだか冷たく見えるよ…。
笑っているのに…笑えていない…みたいな…。

嫌だよ…変な噂は流れるし…、二人ともよそよそしいし…。
だいたい、カノンちゃんは優しすぎるんだよ。

美桜ちゃんに負けないくらい、優しすぎるよ…峰岸君に気を遣い過ぎだよ。

ごめん…なんて言えば良いんだろう…私、言葉へたくそだから…うまく言えないのは許して……。」

原さんは最初こそ強気に発言していたのだが、次第に感情が溢れ、涙を流しながら、ここ最近思っていた感情を口にした。

カノンと美桜が入れ替わってからの二人の間に流れる空気。
以前、カノンが初めてこの世界に来た時と同じ友達という関係で、今まで通りなはずなのに、どこか溝があるような、そんな空気が二人にはあった。

カノンは美桜や峰岸君を想って無意識のうちに、峰岸君との会話や接し方に壁を作り、距離を置いていた。

峰岸君もまた、受け入れると言って、受け止めていたつもりだが、美桜とは違う人物という概念から心に壁を作っていたのだ。

原さんはそんな心理的な事はわからないにしても、好きな友達と、その友達の好きな人、また、新しく出来た好きな友達の事だ。
何か本能的なもので感づいたのだった。
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