157 / 170
最後の異世界生活~カノン編~
~心のこもった演奏なら~
しおりを挟む
学校中で広まっていた図書館や第三音楽準備室の噂は、徐々に収まっていき、生徒のほとんどが口にしなくなった頃、週明けにはテストが控えている。
そんな平日の放課後。
この日は図書館ではなく、生徒が何人か残っている教室で勉強をする事になった。
「いのりちゃん、今日はこれを聞きながらお勉強をしてみませんか?」
「?美桜ちゃんのスマホ…と、イヤホン?」
「はい!もう再生準備はバッチリですわよ。少しだけ…雑音がありますが…。」
カノンと原さん、峰岸君が机に教科書を広げて勉強の準備を始めた途端、カノンは
原さんにスマホとイヤホンを渡した。
それを受け取った原さんは疑問に思いながらも、自分の耳に装着し、画面をタップして再生をした。
「!…これ…ピアノ?」
「わたくしの作曲した演奏で申し訳ないのですが…。」
「……キレイな曲…ありがとう!さっそくやってみる!!」
原さんは、イヤホンを装着したまま机に向かい、ペンを走らせた。
「美桜ちゃん、ピアノって?それに、美桜ちゃんの作曲って?」
「実は…図書館で勉強したあと、駅前のショッピングモールに一ノ瀬家の皆さんと行きまして、買い物の途中で皆さんを待っている間にストリートピアノを拝借しまして…。
いのりちゃんが集中出来るようにと、思いを込めながら演奏をしたものを、携帯で録音したのですわ。
ストリートピアノのルールと、一ノ瀬家の皆さんとの待ち合わせ時間もありましたので一曲しか演奏出来なかったですが…。」
「そうなんだ、作曲ってすごいね。音楽にはサブリミナル効果があって、睡眠に入りやすくなったり、集中を高めたりするとも言われているからね。」
「はい…今思えば、わたくしの演奏ではなくとも良かったのでは…と。
音楽を投稿出来るサイトはいくらでもありますし、つたない演奏よりも、プロの方の方が良かったのでは…と。」
「そんな事ないと思う。原さん…いつもより集中しているよ。
美桜ちゃんの気持ちがこもった曲って言うのが大きいと思う。」
「そうだと…嬉しいですわ。」
峰岸君の言葉通り、原さんを見ると、時々考える素振りはあるものの、スラスラとペンを動かし、いつもよりも集中しているように見えた。
原さんに続き、峰岸君やカノンもペンを動かし、勉強を進めた。
「(そういえば…ショッピングモール内の掲示板で見かけたあの広告…。
応募…してみましょう…。)」
そうして、カノン達は期末テストに向けて勉強を進めていき、週末も勉強のために一ノ瀬家に集まった。
カノンお手製のスイーツをもてなしたり、休憩をはさみ談笑を交えながら、やれることは全部した。
そんな中で迎えた期末テスト。
一日、一日と最終日まで難なく過ぎていった。
テスト最終日の放課後。
言わずもがな、カノンは余裕の表情を浮かべており、峰岸君は手ごたえありという表情だ。
原さんはと言うと、相変わらず自信のない表情を浮かべている。
「今日でテスト終わりですわね。お二人とも、お疲れ様でした。」
「うん、美桜ちゃんもお疲れ様。……原さんは…だいぶお疲れ…。」
「うん…燃え尽きた…。我が人生…悔いなし…。」
「武士か!原さん、まだ終わってないよ!辛いテストを乗り越えたら後は楽しい事しか残ってないよ!夏休みとか!」
「そっか、そうだね!夏休み!!海にお祭り!!おっしゃーー!!」
「ふふっ、やっといつものいのりちゃんに戻りましたわね。」
「でも、やっぱり、今回も美桜ちゃんに助けられたな…。ありがとう。ご褒美とか、楽しみとか、用意してくれて…。」
「?わたくしは何もしてませんわよ?」
「週末、一緒に勉強してくれた時、私のモチベーションを維持してくれようと、お菓子作ってくれたじゃない。すごく嬉しくて、すごい美味しかった!ありがとう!
あと、曲も!!
あの曲、本当に何回でも聞きたくなるし、何回も聞いたおかげでこう…勉強がはかどって、記憶に残っていたというか…なんというか…とにかく、今回のテストもカノ…美桜ちゃんのおかげでいっぱい解けたの!いっぱい協力してくれてありがとうございました!!」
原さんはカノンにお礼を伝えると同時に思いっきり頭を下げた。
その様子はクラスメート達の視線を集め、カノンは恥ずかしくなり、原さんに顔を上げるように伝え、峰岸君は楽しそうに、にこやかに笑って二人を見ていた。
「…こんなに…喜んでもらえるとは…。」
「「ん?」」
「あ、いえ、曲ですわ…。こんなに人に喜んでもらえたのは初めてですので…。
わたくしの国では…と言うより、家では、どこかで、誰かの前で演奏する事はなくても、令嬢ならピアノは弾けて当たり前…でしたので。
こんな風に誰かに聞いてもらえて、喜んでもらえた事はないのです。」
「えーー!!もったいない!!すっごく上手で、キレイで、何回でも聞きたいし、他のも聞きたいくらいなのに!」
「…そういえば、僕はまだ聞いていなかったな…。あの第三音楽準備室の時のちょこっとだけしか…。」
「それももったいない!!この間もらったデータ、今から送るから聞いてみて!!
絶対惚れこむから!!それくらい、効果あったの!えっと…サブ…サブリ…な?」
「サブリミナルだね。」
「そう!それ!」
「ふふっ…いのりちゃんたら…雅君が呆れた顔をしてますわよ。」
「うぅ…とにかく!聞いてみて!」
原さんの促すまま、峰岸君もこの間カノンがストリートピアノで弾いた曲のデータをもらい、イヤホンで聞いてみた。
「!…この曲…たしかにキレイだ。これを作曲したなんて…本当にすごいね。」
「(お二人とも…そこまでよい反応を見せて頂いて…嬉しいですわ。やはり…音楽は素晴らしいですわね。)テストも終わりましたし、空手も、演奏も頑張りますわ!!」
カノンは原さんや峰岸君の曲に対する反応を見て、自分のやりたい事を再度意気込んだのだった。
そんな平日の放課後。
この日は図書館ではなく、生徒が何人か残っている教室で勉強をする事になった。
「いのりちゃん、今日はこれを聞きながらお勉強をしてみませんか?」
「?美桜ちゃんのスマホ…と、イヤホン?」
「はい!もう再生準備はバッチリですわよ。少しだけ…雑音がありますが…。」
カノンと原さん、峰岸君が机に教科書を広げて勉強の準備を始めた途端、カノンは
原さんにスマホとイヤホンを渡した。
それを受け取った原さんは疑問に思いながらも、自分の耳に装着し、画面をタップして再生をした。
「!…これ…ピアノ?」
「わたくしの作曲した演奏で申し訳ないのですが…。」
「……キレイな曲…ありがとう!さっそくやってみる!!」
原さんは、イヤホンを装着したまま机に向かい、ペンを走らせた。
「美桜ちゃん、ピアノって?それに、美桜ちゃんの作曲って?」
「実は…図書館で勉強したあと、駅前のショッピングモールに一ノ瀬家の皆さんと行きまして、買い物の途中で皆さんを待っている間にストリートピアノを拝借しまして…。
いのりちゃんが集中出来るようにと、思いを込めながら演奏をしたものを、携帯で録音したのですわ。
ストリートピアノのルールと、一ノ瀬家の皆さんとの待ち合わせ時間もありましたので一曲しか演奏出来なかったですが…。」
「そうなんだ、作曲ってすごいね。音楽にはサブリミナル効果があって、睡眠に入りやすくなったり、集中を高めたりするとも言われているからね。」
「はい…今思えば、わたくしの演奏ではなくとも良かったのでは…と。
音楽を投稿出来るサイトはいくらでもありますし、つたない演奏よりも、プロの方の方が良かったのでは…と。」
「そんな事ないと思う。原さん…いつもより集中しているよ。
美桜ちゃんの気持ちがこもった曲って言うのが大きいと思う。」
「そうだと…嬉しいですわ。」
峰岸君の言葉通り、原さんを見ると、時々考える素振りはあるものの、スラスラとペンを動かし、いつもよりも集中しているように見えた。
原さんに続き、峰岸君やカノンもペンを動かし、勉強を進めた。
「(そういえば…ショッピングモール内の掲示板で見かけたあの広告…。
応募…してみましょう…。)」
そうして、カノン達は期末テストに向けて勉強を進めていき、週末も勉強のために一ノ瀬家に集まった。
カノンお手製のスイーツをもてなしたり、休憩をはさみ談笑を交えながら、やれることは全部した。
そんな中で迎えた期末テスト。
一日、一日と最終日まで難なく過ぎていった。
テスト最終日の放課後。
言わずもがな、カノンは余裕の表情を浮かべており、峰岸君は手ごたえありという表情だ。
原さんはと言うと、相変わらず自信のない表情を浮かべている。
「今日でテスト終わりですわね。お二人とも、お疲れ様でした。」
「うん、美桜ちゃんもお疲れ様。……原さんは…だいぶお疲れ…。」
「うん…燃え尽きた…。我が人生…悔いなし…。」
「武士か!原さん、まだ終わってないよ!辛いテストを乗り越えたら後は楽しい事しか残ってないよ!夏休みとか!」
「そっか、そうだね!夏休み!!海にお祭り!!おっしゃーー!!」
「ふふっ、やっといつものいのりちゃんに戻りましたわね。」
「でも、やっぱり、今回も美桜ちゃんに助けられたな…。ありがとう。ご褒美とか、楽しみとか、用意してくれて…。」
「?わたくしは何もしてませんわよ?」
「週末、一緒に勉強してくれた時、私のモチベーションを維持してくれようと、お菓子作ってくれたじゃない。すごく嬉しくて、すごい美味しかった!ありがとう!
あと、曲も!!
あの曲、本当に何回でも聞きたくなるし、何回も聞いたおかげでこう…勉強がはかどって、記憶に残っていたというか…なんというか…とにかく、今回のテストもカノ…美桜ちゃんのおかげでいっぱい解けたの!いっぱい協力してくれてありがとうございました!!」
原さんはカノンにお礼を伝えると同時に思いっきり頭を下げた。
その様子はクラスメート達の視線を集め、カノンは恥ずかしくなり、原さんに顔を上げるように伝え、峰岸君は楽しそうに、にこやかに笑って二人を見ていた。
「…こんなに…喜んでもらえるとは…。」
「「ん?」」
「あ、いえ、曲ですわ…。こんなに人に喜んでもらえたのは初めてですので…。
わたくしの国では…と言うより、家では、どこかで、誰かの前で演奏する事はなくても、令嬢ならピアノは弾けて当たり前…でしたので。
こんな風に誰かに聞いてもらえて、喜んでもらえた事はないのです。」
「えーー!!もったいない!!すっごく上手で、キレイで、何回でも聞きたいし、他のも聞きたいくらいなのに!」
「…そういえば、僕はまだ聞いていなかったな…。あの第三音楽準備室の時のちょこっとだけしか…。」
「それももったいない!!この間もらったデータ、今から送るから聞いてみて!!
絶対惚れこむから!!それくらい、効果あったの!えっと…サブ…サブリ…な?」
「サブリミナルだね。」
「そう!それ!」
「ふふっ…いのりちゃんたら…雅君が呆れた顔をしてますわよ。」
「うぅ…とにかく!聞いてみて!」
原さんの促すまま、峰岸君もこの間カノンがストリートピアノで弾いた曲のデータをもらい、イヤホンで聞いてみた。
「!…この曲…たしかにキレイだ。これを作曲したなんて…本当にすごいね。」
「(お二人とも…そこまでよい反応を見せて頂いて…嬉しいですわ。やはり…音楽は素晴らしいですわね。)テストも終わりましたし、空手も、演奏も頑張りますわ!!」
カノンは原さんや峰岸君の曲に対する反応を見て、自分のやりたい事を再度意気込んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜
ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」
「街の井戸も空っぽです!」
無能な王太子による身勝手な婚約破棄。
そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを!
ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。
追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!?
優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。
一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。
「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——!
今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける!
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる