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あの時あの場所で
カラスに負けたくない
しおりを挟む「あはははっ、あはははっ、史砂よ。あはははっあはははっ。わたしだよ、史砂。それにしてもよくもこの大事な羽をぐちゃぐちゃにしてくれたものだよな」
カラスは、そう言いながら木の上にぴょーんと飛び移った。
どうしよう……。
怒らせてしまったみたいだ。
カラスは、勝ち誇った様子でカァーカァーカァーッと鳴いた。
「史砂よ」
カァーッカァーッカァー。
「教えて、あなたは何者なの? 本当にカラスなの? どうしてわたしに攻撃するの? わたしは、あなたに何かした?」
カラスではないとすれば一体こいつは何? 知るのも怖いような気もするけれど、知らなきゃいけない。
どうしてわたしに攻撃するのかも知らなきゃならない。
カラスは、カァーッカァーッと鳴き、それから、
「教えてほしいのか?」
と、低くてゾッとする声で言った。
「教えて」
わたしも、お腹に力を入れて声を絞り出した。
「そんなに知りたいか、わたしが何者で、何故お前を襲うのかを」
カラスの声は、低くて怖い。
寒気がしてきた。 だけど負けてなんていられない。
「知りたい、教えて」
わたしは、カラスのつぶらな瞳を見つめて言った。
風がひゅーと吹いた。
そして……。
「史砂、甘いな。自分でよく考えるんだな」
カラスのよく見ると可愛らしいそのつぶらな瞳がキラリと光りそして、わたしを睨みつけた。
キラリと光った瞳はわたしを何処かに突き落とそうしているかのように感じる。そしてその瞳の中に引き込まれてしまいそうだ。
ゾクリと戦慄が走った。
そして、ガタガタガタガタと地面が揺れた。風が激しく吹く。
カラスは、「またな、史砂よ」と言って翼を広げ飛び去った。
突風でわたしの髪の毛が煽られた。
「逃げるな、カラス~」
わたしは、大声で叫ぶがカラスは遥か彼方の上空を舞う。わたしに翼があれば追いかけることができるのに悔しい。
それにしても、今の地面の揺れはなんだったんだろうか?
カラスが飛び去った後の地面はさっき揺れたのが嘘のように、揺れなんて感じないし風も止んだ。
カラスは、ズルい。
「どうして、教えてくれないの~」
わたしは、空を見上げて叫んだ。
美しい夕焼けが空を真っ赤に染めとても綺麗だ。そして、今、まさに太陽が水平線に沈もうとしている。
なんだろ? この不思議な気持ちは、太陽を見ていると生きているんだなという思いと、なんだろこの懐かしい胸に染みる気持ちは。
身の毛のよだつ恐怖から一転して、美しい夕焼け空が切なく心に染みた。
お父さんとお母さんのいる家に帰ろう。
カラスがなんだって言うんだ。
考えないといけないことはあるかもしれないけれど、今はいい、今日の夕飯は何かな?
わたしは、沈む太陽を見ながら元気よく歩いた。
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