どうかわたしのお兄ちゃんを生き返らせて

なかじまあゆこ

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カラスを退治したい

わたしは負けない!

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  あれは夢だったと、思うけれどお兄ちゃんはわたしに会いに来た。そんな気がする。

「カラスに負けるなよ」、とお兄ちゃんは言った。

  お兄ちゃんが応援してくれるのであれば、わたしは、カラスと戦ってやる。負けないんだから。

「お兄ちゃん、史砂は負けないからね!」

  窓を開け秋の風を胸いっぱいに吸い込みわたしは、「よし!」と拳を握りしめた。

 深まりつつある秋がそこにあった。

  
階段をトントンと下りてわたしは、食事の間に行く。

「史砂おはよう」とお父さんが広げた新聞の隙間から顔を覗かせた。

「おはよう、お父さん」

 わたしも座布団に腰を下ろす。

  お母さんが、「史砂ちゃん、おはよう、昨日はよく眠れた?」とわたしの目の前に納豆、ご飯、お味噌汁、煮物などを置きながら尋ねた。

  今日の朝食は和食だ。

「おはよう、お母さん。う、うん。よく眠れたよ」

  
  きっと、お母さんはお兄ちゃんの遺影のことを気にしているはずだ。

「それなら良かったわ」

  お母さんは、そう言って微笑んだ。

「今日は、和食だね。お味噌汁美味しい~」

  わたしは、明るく元気な声を出して、笑顔を作りながらお味噌汁を飲み、それからお箸で納豆をかき混ぜた。

  お母さんも座り自分の分の朝食を置いた。

「納豆はね、何回もかき混ぜると体にいいらしいわよ」

  と言いながらお母さんは、納豆を何回もお箸でかき混ぜている。

  わたしもお母さんと同じように何回も納豆をかき混ぜた。

  お父さんは、そんなわたし達を目を細めながら嬉しそうに眺めていた。

  
  朝食は美味しかった。昨日は大福も夕飯も味を感じられなかったのに、今日の朝ご飯はとても美味しく食べることができた。お味噌汁に入っていたじゃがいもがほくほくしていてほっこりと癒された。

  これもきっと、お兄ちゃんが夢の中で応援してくれたからだ。

  お兄ちゃんのお陰だね。

  感謝だよ。お兄ちゃん。

  わたしのことを見守っていてね。頑張るからね。そうと決まればカラス退治だ。

  わたしは、ご飯をもりもり食べた。カラスに負けないためには体力もつけないとね。


「行ってきます」

  わたしは、玄関の引き戸を元気よくガラガラと開けた。

  お父さんとお母さんは、「いってらっしゃい」と優しい笑顔で手を振ってくれた。

  学校に行く足取りも今日は軽やかだ。神社の前でいつものようにゆかりと真由と待ち合わせ、「おはよう」と挨拶を交わして学校に向かう。

  いつもの毎日が少しだけ輝いて見えた。
  
  
  この日は特に問題も起こらずに一日が過ぎた。

  今日も授業は退屈で眠くなった。だけど、お弁当もカラス弁当じゃなくて、玉子焼き、ウィンナー、炒め物、プチトマトなどのありふれたお弁当だった。

 とりあえず、今のところは順調に一日が過ぎている。

  このまま何ごとも起こりませんように。

  だけど、用心はしておかないと。この前だって、カラスに学校からの帰り道に襲われたばかりなんだから。

    
  今日もゆかりと真由の二人と神社の前で、「また、明日ね」と言って別れた。

  わたしは、ここからが肝心よね、もしカラスがやって来ても負けないからね。

  わたしは、気合いを入れて歩く。一歩一歩力強く歩く。

   反対にわたしの方からあのカラスを見つけ出して退治したいよ。

  わたしは、一人でぶつぶつ呟きながら歩いているうちに自宅の前に着いた。

  気合いを入れた時に限ってあのカラスと会わない。

  まあ、あんなカラスとは会わない方が良いのだけど。

  
「ただいま~」

  お父さんもお母さんも食堂で仕事中だから誰も居ないのは分かってはいるけれど、わたしは元気よく挨拶をした。

  学校鞄を自室の部屋に置き、お母さんがいつも用意しておいてくれるお菓子を食べようと思い階段をトントンと下りた。

  今日のお菓子は何だろう?

    
  お菓子は何かなとワクワクしながら、台所に行った。

  台所のテーブルの上にメモ書きが置いてあり手に取り確認すると、『ケーキが冷蔵庫の中に入っています。母より』と書いてあった。

「やったーケーキだ、ケーキだ、嬉しいな」

  わたしは、冷蔵庫を開けてケーキの箱を取り出した。

  箱を開けるとイチゴのショートケーキとモンブランだった。

  
  お皿を食器棚から取り出して、イチゴのショートケーキとモンブランを盛る。

  紅茶を作り、紅茶のカップに注ぐ。

 台所のテーブルにお皿と紅茶カップを置き、お菓子タイムだ。

  フォークで、イチゴのショートケーキをまずは一口食べた。

「う~ん、美味しい」

  ふわふわのスポンジに生クリームとイチゴの甘酸っぱさが堪らない。

  美味しくて幸せな気持ちになっていたわたしの耳に、バサバサと何かの音が聞こえてきた。

   何だろう?
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