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「ま、待って…っ、諦めちゃ、困る…!」
振られるのを覚悟した瞬間、檜山が慌てたようにそう言って、俺のシャツを掴んだ。胸ぐらを引っ張られて、キスができそうな距離で檜山と見つめ合う。
「──っ、ご、ごめん…!」
その距離に驚いた檜山は、すぐに我に返って俺のシャツを離した。先程までのクールな表情が一転して、頬どころか耳まで真っ赤になっている。
「え…、今、諦めちゃ困るって…」
「──…っ!」
俺は振られるところだったのではないのか。いや、でも意味がわからない。なら、なぜあんなに徹底的に俺は避けられていたのか。
「ごめん、意味わかんないんだけど…。なんで避けてたの、俺のこと…」
「わ、わかってる…! 落ち着くから、ちょっと、待って…」
そう言いながら、檜山が真っ赤になった顔を両手で隠す。いつもクールな檜山がこんなに取り乱しているのは珍しい。あの日の朝みたいだ。
◇
「こうなるのわかってたから、村瀬に会えなかったの…」
少し落ち着いた檜山が、顔を隠していた手を緩めて話し出す。
「あの日から、駄目なの、あたし。村瀬を見ると…」
「……?」
「い、色々思い出して、顔が熱くなって、平静を保てなくて…」
「え…」
「こんなんじゃ仕事になんないし、みんなにもあたしが村瀬が好きってバレる…」
そう言うと耐え切れなくなったのか、檜山はもう一度その赤い顔を両手で覆った。
俺が好きだと、確かに今、そう言った。
「さ、避けたりして…、ごめん…」
「いや…、つまり、俺は檜山と両思いってことで、いいの…?」
俺のその質問に、檜山が不思議そうに顔を上げる。
「なんで今更そんなこと聞くの…?」
キョトンとした顔でそう答える檜山。
お前が俺のことを紛らわしく避けたせいじゃないかと急にイラッとして、俺は檜山の頬を両手でムギュッと潰した。
◇
「檜山…」
名前を呼ぶと檜山の瞳がこちらを向く。丸いその瞳は、少し戸惑ったような、だけど、どこかあの夜みたいに甘い気配もする。
「はは。真っ赤で可愛い」
「バ、バカにしてる…?」
「してない。めちゃくちゃ可愛いと思ってる」
「可愛…っ!? そ、そう…」
髪の毛を落ち着かない様子で触りながら、恥ずかしそうに檜山が視線をずらす。
意味もわからず避けられて、諦める覚悟までしたけれど、蓋を開けてみれば俺を意識してここまで赤くなってくれているなんて、可愛すぎるし、嬉しくて堪らない。
檜山の頬に優しく包むように触れて、こちらを向かせ直す。
「はは。檜山のほっぺ熱い」
「あ、あんま見ないで…」
「ちなみに、檜山は俺を見ると、何を色々思い出しちゃうわけ」
「──…っ!?」
「あの夜の何を思い出してるのか、興味あるんだけど」
意地悪にそう聞くと、すでに赤い檜山の顔がさらに赤く染まった。一体何を思い出しているのか大いに気になるところだが、それはおいおい聞き出そう。
「ね、檜山…」
「な…に…?」
「俺と付き合って」
「う、うん…、それは勿論…」
そう答えた檜山は、恥じらいながら、少し嬉しそうな顔をして。それがたまらなく可愛かった。
「好きだよ、檜山…」
そう囁いて、俺は檜山と唇を近づけた。
振られるのを覚悟した瞬間、檜山が慌てたようにそう言って、俺のシャツを掴んだ。胸ぐらを引っ張られて、キスができそうな距離で檜山と見つめ合う。
「──っ、ご、ごめん…!」
その距離に驚いた檜山は、すぐに我に返って俺のシャツを離した。先程までのクールな表情が一転して、頬どころか耳まで真っ赤になっている。
「え…、今、諦めちゃ困るって…」
「──…っ!」
俺は振られるところだったのではないのか。いや、でも意味がわからない。なら、なぜあんなに徹底的に俺は避けられていたのか。
「ごめん、意味わかんないんだけど…。なんで避けてたの、俺のこと…」
「わ、わかってる…! 落ち着くから、ちょっと、待って…」
そう言いながら、檜山が真っ赤になった顔を両手で隠す。いつもクールな檜山がこんなに取り乱しているのは珍しい。あの日の朝みたいだ。
◇
「こうなるのわかってたから、村瀬に会えなかったの…」
少し落ち着いた檜山が、顔を隠していた手を緩めて話し出す。
「あの日から、駄目なの、あたし。村瀬を見ると…」
「……?」
「い、色々思い出して、顔が熱くなって、平静を保てなくて…」
「え…」
「こんなんじゃ仕事になんないし、みんなにもあたしが村瀬が好きってバレる…」
そう言うと耐え切れなくなったのか、檜山はもう一度その赤い顔を両手で覆った。
俺が好きだと、確かに今、そう言った。
「さ、避けたりして…、ごめん…」
「いや…、つまり、俺は檜山と両思いってことで、いいの…?」
俺のその質問に、檜山が不思議そうに顔を上げる。
「なんで今更そんなこと聞くの…?」
キョトンとした顔でそう答える檜山。
お前が俺のことを紛らわしく避けたせいじゃないかと急にイラッとして、俺は檜山の頬を両手でムギュッと潰した。
◇
「檜山…」
名前を呼ぶと檜山の瞳がこちらを向く。丸いその瞳は、少し戸惑ったような、だけど、どこかあの夜みたいに甘い気配もする。
「はは。真っ赤で可愛い」
「バ、バカにしてる…?」
「してない。めちゃくちゃ可愛いと思ってる」
「可愛…っ!? そ、そう…」
髪の毛を落ち着かない様子で触りながら、恥ずかしそうに檜山が視線をずらす。
意味もわからず避けられて、諦める覚悟までしたけれど、蓋を開けてみれば俺を意識してここまで赤くなってくれているなんて、可愛すぎるし、嬉しくて堪らない。
檜山の頬に優しく包むように触れて、こちらを向かせ直す。
「はは。檜山のほっぺ熱い」
「あ、あんま見ないで…」
「ちなみに、檜山は俺を見ると、何を色々思い出しちゃうわけ」
「──…っ!?」
「あの夜の何を思い出してるのか、興味あるんだけど」
意地悪にそう聞くと、すでに赤い檜山の顔がさらに赤く染まった。一体何を思い出しているのか大いに気になるところだが、それはおいおい聞き出そう。
「ね、檜山…」
「な…に…?」
「俺と付き合って」
「う、うん…、それは勿論…」
そう答えた檜山は、恥じらいながら、少し嬉しそうな顔をして。それがたまらなく可愛かった。
「好きだよ、檜山…」
そう囁いて、俺は檜山と唇を近づけた。
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