黒の棺の超越者《オーバード》 ー蠢く平行世界で『最硬』の異能学園生活ー

浅木夢見道

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第2章 東雲学園編 新生活とオリエンテーション

057 カリキュラム、スタート

 オホーツク港は国疫軍の軍港でもあり、すぐそばには、唸るほどある土地を存分に利用した、広大な運動場があった。

 下船した東雲学園の1年生たちは、その運動場へと通され、クラスごとに、バディと横並びに整列する。

 運動場では、ロシア支部の新兵たちが日々の訓練としてランニングに励んでいる。
 彼らは訓練教官にどやされない程度に、日本から来た若者たちと、彼らを出迎える士官たちを横目で見ていた。

 そんな新兵たちの掛け声が響く運動場で、何人もの上等な軍服に身を包んだ男性が整列し、向かいに並ぶ1年生たちを鋭い眼光で睨んでいる。
 ……睨まれている、と真也は思ったが、それは単純に眼光が鋭いだけである。

 運動場に備え付けられた台……普段は訓練担当官が登り、新兵たちにヤジを飛ばす鉄骨の台の上には、ロシア支部のハバロフスク地区長であるサポフスキーが立っており、遠い日本から来た学生たちに挨拶を述べていた。

 どことなく東雲学園の校長を思い出させる風貌の男性は、入学式で見た校長と同じく、汗をかきながら言葉を紡ぐ。
 地区長はオーバードではなく、すぐそばに日本語の通訳の人が控えていた。
 地区長の言葉を、通訳の男性が真也たちに伝える。

「以上をもって、私からの挨拶とさせていただきます。
 くれぐれも皆様、大きな怪我、事故のないようお過ごし下さい」

 通訳がそう締めくくり、壇上から降りた地区長は、後ろに控えていた何人かの軍人たちに、へこへこを頭を下げてその末席へと並んだ。

 地区長、という役職であろう人間にしては非常に低姿勢だ。
 真也は伊織へと、見咎められないようにこっそり、小声で疑問を投げかける。

「……なあ、伊織。国疫軍の地区長、ってどんな偉さなの?」

 その質問に、伊織もまた見つからないよう小声で返事をする。

「んー、微妙な立ち位置なんだよね、地区長も、支部長も、軍の階級とはまた別にあるものだからさ。
 ……事務職のトップとも言えるけど、国疫軍の階級が支部長より上の人、ってのも支部内にいるし、作戦行動権や指揮権はどの支部も幕僚本部が握ってるから」

 伊織の言葉から察するに、先ほど地区長が頭を下げて回った、装飾の多いロシア軍人たちは上の階級の人たちなのだろう。

「へえ」
「長、ってつくけど、中間管理職みたいなもんかな」

 その言葉に、真也は再度、地区長を眺める。
 恐縮したように背を縮こめる姿は、なんとも言えない哀愁を漂わせていた。

 真也は、そういえば、と思い出して伊織に告げる。

「そういやさ、レイラのお父さんって、あの中にいるのかな?」
「……どうかな? 流石に少将が挨拶に来るとは思えないけど……レイラが言っていた内容から考えると、いてもおかしくないかもね。
 過保護、って言ってたし」

 伊織の言葉に、真也は列を成す軍人たちを一人一人観察する。

 どれがレイラの父親であっても、大差ないほどに全員が強面だった。
 まだあの地区長がレイラの父親だった方が、幾分かマシな心持ちになれるであろう。

 特に、一番怖そうな、腕を組んで1年生を睨みつける、白髪に白ヒゲの軍人は、レイラの父親とは違って欲しい。

 真也がそんな感想を抱いた当人。
 大柄で、強面揃いの軍人の中で特に強面の人物が、挨拶のために壇上へと上がる。

 あまりの気迫に、無意識に真也を含めた1年生たちは息を飲んだ。

「ダヴローパジャールチ、レシィーヴ!」

 その軍人の第一声は、ロシア語だった。
 低く響く声と、ロシア語特有の力強さが合わさって、真也はびくりと体を震わせる。
 すぐさま、横にいた通訳が口を開く。

「えー、ロシアへようこそ」
「ミニャザヴート、レオニード・ラーザレヴィチ・レオノフ。ギニャラーマヨール」
「えー、私はレオニード・ラーザレヴィチ・レオノフです。少将です」

 レオニード・ラーザレヴィチ・レオノフ少将。間違い無く、かの強面の男性が、レイラの父親だった。
 そうであって欲しくないと直前に祈った真也の想いは、いとも簡単に崩れたのだった。

 その後も、レオノフが力強く喋るたびに、通訳の人間が話す。

「……レイラのお父さんはオーバードじゃないんだね」
「そうみたい。非オーバードなのに、少将ってのは凄いよ。勲章も…よく見えないけど戦闘で得られたものが多そうだし。あの大っきな赤いやつ、確か殻獣撃破スコア4桁とかだった気がする」
「え、普通の人でも殻獣と戦えるの?」

 真也の言葉に、伊織はため息をつく。

「はぁ……間宮、普段の授業聞いてないの?
 一応、一般軍人向けの携帯兵器はあるよ。それで殻獣と戦うのも……まあ、不可能じゃない」

 伊織の「不可能じゃない」という濁した言葉と、レオノフの胸元で光る色とりどりの勲章のギャップに、真也はレオノフ少将という軍人の凄まじさを垣間見た気がした。

「レーリャ!」

 レオノフから飛び出た言葉に、真也は反応する。
 通訳もポカンとして、その言葉に続いたロシア語を翻訳した。

「えー、レーリャ……レイラさんですかね? こちらへ来てもらえますか?」

 真也が後ろを振り向くと、レイラが心底嫌だという顔で立っていた。
 しかし、相変わらずレオノフはレイラを呼び、壇上から降りようとする。
 その様子に、慌ててレイラは列から出て、レオノフの前まで移動した。

 レオノフは早口に何か言いながら、レイラの肩を叩く。その時のレイラの顔は真也からは見えなかったが、背中に『辟易』という文字が書いてあるように思えた。
 レオノフは、1年生の方にレイラを向き直させると、何事かを大声で言い放った。

 その言葉にレイラが目を丸め、レオノフの脇腹を殴ろうとするが、レオノフはひらりと身を躱して笑う。

 後ろに控えるロシア軍人たちが苦笑いをし、1年生たちは、通訳の人へと注目する。

 通訳は、少しためらった後、レオノフの言葉を翻訳し、1年生に伝える。

「えー、このレイラさんは、レオノフ少将の、娘さんだそうです。それでですね……」

 通訳はレオノフを窺い、レオノフは大きく頷く。それは、「日本語で伝えろ」という意思表示だった。

「皆さんで、しっかりと娘を守るように、との事です」

 通訳された言葉に、1年生達もまた苦笑いし、レイラは茹で蛸のように真っ赤になった。

 レオノフの発言で一悶着あったものの、そのまま挨拶は終了し、江島が進行を引き継いだ。

「ロシア支部の皆さん、ご挨拶ありがとうございました」

 江島の礼に、ロシア支部の面々は頷き、軍の建物の方へと帰っていく。
 レオノフは最後に手を振って去っていったが、全員がそれを自分たちへのものでは無く、レイラ宛であると断じ、もう一度視線を集めたレイラは先ほどと同じように真っ赤になった。

「1組の生徒は、こっちに来て。このまま、オペレーション業務の説明と、班分けをするわよ」

 そう告げたのは、1組の担任の女性だった。
 名前を前原といい、胸元の開いたスーツと眼鏡姿がセクシーな女性教諭である。
 前原に連れられて、1組の生徒達はロシア支部の軍人達が入っていった建物とはまた別の施設へと去っていった。



 残されたのは、オーバードのAとFクラスの面々だ。

 その視線はAクラスの担任、ネコミミの江島とFクラス担任である年配男性教諭、蓬田(よもぎだ)に注がれる。

 オリエンテーション合宿のしおりには、大まかな予定として、C指定営巣地へ行く、とは書かれていたものの、1年生達はこの後の動きに関しては分からない。
 彼らは、どのように合宿が進んでいくのか、緊張の面持ちで言葉を待っていた。

 そんな時、ちょうど江島の元に、資料の束が届けられる。
 資料の束を持ってきたのは、少しふくよかな中年の女性軍人であり、その顔はやつれていた。
 江島は、手元に届いた資料を一瞥すると、蓬田と相談し、生徒達に向かって声を掛ける。


「各員傾聴。今回の合宿について説明する」 


 江島の言葉に、1年生達は表情を固め、傾聴の姿勢をとる。

「今から、この合宿で共に軍務を行う小隊分けを発表する。A、Fクラス混合のものだ。
 その小隊ごとに、設定された任務を遂行しろ。その出来に応じて、2日目以降の内容も変わるものと思え」

 クラス混合の小隊での実戦形式。それは、一部の生徒が知る事ではあったが、毎年恒例の合宿内容だった。

「それぞれの小隊に、ロシアの士官学校の生徒と引率役が加わる。
 今から隊員名簿を配るので、名前を呼ばれた生徒はこちらに集まるように。その者が小隊長だ」

 その言葉に、1年生たちは色めき立つ。

 ここで隊長になる、というのは、学校からの評価の表れでもある。
 それはつまり、成績やそれに合わせた給与にも直結する内容であるし、なによりも『隊長に選ばれる存在』というのは今後の学園生活、ひいては国疫軍に登用後も付いて回る内容だった。
 バディを組んだ相手が自分よりも優れていたりすれば、まず選ばれることは無い。
 仲良し気分で相手を選んだ生徒の一部は、こっそりと肩を落とした。

「では、小隊長の名前を読み上げる。名前を呼ばれた者は、前に出て隊員名簿を受け取り、その場で待て」

 真也は他の生徒と違い、軍に入ってまだ数週間という経歴から、隊長になるはずがないだろう、と気軽に構える。

 江島が手元の資料をめくり、真也以外の1年生達の緊張が高まった。


「01小隊、葛城直樹特練一等兵」


 最初に明かされた名前に、直樹は破顔し、その後顔を引き締め直して返事をする。

「はい!」

 江島から隊員名簿を受け取った直樹、素早くその中の名前を確認する。
 その姿は、隊長としての責務を果たそうとする素晴らしいものに見えたが、直樹が探したのは『レイラ・レオノワ』の文字だった。

 江島は引き続き、小隊長を発表する。

「02小隊、レイラ・レオノワ特練上等兵」

 その言葉に、レイラは驚き、直樹は同じ小隊でなかった事に肩を落とす。

そして、他の生徒の中には「やっぱりな」と鼻で笑うものがいた。
 先ほどのレオノフの行動は、レイラに対しての『合宿での贔屓』の印象を植え付けたのだ。

 江島は、返事をしないレイラに言葉を重ねる。

「レオノワ。早く来い」
「……はい」

 周りの反応に肩を落としていたレイラだったが、なんとか返事をして隊員名簿を江島から受け取り、周りからは残酷な笑い声が溢れた。

 江島は、他の生徒達の反応に1つ咳払いをすると、厳しい目つきとなる。

「何か、勘違いしている者が居るようだが、レオノワは、『日本支部』で『特練上等兵』だ。
 これは、日本での規定殻獣撃破のスコアを超えたこと、そして殻獣災害に対しての作戦参加率の高さから任命されたものだ。
 先だっての南宿でも、救命活動、殻獣撃破を重ねている。
 今、反応した者の中で、同じ経歴で、この階級にいる者は?」

 その言葉に、1年生が静かになる。

 特練上等兵、という階級は、早くとも高校2年、もしくは3年になってようやく辿り着く階級である。
 また、いくらロシアが贔屓をしようとも、日本支部の階級に、他国が口を挟むことは出来ない。それは、1年生でも分かるほどの常識だった。

 江島は、レイラが贔屓ではなく、純粋に階級……つまりは実力から小隊長になったという事実を述べていた。

「……ありがとう、ございます」
「気にするな、レオノワ。お前の軍務実績は、私も知っている。胸を張れ」

 江島の言葉に、レイラはしっかりと頭を下げると、名簿を確認しつつ直樹の横に並んだ。

 静かになった1年生達に、江島は引き続き小隊長を告げ、名簿を手渡す。
 隊長はほとんどがAクラスの生徒であり、姫梨もまた名前を呼ばれたが、予想通り、真也が呼ばれることはなかった。



 小隊長が全て出そろい、江島は小隊長たちに今後の動きを伝える。

「小隊長は自身の小隊員を名簿で確認後、隊員をピックアップしろ。
 小隊ごとの顔合わせは奥の食堂で行え。隊員名簿に記載はないが、そこでロシアの生徒と引率役の正規軍人と合流となる。
 その後、小隊ごとに作戦会議を経て割り振られた装甲車で営巣地へと移動。
 各小隊の作戦内容は引率役の正規軍人から聞くように。到着時刻指定は1300」

 足早に告げられる江島の言葉を、小隊長となった面々は聴き逃すまいと集中して聞いていた。

 江島は、ひとつ間を置くと、全員に向かって号令を出す。

「各員行動開始。遅刻した者はペナルティが5点だ」

 その言葉と共に、一気に喧騒が広がる。
 名前を呼ぶ小隊長の面々と、その言葉に反応する隊員達。そして、そこから相談を始める者や、感想をこぼす者。ペナルティという謎の言葉にも、1年生たちは大いに惑わされる。
 完全に軍人ではない、高校生らしい詰めの甘さを感じさせる喧騒だった。

 とうとう、オリエンテーション合宿のカリキュラムがスタートした。
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