第26回漫画大賞 春の陣

第26回漫画大賞 春の陣

選考概要

今回、編集部内で大賞候補作としたのは、「菓子工房と箱庭のくま」「スーパーで買ったしめじが擬人化した話」「CQCQ?!」「縁あって宇宙人と旅をしています」「お魚の夜」「美のかたち」「初恋の不一致」「NO FACE」「甘めにキスα」「PARADISE」「海に続く天の涯」「食糧天使」の12作品。

個性が響き合った、多種多様なジャンル作品の中から、圧倒的な支持を集めた「菓子工房と箱庭のくま」を大賞(賞金50万円)に選出した。これで4大会連続の「大賞」選出となり、作品の洗練度が一段と高まっていると強く印象づける結果となった。

続く各賞の選考では、次いで支持を集めた「NO FACE」を編集長賞(賞金10万円)に、「縁あって宇宙人と旅をしています」をネコ部長賞(賞金10万円)に選出した。
「初恋の不一致」と「美のかたち」、「海に続く天の涯」、「甘めにキスα」を特別賞(賞金各5万円)に選出する運びとなった。

「菓子工房と箱庭のくま」は、洋菓子店のオーナーと擬人化した植物たちが織りなす日常ストーリー。主人公や植物たちの過去を少しずつ紐解く丁寧な構成や、物語の横軸となる事件を経て主人公が植物と共に成長していく姿は、読者の心に残るものとして高く評価された。特に、ほっこりとした各キャラクターの魅力と物語が相まって、読者の心をつかんで離さない引き込む力を感じた。今後、キャラクターを魅せる作画に磨きをかければ、商業水準への到達もそう遠くないはずだ。

「NO FACE」は、謎の女性から渡された仮面を着けることで異能力を得るバトルアクションファンタジー。特にキャラクターの感情を爆発させる描写に秀でており、非常に心に残る一作だ。ただ、物語の展開が唐突な印象を受けるため、今後は読み手の存在を意識した描写を心がけてほしい。

「縁あって宇宙人と旅をしています」は、星を食べに来た人型宇宙人の主人公と、成人の儀式のために訪れた猫型宇宙人が旅をする物語。特に各キャラクターに華があり、その卓越した技術力が評価を押し上げる大きな要因となった。しいて言うなら、宇宙人のみの登場ではなく、読者の拠り所となる視点を加えるなどより一層の深みのある作品にする工夫を心がけてほしい。

「初恋の不一致」は、女性教師と女子学生が織りなす百合作品。特に先生が『好き』という感情を自覚するまでの心の動きが、非常に細やかに描かれていて印象強かった。人物感情や演出の精度をさらに高めていくことで、作品としての完成度はより一層高められるはずだ。

「美のかたち」は、彼女を失った主人公が彼女の存続を望み奇行に走るサスペンスホラー作品。特にキャラクターの感情や成し遂げたいことが明確に描かれていて、インパクトのある作品だった。表情や仕草など、画力の面ではまだブラッシュアップできると大きく飛躍できるだろう。

「海に続く天の涯」は、古の民と言われ忌み嫌われた少年のファンタジー作品。壮大な世界観と緻密に練り上げられた設定が圧巻で、読者を瞬時に没入させる力に溢れていた。今後、キャラクターの心の動きが読者に真っ直ぐ伝わるような、親切な構成を意識できるとさらなる高みへと到達するだろう。

「甘めにキスα」は、主人公のミミちゃんと彼氏のスイくんのカップル青春ストーリー。とりわけヒロインの愛らしさが目を引き、恋愛ものとして非常に優れた素質を感じさせる作品だった。今後、構成と演出のクオリティをもう一段引き上げることができれば、商業漫画で活躍する日も近いだろう。

惜しくも受賞を逃した6作品もそれぞれに見所があり、将来性を感じる作品ばかりだった。

「CQCQ?!」は、恋に真っ直ぐな主人公を描いた学生青春ラブコメディ。特に生き生きとしたキャラクター描写と、さりげない伏線を織り交ぜた物語構成に、確かな才能を感じる。ただ、情報量の多さゆえに読者へ伝わりづらい部分も見受けられるため、伝えたい要素を取捨選択できれば、作品の魅力がより光り輝くだろう。

「スーパーで買ったしめじが擬人化した話」は、主人公が買ってきたしめじが擬人化して一緒に生活する日常ファンタジー作品。独自の視点と生命力あふれる描写が光り、安定した技術で世界観を形にできていた。今後、何を読者に伝えたいかという物語のテーマを明確化し、より深く読者に届くように工夫できれば作品本来のポテンシャルが、いっそう鮮やかに開花するだろう。

「PARADISE」は、広大な銀河を舞台に、宇宙清掃員の主人公が異星生物の救済に奔走するSFファンタジー。各キャラクターの個性が際立っており、非常に見応えがある作品だった。ただ、主人公の行動動機が掴みにくく、読者の気持ちを引っ張っていく力に物足りなさを感じた。物語の指針をより明確に提示し読者をぐっと引き込む構成にすることで、作品の魅力はより一層輝きを増すはずだ。

「お魚の夜」は、主人公がおばあちゃんに小さな箱をもらったことから不思議な夜の散歩に誘われるファンタジー作品。人物・背景ともに基礎がしっかりしており、作品としての世界観が魅力的だった。しかしながら、散歩に目的がなく、物語として読者をひきつける要素やキャラクター関係性に物足りなさを感じる。読者の視点を意識した演出のバリエーションを増やすことで、さらにレベルの高い作品に仕上がるはずだ。

「食糧天使」は、神になるための試練を受けている主人公が、その最後となる『天使を食すこと』を成し遂げようと奮闘するストーリー。「天使を食す」という独自性溢れる設定が魅力的で読者を引き込む力を持っていた。ただ、これまでのキャラクターの経緯などに関する情報が少ないため感情移入しづら点は否めない。キャラクターの内面的な醜さをもっとエンターテインメントとして昇華できれば、作品の魅力はさらに開花するはずだ。

「第26回漫画大賞 春の陣」の応募作品は1,082作品。前回を上回る作品応募総数となり過去最高となった。さらに4回連続の大賞選出という非常に喜ばしい結果となった。多種多様なジャンルや独創的なアイデアがひしめき合い、非常に見応えのある選考だった。次回も、既存の枠にとらわれない自由な発想と、強烈な個性を放つ才能が、栄冠を掴み取ることを期待している。

開催概要はこちら
応募総数 1,082作品 開催期間 2026年04月01日〜末日

編集部より

洋菓子店での日常を通じ、主人公と植物たちが共に成長していく姿を丁寧に描き切った傑作。キャラクターの魅力と構成の妙が相まって、読者を惹きつける強いパワーを感じさせられました。また、コマ割りがシンプルで読みやすい構成となっており、物語全体に流れる静かな空気感の演出は見事でした。今後は、画面の濃淡や線のメリハリを意識してキャラクターの魅力の最大化を図っていければ、もう一段階上の完成度の高い作品となっていくでしょう。


編集部より

ポイント最上位作品として“読者賞”に決定いたしました。魔界にあるベビーシッター会社の3人が狐の赤子を保育する作品。コマ数が少ないもののキャラクターの愛らしさとフリオチがきちんと盛り込まれていて、次々読みたくなる作品だった。ただ、魔界といった設定を生かしたストーリーやキャラの経緯の情報が少なく物足りなさを感じた。キャラクターの設定などを掘り下げて感情移入をしやすい構成にすると、さらに読者を世界に引き込める作品となるだろう。

NO FACE

109位 / 1,082件

編集部より

感情描写の鋭さと爆発力が素晴らしく、アクションファンタジーとして強い引力を持った作品だった。一方で、展開のスピード感が唐突な印象を与える場面も見受けられたので、今後は情報の出し方や読者への親切な導線を意識することで、より読者の心をつかんで離さない作品になっていくでしょう。


編集部より

類まれな技術力とキャラクターの華が光る、非常にポテンシャルの高い作品でした。今後、異質な世界観の中に読者の感覚に寄り添うキャラクターなどを盛り込み、工夫を凝らすことができれば、読者に鮮明に響く作品となるでしょう。唯一無二の作家性がさらに大きく開花する日を楽しみにしています。

初恋の不一致

46位 / 1,082件

編集部より

先生の心の移ろいを丁寧に追いかける筆致が素晴らしく、百合作品としての純度の高いドラマに仕上がっていました。感情の解像度をさらに引き上げ、一つ一つの演出に意図を込めて磨き上げることで、作品全体の完成度はより揺るぎないものへと到達するでしょう。

美のかたち

43位 / 1,082件

編集部より

キャラクターの感情が爆発するような描写に凄みがあり、非常にインパクトの強い作品でした。特に主人公の目的意識の強さが、物語に強固な説得力を与えています。今後は表情や所作の魅せ方を一段と研ぎ澄ませることで、作品としての完成度は格段に向上し、より魅力的な作品となるでしょう。

海に続く天の涯

245位 / 1,082件

編集部より

設定の緻密さと世界観の広がりが素晴らしく、描き手の熱量がダイレクトに伝わってくる力作でした。今後はキャラクターの行動原理や感情の揺れを、読者がより直感的に受け取れるような構成を意識してみると良いでしょう。持ち前の構想力に読み手への配慮が加われば、作品の魅力が更に鮮やかに開花するに違いありません。

甘めにキスα

113位 / 1,082件

編集部より

ヒロインのキャラクター造形が実に見事で、読者の心を掴む魅力に溢れています。恋愛漫画としての高いポテンシャルを感じさせる一作でした。今後は構成や演出の引き出しをより強化し、物語の魅せ方を追求してみてください。その確かな才能が、商業の舞台で大きく開花する日を楽しみにしています。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

Xいいね賞

※Xでいいねが多かったポストをしたユーザをアルファポリスが選出するものです。