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連載

番外編、エイプリルネタ

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 4月1日、エイプリルフール。嘘をついて良いとされている日だ。ただいくつか説があり、一日中構わないとされるパターンや、4月1日の午前中だけ許される説などなど……それからいうまでもなく、誰かが大怪我したとか、亡くなったとかのブラック過ぎる嘘はいくらエイプリルフールでも控えるべきだろう。

「と言うわけでアース、ここは1つ軽い嘘でもつきあおうじゃないかって思ってな!」

 元気にツヴァイはそんな事を言ってくる。まあこれも1つの季節物だなと思ってつきあう事にした。いきなり呼び出されたから何事だ!? と思ったのに。

「じゃあ、トップバッターは誰がやるんだ?」

 自分がそういうと、突如こんな声が背中の方から聞こえてきた。

「一週間後、アースさんは妖精国の女王と結婚する事が決まりました。そのため、妖精国では全力を挙げて結婚パレードを行い……」

 自分はすくっと立ちあがってすたすたと声の主に近寄り、ハリセンで思いっきり発言者の頭を引っぱたいた。

「ツヴァイが言っていただろ! 『軽い嘘』って! ここになぜ居るかは面倒だから聞かないが、思いっきり重い嘘を己の願望全開で言うんじゃない!」

 そう、なぜかそこにはフェアリー・クィーンが来ていたのだ。

「いいじゃないの……女王モードは今日ぐらいお休みしたいの〜!」

 だったら普通に休みにしてくれよ……結婚の二文字は思いっきり重いわ!

「よ、予想以上の闖入者が来たが面白いから良い! つ、次は何かないか!?」

 クィーンと言う闖入者を迎えても、何とか話を続けようとするツヴァイ。まあ良いか……ぴとっと自分にくっ付いてくるクィーンも今日ぐらいは好きにさせておこう。久しく会っていなかったしな。

「そういえばこんな話を聞いたんだけどさ、メイド服が流行っているダークエルフに対抗して、エルフが村の中をウェイトレス姿で歩くって話が持ち上がっているらしいわよ?」

 発言者はノーラ。んな馬鹿な話があるか、と一発で分かる内容だ。だが……

「「それは本当か(なのですか)!?」」

 引っかかった奴が2人もいた。ツヴァイとエリザである。即座にノーラに「嘘に決まってるじゃない」とさっくりぶった切られて、「「そ、そうだよな(ですよね)」」と我に帰り、アハハハハハハと二人そろって乾いた笑い声を上げている。

「そういえば、次のアップデートでは大太刀の発展系で、長い棒の上下に刃がついた変わり武器が出るって話があったな」

 これはレイジの発言。もちろん嘘だな……ちなみに、公式HPにもこの武器は次回のアップデートにて実装するような感じでそれっぽく載っていた。当然下の方に小さく『ウソです』の但し書きがあったが。

「本当ですか!?」

 食いついたのは言うまでもないがカザミネ。レイジに公式HPを見に行ってみろと言われておおー! と喜ぶカザミネ。そしてその数分後に小さな但し書きの『ウソです』を見つけたようで、ちくしょおおおおお! と普段のカザミネらしくない声を上げていた。

「そういえば、ツヴァイ君とミリーさんがリアルでも直接会ってるって話は本当?」

 これはこーんぽたーじゅ。当然発言した当人は嘘のつもりで言ったのだろうが、急にツヴァイとミリーの動きがピシリと固まる。当然それを見逃すブルーカラーの面々ではない。

「あらら? 嘘から出た実になっちゃった? そうだったらごめんね」

 こーんぽたーじゅはそう言って謝るが、あの反応からすると『直接』は出会ってはいないかもしれないが、ゲームの外でもある程度のやり取りはあるのかもしれないな。たとえばメール……からさらに一歩踏み込んで電話とか。おやおや、エリザの視線が冷たくなってるな。

「それは面白そうなので、後で深く追求してみましょう。そういえばアースさんがメイド喫茶を作るようにダークエルフに働きかけていると言ううわさがありますね」

 おおっと、ここでカザミネから変な形でこっちに攻撃が飛んできましたな。話を聞いたクィーンが手を伸ばして自分の頬をつねろうとして来るので、手でガードする。

「そりゃガセネタだって。もしかしたら本当に働きかけている人はいるかもしれないけどさ、自分ではないよ」

 クィーンの放つ怒りのオーラが、自分の発言を受けて少し治まったような気がする。まあ、カザミネの冗談に近い嘘だったんだろうが、クィーンは本気にしたな。メイド姿のトイさんとライナさんに引っ張りまわされたのは事実なので、その事をどうにかして知った所から、今のネタを作ったんだろう。

「そういえば、カジノを妖精国に作るって話があったな! 出来てもエリザは絶対に行くなよ、はまるからな!」

 これはツヴァイ。これも当然嘘だな……エリザの賭け事にはまるという部分は本当だが。もうちょっとマシな嘘をつきなさいよとノーラは軽く笑うが、クィーンはなぜか笑わない。その後、クィーンはそっとつぶやいた。

「いえ、実はそういう予定があったりなかったりします……ね」

 え、そうなの!? と言った感じで、自分を除く全員が目を見張ってクィーンに注目するが、そこでクィーンはこう続けた。

「嘘に決まってるじゃないですか」

 一斉にずっこけるブルーカラーのメンバー。これはクィーンが上手だったか。だがエリザが「残念ですわ」と言い始めたので、ミリーとノーラが「「万が一カジノが出来上がっても、貴女だけは絶対行かせません(行かせないわ)」」と即座に断言していた。エリザは前科があるのに、まだ懲りてないのかねえ。

「そういえば、ツヴァイ君がギルドメンバーを入れるときに、年下っぽい子にはお兄ちゃんとかお兄様とか言わせてるって話を聞いたけど」

 これはロナ。まあ間違いなく嘘なんだろうが……なんだろうが……なんでしょう、ツヴァイならやりかねないと言う空気が漂っているのは。ツヴァイは「そんな事はしてないぞ!」と必死で弁解しているが、カザミネとレイジの2人から肩に手を置かれてうんうんと頷かれている。

 ロナちゃん、自分は気がついているぞ。笑いを堪えてるんだろ? 唇がプルプルしてるぞ。他の面子も本気にはしていないんだろうが、面白いから乗っかったんだろうな。

「くっそお! それは濡れ衣だ! それはそうとアース、お前は何かないのか!?」

 すでに冒頭でツヴァイが言っていた軽い嘘なんて状況ではなくなってしまっているのだが……さて、何を言おうかな。少し頭をひねるが、いまいち浮かんでこない。変にいろんなことを知っているぶん、嘘が実になってしまいそうで悩む。

「難しいなぁ、言おうとしていたネタは先に言われてしまったしなぁ、ツヴァイの勧誘ネタ」

 おおい、止めてくれよ!! とツヴァイがにじり寄ってくる。でも一番ネタにしやすいのはツヴァイなんだよな。結局この後これと言ったネタが全く浮かばず、飯を作る事で勘弁してもらった。
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難産でした、嘘って考えるの難しいですね。
最近全く出番がなかったクィーンを出してあげました。

この話も時期ネタなので、WEB限定の話になると思います。
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