12 / 89
新居
しおりを挟む
私はついに家を出た。
誕生日の日、生活費として10万円いただくことを了承してもらい、家賃を出せることになったからだ。
さすがに、月18万円の手取りで月6.5万円の家賃はキツい。贅沢しなければ生活できるとは思うが、女としての自分が見た目頑張れないのは今の心境としては悲しすぎる。
誕生日はビジネスホテルで過ごした。
昼のうちに予約していた。
あの部屋へは諭の返事を聞くためだけに行った。
思った通りだ。
「はぁー、結局私は『冨樫依子』か…」
ビリビリに破られた離婚届を見て、諭は何も変わらないのだと思った。
本当に、ただの紙切れ1枚扱いだ。
翌日と翌々日、私は有休を貰い、キープしていた部屋の契約をし、すぐに引越した。
既に下見も済ませていて、あとは諭の返事次第というとこだった。
ここもまた喫茶店の常連さんに助けられた。
元不動産会社の社長、北見さんの一声で、会社から近いのに割と安くて綺麗なマンションを見つけてもらえたのだ。
諭から逃げるように入った喫茶店で、私は随分助けられている。
今回、諭に条件を突きつけたのも、ここの人達からのアドバイスに基づくものだ。
何の試練か過酷な5年間の結婚生活で成された氷のような私の心を、融解してくれている。
ご先祖様は守ってくれていると、今なら素直に思える。
新居は1LDKの分譲賃貸で家主は今海外にいるという。街中でこの広さ、しかも作りは分譲マンション。破格だ。
家主は、リッチなイケメンサラリーマンだろうと勝手に想像している。
家具や家電は自由に使っていいし、壊れたら好きなものに変えていいと契約書にある。
だから、引越すと言っても、衣類や小物くらいだから、諭が勤務中の時間を見計らってスーツケースとリュックで3往復くらいで忽ち事足りる。
それでも引越しというのはやはり疲れた。
「ふぅ~~」
キリがいいところで、前の住人が使用していたベッドに寝転んだ。
いちいち高級で、スプリングがいい。
さすがにカバーは変えたが、元がいいので寝心地は素晴らしい。
今頃諭はどうしているだろうか。
どうせまた、女と肌を合わせているに違いない。
私がいなくなり、性のはけ口が減ったことで、新しい女を探しているだろうか。
もしくは、どこか旅行にでも行っているのだと楽観視して、のらりくらりと過ごしているのだろう。
早く籍を抜きたい。
指輪はとっくの昔にどこかに捨てた。
午後8時。
もう無理。心身共に限界だ。
明日から出勤する。
もう、寝よう。
午前1時。
目が覚めた。
こんな時間に目覚めるのは久しぶり。
やけに寒くて仕方がない。
手を伸ばしても、足を広げても、諭に触れない。
ここは、私のベッド。
諭と私のベッドじゃない。
諭と私の部屋じゃない。
私1人の部屋。
何時になっても諭は帰ってこない。
絶対に。
明日、会社の帰りに毛布をもう1枚買おう。
誕生日の日、生活費として10万円いただくことを了承してもらい、家賃を出せることになったからだ。
さすがに、月18万円の手取りで月6.5万円の家賃はキツい。贅沢しなければ生活できるとは思うが、女としての自分が見た目頑張れないのは今の心境としては悲しすぎる。
誕生日はビジネスホテルで過ごした。
昼のうちに予約していた。
あの部屋へは諭の返事を聞くためだけに行った。
思った通りだ。
「はぁー、結局私は『冨樫依子』か…」
ビリビリに破られた離婚届を見て、諭は何も変わらないのだと思った。
本当に、ただの紙切れ1枚扱いだ。
翌日と翌々日、私は有休を貰い、キープしていた部屋の契約をし、すぐに引越した。
既に下見も済ませていて、あとは諭の返事次第というとこだった。
ここもまた喫茶店の常連さんに助けられた。
元不動産会社の社長、北見さんの一声で、会社から近いのに割と安くて綺麗なマンションを見つけてもらえたのだ。
諭から逃げるように入った喫茶店で、私は随分助けられている。
今回、諭に条件を突きつけたのも、ここの人達からのアドバイスに基づくものだ。
何の試練か過酷な5年間の結婚生活で成された氷のような私の心を、融解してくれている。
ご先祖様は守ってくれていると、今なら素直に思える。
新居は1LDKの分譲賃貸で家主は今海外にいるという。街中でこの広さ、しかも作りは分譲マンション。破格だ。
家主は、リッチなイケメンサラリーマンだろうと勝手に想像している。
家具や家電は自由に使っていいし、壊れたら好きなものに変えていいと契約書にある。
だから、引越すと言っても、衣類や小物くらいだから、諭が勤務中の時間を見計らってスーツケースとリュックで3往復くらいで忽ち事足りる。
それでも引越しというのはやはり疲れた。
「ふぅ~~」
キリがいいところで、前の住人が使用していたベッドに寝転んだ。
いちいち高級で、スプリングがいい。
さすがにカバーは変えたが、元がいいので寝心地は素晴らしい。
今頃諭はどうしているだろうか。
どうせまた、女と肌を合わせているに違いない。
私がいなくなり、性のはけ口が減ったことで、新しい女を探しているだろうか。
もしくは、どこか旅行にでも行っているのだと楽観視して、のらりくらりと過ごしているのだろう。
早く籍を抜きたい。
指輪はとっくの昔にどこかに捨てた。
午後8時。
もう無理。心身共に限界だ。
明日から出勤する。
もう、寝よう。
午前1時。
目が覚めた。
こんな時間に目覚めるのは久しぶり。
やけに寒くて仕方がない。
手を伸ばしても、足を広げても、諭に触れない。
ここは、私のベッド。
諭と私のベッドじゃない。
諭と私の部屋じゃない。
私1人の部屋。
何時になっても諭は帰ってこない。
絶対に。
明日、会社の帰りに毛布をもう1枚買おう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,572
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる