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5巻
5-3
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「シュニーさんもお久しぶりです」
「はい、また大きくなりましたか?」
「いえ、背があんまり伸びないんですよ。シュニーさんが羨ましいです」
そう言うカエデの視線はシュニーの胸元にいっている。同性でもやはり気になるのだろう。カエデの胸の大きさが標準以下だからではないはずだ。
「まだ成長期なのですから、これからですよ」
「だといいんですけど」
そんなやり取りの後、カエデも交えて食事となった。
「そういえば、名字はクロサワなんですね」
「キャラネームだけじゃ味気ないじゃない」
「ミトミでもよかったんだが」
「却下」
シャドゥの言葉を瞬時に却下するホーリー。
クロサワとはシャドゥの、ミトミとはホーリーの現実世界での名字だ。本名を名乗ってもいいのだが、この世界では【分析】でキャラ名が出てしまうので、口頭で名乗るときだけクロサワをつけているらしい。
食事が終わるとカエデは自分の部屋へ行き、シンたちも『氾濫』に向けて準備を始めることにした。
武器のバージョンアップは夜にする予定なので、それ以外でのことになる。
「とりあえず、『黄金商会』に行ってみようと思う。シュニーは領主とギルマスに、自分が参戦することを伝えてきてくれ。シュニーがいるってわかれば、兵士の士気も上がるだろうし、住民は安心するはずだ」
「わかりました。その後はどうしますか?」
「俺は冒険者がどういう風に動くべきなのか、ギルドで聞いてくる。ついでに過去の資料とかもあれば、見てこようと思う」
『氾濫』で冒険者がどのような役割を担うのか、シンにはわからない。いざという時の予備兵力や遊撃だろうか。軍のように組織立った動きは期待できないので、そう的外れでもないはずだ。選定者は違う可能性もあるが知っておいて損はない。
「ひびねこさんたちはどうするんですか?」
「吾輩たちは物資をカード化する仕事がある。使う機会が来てほしくはないが」
シャドゥが補足する。
「物資といっても城壁の上から落とす岩や油だからな」
「ああ、なるほど」
城壁の上から何かを落として攻撃する時点で、平原での戦いに負けたり、劣勢で城内に退却したりしているパターンが多い。使う機会があっては困るだろう。とはいえ、何も対策をしないわけにもいかないので、準備はしっかりするようだ。
ただ、すでにストックがかなりあるので、それほど時間はかからないらしい。
「今まで、それを使うところまで攻められたことがあるんですか?」
「過去に1度、ぎりぎりの戦いがあったと聞いている。群れの数が多すぎて対応しきれなかったという話だ」
「今回みたいなパターンですか」
「そうなる。まあ、今回は追い込まれることはないだろうがな」
苦笑するひびねこに周りも同調する。シン、ひびねこたち元プレイヤー、シュニー、さらにグルファジオのような神獣までいるのだ。負けようがない。
「そういえば、次の集合時間とか決めておいた方がいいですか?」
「いや、あとは各自で行動して問題ないだろう。ギルドから特別な呼び出しがあるときは、ギルドカードが魔力を発する。その時はギルドに行けばいい」
ひびねこが言っているのは、緊急事態を知らせるコール機能のことだ。
「緊急の用件があるときはメッセージカードを使う。持っているだろう?」
「はい、大丈夫です」
やはりプレイヤーであるシャドゥたちは、シンと同じくメッセージカードの有用性に気づいていたようだ。
「ティエラはどうする?」
「私も何かできることがあればするつもり。あとは武器の手入れくらいかしら」
「宿を取るの、頼んでいいか?」
「私が一番手が空きそうだし、かまわないわ」
やることを確認すると、各自行動を開始した。
シンはひびねこに黄金商会の支店がある場所を聞き、寄り道せずにそこへ向かう。
聞いた通りの道を進んでいると、やけにキラキラした看板が目についた。
「なんというわかりやすさ」
全体が黒く塗られ金の縁取りがなされた看板には、これまた金色で『黄金商会』と書かれている。文字の部分がやたらと輝いているので、目立つことこの上ない。むしろ眩しい。
シンの頭上にいるユズハもこれには参ったようで、目を閉じて看板を見ないようにしている。
(目がちかちかする~)
(俺もずっと見てると、目が痛くなるんだよな――ん?)
店舗の横で、商品の入った箱を慌ただしく馬車に積んでいるのが見えた。
おそらく冒険者ギルドから連絡を受けて、物資を搬送する準備をしているのだろう。
シンが気になったのは、馬車の横で指示を出している人物だ。
金色の刺繍が施されたローブを羽織っている商人、シンには見覚えがあった。
「――とルインはこれらを港へ、向こうへ着いたらあとは指示通りに。頼みましたよ」
シンが近づくとちょうど指示を出し終わったらしく、タイミングよくこちらに振り向いた。
すでにシンの視界には【分析】によってもたらされた情報が表示されている。
名前はベレット・キルマール。レベルは255。
ぽっちゃり気味の体型と愛嬌のある笑顔に、商人でなければグルメリポーターが似合いそうな印象を受ける。見た目ではわかりにくいが、種族はハイエルフだとシンは知っていた。
メイン職業は商人だが、実はサブ職が暗黒騎士だったりする少々常道から外れたキャラクターである。
「すいません、ちょっと伺いたいことがあるんですけど」
「はい、どのようっ!! ……これはこれは、お久しゅうございます」
声をかけたシンに答えようとして、一瞬動きが止まるベレット。しかし、そこは黄金商会の副支配人。即座に表情を笑顔に変えて、シンに一礼した。
「再びお会いできる日を、心待ちにしておりました。ささ、こんなところではゆっくりと話もできません。こちらへどうぞ。お連れ様もご一緒に」
「あ、ああ、わかりました」
「くぅ!」
この世界では初対面ということもあって馴れ馴れしい言葉は避けたシンだったが、ベレットはへりくだった態度を崩さず自らシンを応接室へと案内した。
部屋の中は表の看板のように派手なものはなく、調和のある配置がなされている。
2人が部屋に入ると、ほとんど間をおかずにドアがノックされた。
「失礼します。お飲物をお持ちしました」
「入れ」
ベレットの声を受けて、従業員っぽい服を来た女性が入室する。
【分析】によると名はピュリ。細い耳からして、エルフかハイエルフだろう。
ピュリはワゴンに載ったお茶とお菓子をテーブルに置くと、静かに退室した。
「六天の皆さまから見れば、粗茶でありましょうが」
「いえ、そんなことはないですよ」
そう言ってシンはカップを傾ける。赤みがかった液体を口に含むと、ほのかな甘さと渋みが口内に広がった。
「うまいですね」
「このあたりでは最高の茶葉を使用しております。お気に召していただけたようで、何よりでございます。それよりもシン様。わたくしごときにそのような口調は不要です。他の者に示しがつきません」
「……まあ、そっちの方が楽だけど」
「では、そのようにお願いいたします。六天の方々に気遣われては、わたくしも含め、皆恐縮してしまいますゆえ」
ベレットは主と従者という立ち位置を徹底しているようだ。シンとレードの違いだろうか。
「それで、本日はどのようなご用件で?」
「ああ、俺以外の六天のサポートキャラの現状を教えてほしいんだ。シュニーからは時雨屋のことと、ビジー、ラスターについて聞いた」
「承知しました。しかし、そうですね。わたくしも今挙がった以外には把握できていないのです。オキシジェンとハイドロは『ガーデン』にいるはずですが、現在は危険地帯扱いです。確認しようにも我々では近づけません。『スタジオ』『シップ』『ベース』は行方不明。現状では『シュライン』と『キャッスル』の存在が確認できていますが、確保できているのは『キャッスル』のみです」
ギルドハウスはそれなりに大きい。それが見つからないとなると、地中に埋まっていたり、海の底に沈んでいたりするのかもしれない。
「そうか。『スタジオ』は俺が探しておく。『ガーデン』が危険というのはどういうことなんだ?」
「『ガーデン』の周りに有害のガスが発生しているのです。状態異常は軒並みⅦ以上。中心部は最大のⅩになると予想されています。戦闘力、抵抗力から考えれば、シュニーたちならば突破できるかもしれませんが、それでも長居はできません。それこそ、シン様のようなハイヒューマンクラスの抵抗力でもあれば別ですが……」
周囲に発生しているというガスは、かなり強力な効果を持っているようだ。ベレットの話が本当なら、確かにシンでなければ突破できないだろう。
「内部には食糧生産施設もありますから、少なくとも餓死していることはないと思われますが……あまりお力になれず、申し訳ありません」
「いや、『ガーデン』のことが聞けただけでも十分だ」
『ガーデン』はもともと対ギルド戦用として、周囲にトラップが仕掛けられていた。もしかすると、それが誤作動しているのかもしれない。内部は気密性が高いので、ガスでやられているということもないはずだ。
『ガーデン』の詳しい場所を聞いてメモを取っておく。
「いろいろ聞けて助かった。また何かわかったことがあったら、メッセージカードを飛ばしてくれ」
「承知しました。手配しておきます」
「頼むな。そういえば、ここにはよく来るのか? いきなり会えるとは思ってなかったんだが」
「ちょうどバルメルに出向く用がありまして。先ほどは『氾濫』が起こったと商人ギルドから連絡が来たので、対応すべく指示を出していたのです」
この時期は貴重な魚が獲れるので、いつも直々にやって来るらしい。本店で書類と格闘してばかりいると、商人としての勘が鈍るのだとか。
「それとついでではありますが、シュニーに頼まれていたものもありましたので」
「頼まれたもの?」
「はい、これはシン様にも報告しておくべきでしょうな」
そう言うと、ベレットはテーブルの端に置かれていたベルを鳴らす。すると、1分と経たないうちにドアがノックされた。
「失礼いたします。何かご用でしょうか?」
入ってきたのは、お茶を出してくれたピュリだった。
「アレを持ってきてくれ」
「承知しました」
ベレットの言葉に即答して、ピュリは部屋を出ていく。具体的に何を、とは言っていないのだが、打てば響くような2人のやり取りを見る限り、心配は必要なさそうだ。
数分後、再びドアがノックされピュリが入室してくる。その手には小さな封筒が握られていた。
「ありがとう、下がっていいぞ」
ピュリを退出させると、ベレットは封筒を開いて中身を取り出し、シンに差し出してきた。
「これは、こちらの世界にやってきたプレイヤーの方々をリストアップしたものになります」
「なに?」
プレイヤーと聞いてシンの表情が変わる。
ベレットから受け取ったリストを、上から下にゆっくりと読んでいく。
「……これで全部なのか?」
リストを読み終わったシンが、少し困惑した顔でベレットに問いかけた。
「そのご質問はごもっとも。正直に言わせていただくと、わたくしどもも困惑しているのです。プレイヤーの方々がデスゲームと呼んでいたあの事件での死亡者は、100や200ではすみません。だというのに、こちらに来ているプレイヤーは本当に極一部のみのようなのです。もちろん、リストに挙がっているのがすべてではありませんが」
用紙に書いてある名前は、どれもが見覚えのあるものだった。元プレイヤーがいるというだけでも驚きだというのに、この狙ったかのようなリストはなんだというのか。
(こっちに来てるのは、ゲーム時代に俺と関わり合いになったやつらってことなのか?)
すべてではないとベレットは言うが、さすがのシンも動揺を隠せない。
「それと、こちらもご確認ください」
厳しい表情を浮かべるシンに、ベレットはもう一枚の用紙を差し出す。記されている名前は1枚目より少なく、いくつかの名前には横線が引かれていた。
「これは?」
「今判明している、プレイヤーの方々がPKと呼んでいた者のリストです」
「PKだと!?」
驚きながらシンはリストに目を通す。そこにはハーメルンを筆頭に、シンの知る名前がいくつかならんでいた。
(シン、ぴーけーって、なに?)
(……人を殺して、楽しんでるやつらのことだ)
ユズハの疑問にシンは短く返す。その言葉はどこか固い。念話でも声音は変化するらしい。
雰囲気を察したのか、ユズハは小さく「くぅ……」と鳴いて静かになった。
「これも独自に調べていたのか」
「はい。実は最初にプレイヤーが見つかった際に、真っ先にPKを探すべきだと主張したのはシュニーなのです」
「シュニーが?」
疑問を投げつつも、シンはベレットの言葉にどこか納得していた。
タイミングがなかったとシュニーは言っていたが、いくらなんでもプレイヤーやPKといった重要な話をいつまでも伝えずにいるほど無能ではない。言うタイミングなど、いくらでもあったはずなのだ。
やはり、何かあったのだろう。
「そのご様子では、シュニーはこのことをシン様にお伝えしていなかったようですな」
「ああ、死んだプレイヤーが生きてるってのも偶然知ったんだ」
するとベレットは笑顔を消した。
「……同じ六天配下として言わせていただくなら、それは明らかな背信行為。自らの主に重要な情報を意図的に伝えずにいるなど、あってはならぬこと。いくらシン様の配下といえども、罰せぬわけにはまいりますまい」
厳然とした口調でベレットは言う。
困るのはシンだ。シュニーが何か隠していることは察していたが、他の六天の配下がどう思うかまでは考えていなかった。
「シン様はどうお考えで?」
「……何の理由もなくシュニーがそんなことをするとは思えなくてな」
なにせ、いつばれてもおかしくないのだ。ハーメルンのような指名手配犯にいたってはギルドに似顔絵があってもおかしくない。シュニーが伝えずとも、遠からずシンの知ることとなっていただろう。
シンが思っていたことを口にすると、ベレットはシュニーを罰すべきと言っていた時とは打って変わって、神妙な表情となった。
「確かに、シュニーの性格からすれば情報を隠蔽し、シン様に害をなそうなどとは考えもしないでしょう」
そこは異論がないらしい。
「……なあ、ベレット。お前何か知ってるだろ?」
ベレットの態度に違和感を覚えたシンは、単刀直入に問う。問われたベレットはさして表情を変えることもなく、うなずいた。
「はい、存じております」
「事情を知ったうえで、罰しろと?」
「六天配下としてならば、それが妥当だと考えます」
「じゃあ、お前個人としては?」
「理解できなくもありません」
立ち位置しだいということらしい。少なくとも、まったく共感できない理由ではないようだ。
「わたくしもシュニーと同じ立場にあったなら、同じことをしなかったとは断言できませんので」
「配下として失格、なんて仲間に言われてもか」
「むしろ直属の配下ゆえ、でしょうな。シン様、手元にあるリスト、とくに名前に線の引かれた人物に覚えはありませんかな?」
シンは再度、線の引かれた名前を見る。
影丸。
ジェイ・ソーン。
てふろん。
その他の名前にも、シンは見覚えがあった。
「かつて、シン様が一時『死神』と呼ばれていたことを覚えておいででしょうか?」
「そんなふうに呼ばれていたと知ったのは、だいぶ後だけどな……ああ、そうか。こいつらは」
当時のことを思い出して、シンは気づく。
「俺が、斬ったやつらか?」
うろ覚えだったが、その誰もがシンと敵対したPK、もしくはPKギルドの構成員だった。
「失礼を承知で言わせていただくと、当時のシン様のご様子は、普段とはまったく別物でございました」
当時のシンは、現在のような自我があったなら、サポートキャラでも即座に逃げ出したくなるほどの、物騒な雰囲気をまとっていたらしい。
「シュニーはシン様がそうなってしまった原因を知っております。加えて、もっとも近くにいながら何もできなかったと、今も悔やんでいるのです」
「それは……」
仕方がない。
そう言ってしまえばそれまでだが、当人からすれば到底納得できるものではないのだろう。
「シュニーは、かの者たちとシン様が出会うことで、シン様がかつての、別人のようだったあの頃に戻ってしまうことを恐れているのです。ゆえに、シン様には伝えず己のみで処理しようとしたのでしょう」
ベレットは飲み物に口をつけ、一拍置いた。
「……わたくしの目から見ても、シュニーのシン様への想いは忠誠の一言で済ませられるものではありませんでした。変わってしまわれた姿を知っているだけに、原因となった者たちを放っておくことなどできなかったのでしょう。そして、それをシン様に伝えることも」
「あの時の俺か……まあ、自分で言うのも何だが、物騒どころの話じゃないしな」
シュニーがシンを関わらせようとしなかったのも、理由を聞けば理解はできる。
当時のシンはゲームクリアよりもPKを倒すことを――否、殺すことを目的に行動していた。
倫理だの、禁忌だの、そんな考えは欠片もなく、躊躇も容赦もなく斬って捨てた。
「プレイヤーにも、当時のシン様と行動を共にしていた方がいましたので」
そう、PKK(プレイヤーキラー・キラー)――PKを殺すPKの1人であったシンだが、何もすべてを1人でやっていたわけではない。
バルメルで再会したシャドゥもまた、シンに協力していた者の1人なのだ。
復讐したくても力が足りない者、力があっても情報が足りない者。そういったPKに恨みを持つ者は、血眼になってPK殺しに協力していた。
ゲーム内には犯罪者を捕まえる警察も、裁く法も、システムもない。だからこそ、一部の被害者たちは苛烈なまでの報復行動に出た。
止めようとする者の声は、届かなかった。
「なるほど、な」
そういう理由があれば、プレイヤーのこともPKのことも積極的に話そうとは思わないだろう。少なくとも、シンにはシュニーを罰する気にはなれなかった。
「本来ならシュニーが直接言わねばならないことでしょうが、ことがことですのでお伝えさせていただきました」
「お前さ、ついでとか言っといて、実は最初からこれを言うつもりだったろ」
「おや、なんのことでしょう」
ニコニコ笑顔でとぼけるベレット。だが、見知っているはずの笑顔が今はどこか胡散臭い。
「そんな話を聞いた俺なら、シュニーをどうこうしようとは思わないってわかってるな」
「シン様が配下を大切にされるのは有名でしたからな。なかでもシュニーは最古参でありますれば」
「くっ、その笑顔がなんかムカついてきた」
ベレットが相変わらず浮かべているのは親近感が湧くはずの笑顔なのだが、わかってますよとでも言いたそうな様子に、若干イラッとしたシンだった。
「それだけシン様が愛されている証拠でございましょう」
「言ってろ」
シンはぶっきら棒に返す。
「それはそうと、今回の『氾濫』にシン様は関与されるので?」
「ん? ああ、介入するつもりだが」
唐突に話題を変えたベレットは、そこで少し考えるような仕草をした。
「はい、また大きくなりましたか?」
「いえ、背があんまり伸びないんですよ。シュニーさんが羨ましいです」
そう言うカエデの視線はシュニーの胸元にいっている。同性でもやはり気になるのだろう。カエデの胸の大きさが標準以下だからではないはずだ。
「まだ成長期なのですから、これからですよ」
「だといいんですけど」
そんなやり取りの後、カエデも交えて食事となった。
「そういえば、名字はクロサワなんですね」
「キャラネームだけじゃ味気ないじゃない」
「ミトミでもよかったんだが」
「却下」
シャドゥの言葉を瞬時に却下するホーリー。
クロサワとはシャドゥの、ミトミとはホーリーの現実世界での名字だ。本名を名乗ってもいいのだが、この世界では【分析】でキャラ名が出てしまうので、口頭で名乗るときだけクロサワをつけているらしい。
食事が終わるとカエデは自分の部屋へ行き、シンたちも『氾濫』に向けて準備を始めることにした。
武器のバージョンアップは夜にする予定なので、それ以外でのことになる。
「とりあえず、『黄金商会』に行ってみようと思う。シュニーは領主とギルマスに、自分が参戦することを伝えてきてくれ。シュニーがいるってわかれば、兵士の士気も上がるだろうし、住民は安心するはずだ」
「わかりました。その後はどうしますか?」
「俺は冒険者がどういう風に動くべきなのか、ギルドで聞いてくる。ついでに過去の資料とかもあれば、見てこようと思う」
『氾濫』で冒険者がどのような役割を担うのか、シンにはわからない。いざという時の予備兵力や遊撃だろうか。軍のように組織立った動きは期待できないので、そう的外れでもないはずだ。選定者は違う可能性もあるが知っておいて損はない。
「ひびねこさんたちはどうするんですか?」
「吾輩たちは物資をカード化する仕事がある。使う機会が来てほしくはないが」
シャドゥが補足する。
「物資といっても城壁の上から落とす岩や油だからな」
「ああ、なるほど」
城壁の上から何かを落として攻撃する時点で、平原での戦いに負けたり、劣勢で城内に退却したりしているパターンが多い。使う機会があっては困るだろう。とはいえ、何も対策をしないわけにもいかないので、準備はしっかりするようだ。
ただ、すでにストックがかなりあるので、それほど時間はかからないらしい。
「今まで、それを使うところまで攻められたことがあるんですか?」
「過去に1度、ぎりぎりの戦いがあったと聞いている。群れの数が多すぎて対応しきれなかったという話だ」
「今回みたいなパターンですか」
「そうなる。まあ、今回は追い込まれることはないだろうがな」
苦笑するひびねこに周りも同調する。シン、ひびねこたち元プレイヤー、シュニー、さらにグルファジオのような神獣までいるのだ。負けようがない。
「そういえば、次の集合時間とか決めておいた方がいいですか?」
「いや、あとは各自で行動して問題ないだろう。ギルドから特別な呼び出しがあるときは、ギルドカードが魔力を発する。その時はギルドに行けばいい」
ひびねこが言っているのは、緊急事態を知らせるコール機能のことだ。
「緊急の用件があるときはメッセージカードを使う。持っているだろう?」
「はい、大丈夫です」
やはりプレイヤーであるシャドゥたちは、シンと同じくメッセージカードの有用性に気づいていたようだ。
「ティエラはどうする?」
「私も何かできることがあればするつもり。あとは武器の手入れくらいかしら」
「宿を取るの、頼んでいいか?」
「私が一番手が空きそうだし、かまわないわ」
やることを確認すると、各自行動を開始した。
シンはひびねこに黄金商会の支店がある場所を聞き、寄り道せずにそこへ向かう。
聞いた通りの道を進んでいると、やけにキラキラした看板が目についた。
「なんというわかりやすさ」
全体が黒く塗られ金の縁取りがなされた看板には、これまた金色で『黄金商会』と書かれている。文字の部分がやたらと輝いているので、目立つことこの上ない。むしろ眩しい。
シンの頭上にいるユズハもこれには参ったようで、目を閉じて看板を見ないようにしている。
(目がちかちかする~)
(俺もずっと見てると、目が痛くなるんだよな――ん?)
店舗の横で、商品の入った箱を慌ただしく馬車に積んでいるのが見えた。
おそらく冒険者ギルドから連絡を受けて、物資を搬送する準備をしているのだろう。
シンが気になったのは、馬車の横で指示を出している人物だ。
金色の刺繍が施されたローブを羽織っている商人、シンには見覚えがあった。
「――とルインはこれらを港へ、向こうへ着いたらあとは指示通りに。頼みましたよ」
シンが近づくとちょうど指示を出し終わったらしく、タイミングよくこちらに振り向いた。
すでにシンの視界には【分析】によってもたらされた情報が表示されている。
名前はベレット・キルマール。レベルは255。
ぽっちゃり気味の体型と愛嬌のある笑顔に、商人でなければグルメリポーターが似合いそうな印象を受ける。見た目ではわかりにくいが、種族はハイエルフだとシンは知っていた。
メイン職業は商人だが、実はサブ職が暗黒騎士だったりする少々常道から外れたキャラクターである。
「すいません、ちょっと伺いたいことがあるんですけど」
「はい、どのようっ!! ……これはこれは、お久しゅうございます」
声をかけたシンに答えようとして、一瞬動きが止まるベレット。しかし、そこは黄金商会の副支配人。即座に表情を笑顔に変えて、シンに一礼した。
「再びお会いできる日を、心待ちにしておりました。ささ、こんなところではゆっくりと話もできません。こちらへどうぞ。お連れ様もご一緒に」
「あ、ああ、わかりました」
「くぅ!」
この世界では初対面ということもあって馴れ馴れしい言葉は避けたシンだったが、ベレットはへりくだった態度を崩さず自らシンを応接室へと案内した。
部屋の中は表の看板のように派手なものはなく、調和のある配置がなされている。
2人が部屋に入ると、ほとんど間をおかずにドアがノックされた。
「失礼します。お飲物をお持ちしました」
「入れ」
ベレットの声を受けて、従業員っぽい服を来た女性が入室する。
【分析】によると名はピュリ。細い耳からして、エルフかハイエルフだろう。
ピュリはワゴンに載ったお茶とお菓子をテーブルに置くと、静かに退室した。
「六天の皆さまから見れば、粗茶でありましょうが」
「いえ、そんなことはないですよ」
そう言ってシンはカップを傾ける。赤みがかった液体を口に含むと、ほのかな甘さと渋みが口内に広がった。
「うまいですね」
「このあたりでは最高の茶葉を使用しております。お気に召していただけたようで、何よりでございます。それよりもシン様。わたくしごときにそのような口調は不要です。他の者に示しがつきません」
「……まあ、そっちの方が楽だけど」
「では、そのようにお願いいたします。六天の方々に気遣われては、わたくしも含め、皆恐縮してしまいますゆえ」
ベレットは主と従者という立ち位置を徹底しているようだ。シンとレードの違いだろうか。
「それで、本日はどのようなご用件で?」
「ああ、俺以外の六天のサポートキャラの現状を教えてほしいんだ。シュニーからは時雨屋のことと、ビジー、ラスターについて聞いた」
「承知しました。しかし、そうですね。わたくしも今挙がった以外には把握できていないのです。オキシジェンとハイドロは『ガーデン』にいるはずですが、現在は危険地帯扱いです。確認しようにも我々では近づけません。『スタジオ』『シップ』『ベース』は行方不明。現状では『シュライン』と『キャッスル』の存在が確認できていますが、確保できているのは『キャッスル』のみです」
ギルドハウスはそれなりに大きい。それが見つからないとなると、地中に埋まっていたり、海の底に沈んでいたりするのかもしれない。
「そうか。『スタジオ』は俺が探しておく。『ガーデン』が危険というのはどういうことなんだ?」
「『ガーデン』の周りに有害のガスが発生しているのです。状態異常は軒並みⅦ以上。中心部は最大のⅩになると予想されています。戦闘力、抵抗力から考えれば、シュニーたちならば突破できるかもしれませんが、それでも長居はできません。それこそ、シン様のようなハイヒューマンクラスの抵抗力でもあれば別ですが……」
周囲に発生しているというガスは、かなり強力な効果を持っているようだ。ベレットの話が本当なら、確かにシンでなければ突破できないだろう。
「内部には食糧生産施設もありますから、少なくとも餓死していることはないと思われますが……あまりお力になれず、申し訳ありません」
「いや、『ガーデン』のことが聞けただけでも十分だ」
『ガーデン』はもともと対ギルド戦用として、周囲にトラップが仕掛けられていた。もしかすると、それが誤作動しているのかもしれない。内部は気密性が高いので、ガスでやられているということもないはずだ。
『ガーデン』の詳しい場所を聞いてメモを取っておく。
「いろいろ聞けて助かった。また何かわかったことがあったら、メッセージカードを飛ばしてくれ」
「承知しました。手配しておきます」
「頼むな。そういえば、ここにはよく来るのか? いきなり会えるとは思ってなかったんだが」
「ちょうどバルメルに出向く用がありまして。先ほどは『氾濫』が起こったと商人ギルドから連絡が来たので、対応すべく指示を出していたのです」
この時期は貴重な魚が獲れるので、いつも直々にやって来るらしい。本店で書類と格闘してばかりいると、商人としての勘が鈍るのだとか。
「それとついでではありますが、シュニーに頼まれていたものもありましたので」
「頼まれたもの?」
「はい、これはシン様にも報告しておくべきでしょうな」
そう言うと、ベレットはテーブルの端に置かれていたベルを鳴らす。すると、1分と経たないうちにドアがノックされた。
「失礼いたします。何かご用でしょうか?」
入ってきたのは、お茶を出してくれたピュリだった。
「アレを持ってきてくれ」
「承知しました」
ベレットの言葉に即答して、ピュリは部屋を出ていく。具体的に何を、とは言っていないのだが、打てば響くような2人のやり取りを見る限り、心配は必要なさそうだ。
数分後、再びドアがノックされピュリが入室してくる。その手には小さな封筒が握られていた。
「ありがとう、下がっていいぞ」
ピュリを退出させると、ベレットは封筒を開いて中身を取り出し、シンに差し出してきた。
「これは、こちらの世界にやってきたプレイヤーの方々をリストアップしたものになります」
「なに?」
プレイヤーと聞いてシンの表情が変わる。
ベレットから受け取ったリストを、上から下にゆっくりと読んでいく。
「……これで全部なのか?」
リストを読み終わったシンが、少し困惑した顔でベレットに問いかけた。
「そのご質問はごもっとも。正直に言わせていただくと、わたくしどもも困惑しているのです。プレイヤーの方々がデスゲームと呼んでいたあの事件での死亡者は、100や200ではすみません。だというのに、こちらに来ているプレイヤーは本当に極一部のみのようなのです。もちろん、リストに挙がっているのがすべてではありませんが」
用紙に書いてある名前は、どれもが見覚えのあるものだった。元プレイヤーがいるというだけでも驚きだというのに、この狙ったかのようなリストはなんだというのか。
(こっちに来てるのは、ゲーム時代に俺と関わり合いになったやつらってことなのか?)
すべてではないとベレットは言うが、さすがのシンも動揺を隠せない。
「それと、こちらもご確認ください」
厳しい表情を浮かべるシンに、ベレットはもう一枚の用紙を差し出す。記されている名前は1枚目より少なく、いくつかの名前には横線が引かれていた。
「これは?」
「今判明している、プレイヤーの方々がPKと呼んでいた者のリストです」
「PKだと!?」
驚きながらシンはリストに目を通す。そこにはハーメルンを筆頭に、シンの知る名前がいくつかならんでいた。
(シン、ぴーけーって、なに?)
(……人を殺して、楽しんでるやつらのことだ)
ユズハの疑問にシンは短く返す。その言葉はどこか固い。念話でも声音は変化するらしい。
雰囲気を察したのか、ユズハは小さく「くぅ……」と鳴いて静かになった。
「これも独自に調べていたのか」
「はい。実は最初にプレイヤーが見つかった際に、真っ先にPKを探すべきだと主張したのはシュニーなのです」
「シュニーが?」
疑問を投げつつも、シンはベレットの言葉にどこか納得していた。
タイミングがなかったとシュニーは言っていたが、いくらなんでもプレイヤーやPKといった重要な話をいつまでも伝えずにいるほど無能ではない。言うタイミングなど、いくらでもあったはずなのだ。
やはり、何かあったのだろう。
「そのご様子では、シュニーはこのことをシン様にお伝えしていなかったようですな」
「ああ、死んだプレイヤーが生きてるってのも偶然知ったんだ」
するとベレットは笑顔を消した。
「……同じ六天配下として言わせていただくなら、それは明らかな背信行為。自らの主に重要な情報を意図的に伝えずにいるなど、あってはならぬこと。いくらシン様の配下といえども、罰せぬわけにはまいりますまい」
厳然とした口調でベレットは言う。
困るのはシンだ。シュニーが何か隠していることは察していたが、他の六天の配下がどう思うかまでは考えていなかった。
「シン様はどうお考えで?」
「……何の理由もなくシュニーがそんなことをするとは思えなくてな」
なにせ、いつばれてもおかしくないのだ。ハーメルンのような指名手配犯にいたってはギルドに似顔絵があってもおかしくない。シュニーが伝えずとも、遠からずシンの知ることとなっていただろう。
シンが思っていたことを口にすると、ベレットはシュニーを罰すべきと言っていた時とは打って変わって、神妙な表情となった。
「確かに、シュニーの性格からすれば情報を隠蔽し、シン様に害をなそうなどとは考えもしないでしょう」
そこは異論がないらしい。
「……なあ、ベレット。お前何か知ってるだろ?」
ベレットの態度に違和感を覚えたシンは、単刀直入に問う。問われたベレットはさして表情を変えることもなく、うなずいた。
「はい、存じております」
「事情を知ったうえで、罰しろと?」
「六天配下としてならば、それが妥当だと考えます」
「じゃあ、お前個人としては?」
「理解できなくもありません」
立ち位置しだいということらしい。少なくとも、まったく共感できない理由ではないようだ。
「わたくしもシュニーと同じ立場にあったなら、同じことをしなかったとは断言できませんので」
「配下として失格、なんて仲間に言われてもか」
「むしろ直属の配下ゆえ、でしょうな。シン様、手元にあるリスト、とくに名前に線の引かれた人物に覚えはありませんかな?」
シンは再度、線の引かれた名前を見る。
影丸。
ジェイ・ソーン。
てふろん。
その他の名前にも、シンは見覚えがあった。
「かつて、シン様が一時『死神』と呼ばれていたことを覚えておいででしょうか?」
「そんなふうに呼ばれていたと知ったのは、だいぶ後だけどな……ああ、そうか。こいつらは」
当時のことを思い出して、シンは気づく。
「俺が、斬ったやつらか?」
うろ覚えだったが、その誰もがシンと敵対したPK、もしくはPKギルドの構成員だった。
「失礼を承知で言わせていただくと、当時のシン様のご様子は、普段とはまったく別物でございました」
当時のシンは、現在のような自我があったなら、サポートキャラでも即座に逃げ出したくなるほどの、物騒な雰囲気をまとっていたらしい。
「シュニーはシン様がそうなってしまった原因を知っております。加えて、もっとも近くにいながら何もできなかったと、今も悔やんでいるのです」
「それは……」
仕方がない。
そう言ってしまえばそれまでだが、当人からすれば到底納得できるものではないのだろう。
「シュニーは、かの者たちとシン様が出会うことで、シン様がかつての、別人のようだったあの頃に戻ってしまうことを恐れているのです。ゆえに、シン様には伝えず己のみで処理しようとしたのでしょう」
ベレットは飲み物に口をつけ、一拍置いた。
「……わたくしの目から見ても、シュニーのシン様への想いは忠誠の一言で済ませられるものではありませんでした。変わってしまわれた姿を知っているだけに、原因となった者たちを放っておくことなどできなかったのでしょう。そして、それをシン様に伝えることも」
「あの時の俺か……まあ、自分で言うのも何だが、物騒どころの話じゃないしな」
シュニーがシンを関わらせようとしなかったのも、理由を聞けば理解はできる。
当時のシンはゲームクリアよりもPKを倒すことを――否、殺すことを目的に行動していた。
倫理だの、禁忌だの、そんな考えは欠片もなく、躊躇も容赦もなく斬って捨てた。
「プレイヤーにも、当時のシン様と行動を共にしていた方がいましたので」
そう、PKK(プレイヤーキラー・キラー)――PKを殺すPKの1人であったシンだが、何もすべてを1人でやっていたわけではない。
バルメルで再会したシャドゥもまた、シンに協力していた者の1人なのだ。
復讐したくても力が足りない者、力があっても情報が足りない者。そういったPKに恨みを持つ者は、血眼になってPK殺しに協力していた。
ゲーム内には犯罪者を捕まえる警察も、裁く法も、システムもない。だからこそ、一部の被害者たちは苛烈なまでの報復行動に出た。
止めようとする者の声は、届かなかった。
「なるほど、な」
そういう理由があれば、プレイヤーのこともPKのことも積極的に話そうとは思わないだろう。少なくとも、シンにはシュニーを罰する気にはなれなかった。
「本来ならシュニーが直接言わねばならないことでしょうが、ことがことですのでお伝えさせていただきました」
「お前さ、ついでとか言っといて、実は最初からこれを言うつもりだったろ」
「おや、なんのことでしょう」
ニコニコ笑顔でとぼけるベレット。だが、見知っているはずの笑顔が今はどこか胡散臭い。
「そんな話を聞いた俺なら、シュニーをどうこうしようとは思わないってわかってるな」
「シン様が配下を大切にされるのは有名でしたからな。なかでもシュニーは最古参でありますれば」
「くっ、その笑顔がなんかムカついてきた」
ベレットが相変わらず浮かべているのは親近感が湧くはずの笑顔なのだが、わかってますよとでも言いたそうな様子に、若干イラッとしたシンだった。
「それだけシン様が愛されている証拠でございましょう」
「言ってろ」
シンはぶっきら棒に返す。
「それはそうと、今回の『氾濫』にシン様は関与されるので?」
「ん? ああ、介入するつもりだが」
唐突に話題を変えたベレットは、そこで少し考えるような仕草をした。
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