種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

二人目の大将軍

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「火炎剣!!」


ゴウッ!!


リノンが即座に動き出し、刀身に炎を纏わせて剣を構える。以前よりも炎の形が変化しており、前の時は不規則に炎は揺れ動いていたが、今は刀身の部分が赤く変化しており、火炎というよりは高熱を帯びた刃に変化している。

傍から見ればSF映画などでよく見たことがある「レーザーサーベル」と酷似しており、リノンも相当に腕を上げていた。


「がぁあああっ!!」
「うおおっ!!」


2人の腐り果てた鎧武者が襲い掛かり、リノンが片方に剣を振るい、もう一方はポチ子が前に出ると、


「犬牙流……乱突!!」


双剣を抜き放ち、まるでレイピアのように両手で突きを放つ。普段はわんわんと鳴き声を挙げている彼女とは思えぬ素早い動きであり、しかも両手で扱うなど相当な鍛錬を積んだのだろう。


ガキィンッ!!


「ぐおっ……!?」
「うぐぐっ!?」


2人の攻撃に突出した死人の騎士達は後退し、鎧が凹む。特にリノンの火炎剣は鎧を溶解させ、危うく前進が燃え尽きる所だった。


バキィンッ!!


「ちっ……流石に素材が悪いか」
「この2人は……前大会の選手か」


リノンは見覚えがあるのか、2人の死人を確認してシャドウを睨み付ける。今回の選手は誘拐まではされていないが、前大会の選手を死人に変えて手元に置いていたらしい。


「まあいい……お前らを殺せば、それなりに元は取れるだろう」


ボウッ……!!


紫色の魔水晶を握りしめ、シャドウの身体に魔力が流れ込む。すると、もう一度彼の「影」が変化を生じて今度は自分の周囲を囲っている死人4体の影と接合する。


「うおおおおっ……!!」
「がぁあああっ……!!」
「うぎぃいいいいっ……!!」
「おごぁああああっ……!!」


ビキビキィッ……!!


全員がフードを翻し、シャドウを囲っていた死人は全て最初の2人と同様に騎士だったらしく、腐り果ててはいるが、生前は立派な体格の人間だったのは間違いない。全員の肉体から血管が浮かび上がり、異様な雰囲気に覆われる。


「これは……何が起きている?」
「すんすん……嫌な臭いがします」
「……俺のと、少し似ている」
「ゴンちゃんの劣化版か」


ゴンゾウの「鬼人化」を発動した時と似たような変化を起こしており、身体能力を上昇させているのは間違いない。シャドウの操る影が原因であり、まるで死人たちに「魔力」を送り込む役割を行っているように見える。



「「「うがぁああああっ!!」」」



今まで傍観していたレノ達の後方の死人達も動き出し、ゴンゾウが構える。ここは彼を信じてリノン達は前方の騎士達に集中するしかない。


「はあぁっ!!」
「わぉんっ!!」
「撃雷っ!!」


ドォオンッ!!


全員がほぼ同時に動き出し、リノンは剣を、ポチ子は双剣を、そしてレノは右手に風雷を纏わせ、迎撃する。



――ズドォオオオンッ!!



「ぬおおおっ!!」


一方でゴンゾウは両腕を大きく広げ、死人たちが何かをする前に先に動き出し、両腕で4人の死人を抱きしめる。


ゴキィイイイッ!!


「「ぐげぇええええっ!?」」
「ふんっ!!」


剛力で死人たちを締め上げ、そのまま全身の骨をへし折り、動けなくなるまで拘束する。最初は死人達も暴れ狂うが、徐々に抵抗力を失い、糸が切れた人形のように動かなくなる。完全に動かなくなったのを確認すると、ゴンゾウは死人たちを解放し、後方を振り返る。


「がああっ……!?」
「……すまん」


リノンは騎士の鎧を貫き、そのまま火炎剣を胸元に突き刺す。彼女の炎は内側から死人の肉たちを焼き尽くし、瞳と口から火が迸る。


「乱の太刀!!」
「がはっ……!?」


ポチ子は長身の騎士を相手に、空中に跳躍して無数の斬撃を与え、死人の肉体が斬り刻まれる。浮き上がった血管から血液が激しく出血して倒れこむ。幾ら心臓部の魔道具が無事と言っても、血液を失えば死人であろうと動くことは出来ない。


「はい、終り」
「うごぉっ……!!」
「ぐぇええっ……!!」


レノは2人の騎士を相手に1人は右腕の撃雷で心臓部を打ち抜き、もう1人は左腕は装着した「聖爪(ネイルリング)」で鎧を貫いていた。

撃雷は「嵐属性」と「雷属性」による合成魔術であり、死人の肉体に高圧電流を流して心臓部を破壊、左腕の聖爪は元々は「聖剣エクスカリバー」の欠片の力を宿しており、聖属性の力は死人には有効的である。


「はっ……やっぱり、こいつらじゃ役不足か」


全ての死人が敗れたにもかかわらず、彼は特に気にした風も無く、何時の間にか距離を取っている。


「まあいい……予備は居るからな」


パチンッ!


シャドウが指を鳴らした瞬間、彼の後方から1つの人影が現れ、まるで死人とは思えない程に生前の容姿を保った女性が現れた。



――身長は160センチ前後、体格は細身であり、澄色の短髪に瞳をしており、年齢は20代後半。その恰好は赤いローブを纏っており、右手には3つの杖が固定された「拳銃」を想像させる武器を手にしていた。



「えっ……」
「なっ……」
「そんな……」
「……?」


後方から現れた「女」の死人を見た瞬間、リノン達が表情を変え、レノは不思議そうに首を傾げると、


「……カノンさん」
「まさか……そんな……」
「……貴様……!!」


明らかにリノン達は動揺し、特にゴンゾウは今にも「鬼人化」し兼ねないほど顔を怒りで紅潮させており、どうやら知り合いらしいが、


「……そう、お前らの使えている王国の「大将軍」の1人……二丁魔銃のカノンだ」
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