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第1章 水と光、交錯の相愛編

7.禁術。神の領域を犯した魔導の代償

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導師ファンガスが部屋にやってきて、俺の勉強はかなり進んだ。
まず、魔導を知る為、俺は自分の魔導を測ってもらった。
彩色が使えていることから、俺の魔導は光。それは間違いなかった。量に関しては、一般市民よりはかなり上らしい。このくらいの量と質ならば、無詠唱魔導を使うのは可能なので、特に俺の能力が異質ということにはならないらしく、俺は一先ず安心した。

魔導を理解したことから、俺はキサとラーシャが使ってた魔導の名前も知ることができた。
キサが使ってたのが炎の魔導の初歩『フレイム』。
ラーシャのは中級『クリムゾンフレイ』。
魔導には、詠唱と無詠唱があり、無詠唱は詠唱の間にできる隙がなくなる為、詠唱より魔導の発動にかなり優位らしい。

ここで一つ疑問。俺は確かに無詠唱だが、発動前にあの変な水音を聞かなければならないし、かなり時間がかかっているような気がする。
導師の話では無詠唱は一瞬のイメージ。隙などほとんどないとの事だし、どういう事なんだろう?
これもまた、調べる必要がありそうだ。

「導師ファンガス、こことは別の世界の話を聞いてもいいですか?」
「別の世界と?」
「はい。たとえば、こことは別の世界は存在を知られているんでしょうか?」
「言伝えはございますな。だが、詳しい話は伝わっておりません。なにせ、禁術に連なる話にて」

禁術。使う事を禁止されたか、制限された魔導の事かな?

「光の魔導殿」
「アヤでいいです」
「では、アヤ殿。あなたが仰っているのはおそらく『時渡りの魔導』の事にございますな」
「時渡り……」

小さく呟いた俺に、ファンガスはフゴフゴと頷く。

「時とは、時空・空間・時間・別世界といったものの総称で、時渡りとはそれらをすべて捻じ曲げる魔導の事にございます。時の軸を曲げ、無を優にする、禁術中の禁術にございます」

時を捻じ曲げる魔導。

「それを使って、たとえば、人一人別次元からこの世界に連れてくるとか?」
「可能ですな。ですが、代償が大き過ぎる」
「代償……」
「左様。過去に行なった者の伝えによれば、まず、莫大な魔導の力が必要となります。それから、使った者は死ぬか、あるいは精神を壊され二度と普通には戻れません」
「ーーーーーー!」

言葉を失くす俺に、ファンガスはなおも続ける。

「使われた者、この者に関しては死ぬという事はありませんが、まずどこに現れるかわからない。一旦魔導の理から外れる為、感知能力で探す事が出来なくなります。その後、探し出す事はできるようですが、かなり時間を要する。時渡りは神の領域を犯す術。人の身で神に成り代わろうなどという輩には、天罰が下るという事ですの」

怖い。怖すぎる。
まだ、自分がそうだと決まったわけではない。もしかしたら、時空の弾みが出来てそこからはじき出された可能性もなくはない。

だがーもし、自分が…

自分をこの世界に呼び出した者がいたとしたら…?
死人や廃人がでるような魔導を、自分に対して使われたのだとしたら。それはなぜ?
ファンガスが話を続けていたが、俺の耳には入ってこなかった。




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