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『全マシ。チートを貰った俺』編

第6話『俺を勇者と認めてください。』

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 しばらくするとギルドの人間が来た。
 生え際の後退したおっさんとボンキュッボンのねーちゃんだった。

「冒険者ギルドのマスター、アルフレッドだ」

「秘書のローリングです」

 俺が森で適当に狩っていたのは上級魔物と言われる高難易度のモンスターだったらしい。

 普通なら数人がかりで倒すもので、滅多に狩れるものではないのだとか。

「上級魔物を50体狩った少年というのは君かね?」

「俺は25歳で少年じゃないけどな。ただ、この魔物を倒したのは俺だよ」

「失礼、若く見えたもので。……話によると他にも倒した魔物がいるとか」

「いるよ。出そうか?」

「お願いします」

 バッグから魔王城で倒した雑兵たちを取り出した。
 オークっぽいやつから触手の集合体みたいなやつ。
 バラエティに富んだラインナップを見せびらかす。ほーれほれほれ。

「おお、これは……超級の魔物たち……! そんな馬鹿な……」

「マスター、懸賞金の掛かっている準幹部クラスの魔物も混じっているようです」

 雑兵に毛が生えたくらいの連中だと思ってたのに。超級だってよ。
 どや、俺が勇者やぞ。強いんやぞ。インチキのおかげでな。

「こいつらってすごいの? 一撃みたいなもんだったけど」

「い、一撃? 超級は魔王軍の主戦力の精鋭ですが……。あなたは一体何者ですか?」

「勇者です」

「ハッハッハッ。面白い冗談ですね」

 本気なんですけど。また笑われた。誰かいい加減信じてよぉ……。

「確かに勇者の召喚に失敗した国では、あなたくらいの実力者が勇者と言ってくれたほうが心強いかもしれませんね……」

 ギルドマスターはしんみりと言った。信じればそこに勇者はいるんだよなぁ。信じぬものは救われないのだ。

「しかしさすがに宰相ヘルハウンドや将軍ヒザマはいないか……」

「ヒザマってのは知らんけど、ヘルハウンドなら持ってるよ。犬みたいなやつでしょ」

「な、なんと!? あの地獄の番犬を倒したと……!」

「ひょっとして懸賞金ついてる? いくらくらいになんのかな」

「現在の価格は10億ゴールドですね」

 秘書のおねーちゃんが呆気にとられているギルマスの代わりに答えた。10億。相場がわからないけど、きっとすごい金額だ。

 一気に大金持ちかよ。異世界ちょろいわぁ。金銭感覚おかしくなりそう。

「では正確な金額を査定するので、ギルドまでお越しいただけますか?」

「了解っす」

 ギルマスに言われて死体を再度回収。
 ふう、詰め込んでいく作業は地味に面倒臭い。
 ここで査定しないなら追加で見せるとか言わなきゃよかった。

「あ、お金払わないと街に入れないって言われたんだっけ。ここでいくらか引き取ってもらえない? 今、無一文なんだよ」

「それくらい我々が立て替えますよ」

 ギルマスが揉み手で答えた。

「ありがとう。あと身分証作りたいんだけど。ギルドに入ったらもらえるかな?」

「もちろん。魔王の幹部を倒したほどの御方なら大歓迎です」

 ふーん。倒してないパンピーならお断りだったの?

 俺は捻くれたことをなんとなく思った。




 ポイポイポイッとバッグから魔物の死体を引っ張り出す。
 ギルドの屋外練習場みたいなところで俺の戦果の査定会が始まった。
 魔物の見本市やで~。

「これは超級のメイルシュトロームではないか!」

「こっちは同じく超級、斧神のゴズメズですよ!」

 ギルドの職員たちが興奮したり、ぎょっとしたりしながらリストと照らし合わせて見積もりを進めていく。
 魔王もあるんだけどこの調子だとまた今度にしたほうがよさそう。
 収集つかないほどの大騒ぎになりそうだし、日を改めてギルマスにこっそり話すか。


「す、すげえ……。どこのパーティが狩ってきたんだ?」
「いや、あそこにいる黒髪の男が一人でやったらしいぞ」
「超級と上級を一人で狩ったのか?」
「化け物だろ……」
 

 ギルドにいた冒険者たちが野次馬となって俺の成果を眺めている。
 ふはは、俺を崇めろ。

 そしていい加減、俺を勇者と認めてください。

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