種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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真章 〈終末の使者編〉

影の実力者

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コトミの意表を突いた魔法に巨人族は怯み、中には彼女の生み出した水によって足元を滑らせて他の人間を巻き込みながら転倒する者もおり、一気に形成がジャンヌたちに傾く。


「彼等を気絶させます‼ 多少は手荒になりますが、行きます‼」
「それなら拙者の出番でござる‼」


カゲマルは懐から一枚の黄色い札を取り出し、旧世界の感じで「電」と書き込まれており、全身が水浸しの巨人族たちに投擲した瞬間、札から電流が放出される。


バチィイイイッ‼


「「ぐおぉおおおおっ⁉」」


身体中に電流が走り、さらに彼等の周囲にいた者達も巻き込んで倒れ込み、一気に先の痺れ薬で動けなくなった者も含めても半数以上が戦闘不能に陥る。それでも数は二倍近くの差があり、すぐに難を逃れた民衆が動き出す。あまり手荒な真似はしたくないが、相手が得体の知れない武器まで所持している以上はもう手加減は出来ない。


「喰らえっ‼」
「くたばれっ‼」


民衆の中には魔術師もいたのか、人混みに紛れて詠唱を終えていたようであり、杖先を向けてくる。ジャンヌがすぐに戦斧を片手に前に出ると、


「サンダー・スピア‼」
「フレイム・アロー‼」


ズドォンッ‼


雷の槍と炎の矢が放出され、真っ直ぐにジャンヌの元に向かってくるが彼女は戦斧を握りしめ、両手から聖属性の魔力を流し込み、無詠唱で戦斧の刀身に魔力を宿すと、


「フォトン・ソード‼」


戦斧の刃から槍状に伸びた魔力の刃が顕現し、そのまま彼女は向い来る二つの魔法を切り裂く。魔法に対抗できるのは魔法だけであり、この技はレノの「魔鎧武装」と酷似しており、そのまま放たれた砲撃魔法は消散する。


「拙者も負けないでござるよ‼ ポチ子殿‼」
「わふっ‼ 犬牙流の秘奥義を見せます‼」


カゲマルとポチ子がお互いに鞘を装着させたまま双剣を抜き放ち、そのまま空中に跳躍するとポチ子は盾回転、カゲマルは横回転しながら民衆に向けて落下してくる。


「和風牙(わふうが)‼」
「回転剣‼」
「「うわぁああああっ⁉」」


二人の回転攻撃は民衆の中でも男達に狙いを付けており、そのまま薙ぎ倒す。ただの一般人では2人の攻撃を受けただけでも意識を失い、そのまま2人は反対側に移動して着地する。


「……おいたはだめ」
「わああっ⁉」
「な、なんだよこれ⁉」
「は、離れない」


その一方でコトミは女性や子供に杖を向け、彼女の意思に従うように子供たちの前に「水の縄」が発現し、そのまま体を拘束させる。水とは言え、魔力で練り固められた縄を女子供の力で振り解くのは不可能であり、その間に残りの者達を一掃する。


「お主で最後でござる‼」
「わぅんっ‼」


ほぼ全ての民衆を鎮圧し、ポチ子とカゲマルは最後の全身をフードで覆った魔術士らしき人物に向かって駆け出し、相手が魔法を発動させる前に倒そうとした瞬間、


「……ふんっ」
「わふっ⁉」
「なぬっ⁉」


ブォンッ‼


相手は軽く後ろに下がっただけで軽く回避し、実力者と言っては過言ではない2人の攻撃を躱すなど普通の一般人では有り得ない動きであり、相手はフードの中から黒塗りの短剣を抜き放ち、ポチ子の後頭部に目掛けて振り下ろす。


「死ね」
「わぅっ……⁉」
「ポチ子殿‼」


ガキィンッ‼


咄嗟にカゲマルが右足で刃がポチ子に届く前に男の手を蹴り上げ、そのまま短剣が地面に転がる。男は舌打ちしながら手元を抑えて距離を取り、一方でカゲマルとポチ子も焦ったように身構える。


「た、助かりましたカゲさん……」
「油断してはならないでござる……この者、相当な実力者と見たでござる」
「大丈夫ですか⁉」
「……危なかった」


ジャンヌとコトミも駆け寄り、他の隠密部隊は倒れ込んだ民衆たちを任せ、4人は眼の前のフード人物に視線を向ける。相手は人数の不利など気にした風も無く、やがてフードを脱ぎ去った。



「お、お主は……⁉」
「お前は……なるほど、人間の影か」
「そういう貴方は……森人族の影ですね」


姿を現したのは目元に額に黒蛇の紋様が刻まれた男であり、カゲマルの姿を確認して彼女の正体を見抜き、武器を構える。



――ジャンヌたちは顔を知らないが、彼こそディンの兄であるアルであり、今現在の彼は弟のディンと同じ状態であり、仁王立ちで4人の前に立つ。



「ジャンヌ殿‼ 気を付けるでござる‼ この者、相当な手練れでござるよ‼」
「分かっています……ですが、1人で我々に勝てるとは思えません」
「確かにな」


ジャンヌの言葉にアルはあっさりと肯定し、そんな態度がより一層にジャンヌたちを警戒させ、彼はゆっくりと右手を上げ、


「1人なら、勝てなかったな」


その言葉を言い終えると同時に右手を振り下ろし、それに呼応するかのように戦闘不能に追い込まれていたはずの民衆の数人が起き上がり、彼の元に集まる。


「なっ……⁉」
「そんな馬鹿な……倒れていたフリをしていたのでござるか⁉」
「痺れ薬など……我々には効かん」


アルの周囲には4人の男女が集まり、全員がエルフであり、恰好は一般人を装っているが服の内側から短剣や吹き矢を取り出し、全員がアルを中心に身構える。


「まさか……我々を誘き寄せたのですか?」
「さあな……我等は、あの御方の指示に従っただけだ……」
「あの御方……?」


彼等の発言にジャンヌはすぐに森人族の代表であるレフィーアを思い浮かべるが、彼女がわざわざこのような一般民衆を巻き込んだ非道を行わせるとは思えない。人族を嫌っていると言っても、彼女は無益な殺生や争いを好む性格ではない。

それに気になる事が他にもあり、ジャンヌはアルを取り囲む新手の4人の男女の右手に違和感を覚え、何故か全員が右手首から先が黒く染まっている。手袋の類ではなく、まるで皮膚が変色したように黒色に染まっているのだ。


(この感覚は……呪詛? )


すぐに聖属性の魔力を宿す彼女は右手の違和感の正体に気付き、彼等の右手から呪詛の力を感じ取り、怨痕か何かの類を宿している可能性が高い。少なくともあの右手に直接触れることは危険であり、それを伝えようとする前にコトミが口を開く。


「……その右手、呪われてる」
「そうだ。よく感じ取ったな」
「……貴方達も呪われてる」


コトミはいつもの彼女らしからぬ表情で杖を構え、すぐに周囲に水属性の水球が形成される。だが、その身体には冷汗が流れており、その反応にジャンヌはコトミも彼らの異常を察知したことを悟る。


「なるほど、聖属性の使い手か……だが、お前たちでは我らを止められない」
「我等は森人族の影……」
「そしてあの御方の力を授かった……」
「貴様らに負ける道理はない……」
「知るが良い……影に生き続けた我々の力を」


こんな状況に陥りながらも、あくまでも余裕の態度を貫く彼等にカゲマルたちは戸惑った表情を浮かべ、ジャンヌは戦斧を背中に戻し、腰に掲げたレーヴァティンを握りしめる。



「いいでしょう……ならばその右手ごと、貴方達を救済して見せます」



そう告げた瞬間、彼女はレーヴァティンを抜き放ち、刀身に真紅の炎を発火させる。リバイアサン戦以降、彼女はレーヴァティンの扱い方を完全に極めており、炎を纏わせながら刀身を向け、


「鮮血のジャンヌの異名……伊達ではありませんよ‼」
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