王都の大広間には、華やかな音楽と人々のざわめきが溢れていた。
社交界の中心ともいえる舞踏会。煌びやかなシャンデリアの下、若き令息や令嬢たちが談笑し、舞い踊り、誰もが夢のようなひとときを楽しんでいる。
けれど――その場の視線は、一人の令嬢へと集まっていた。
「リリアーナ・フォン・エルバート。お前との婚約を破棄する!」
鋭く響いたのは、婚約者である第一王子アルベルト殿下の声だった。
人々はざわめき、音楽が止まる。
「え……」
文字数 12,606
最終更新日 2025.09.28
登録日 2025.09.28
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
文字数 12,573
最終更新日 2025.09.25
登録日 2025.09.25
「……君との婚約は、ここで破棄させてもらう」
その言葉を、私は静かに受け止めた。
今から一時間前。私、セレナ・エヴァレットは、婚約者である王国第一王子リカルド・アルヴェイン殿下に、唐突に婚約破棄を言い渡された。
「急すぎますわね。何か私が問題を起こしましたか?」
「いや、そういうわけではない。ただ、君のような冷たい女性ではなく、もっと人の心を思いやれる優しい女性と生涯を共にしたいと考えただけだ」
そう言って、彼は隣に立つ金髪碧眼の令嬢に視線をやった。
文字数 13,305
最終更新日 2025.07.10
登録日 2025.07.10
王城の大広間に、ざわめきが満ちていた。
白いドレスを纏った令嬢が、赤絨毯の上で膝をついている。その顔には涙はない。どこか達観したような――いや、むしろ笑みさえ浮かんでいた。
「レティシア=ヴァルフォード。お前は数々の嫌がらせをフィオナに行い、彼女を何度も危険に晒した。それらの罪により、王国より追放とする!」
王太子、アレクシスが声を張り上げる。隣には、聖女として召喚されたフィオナ=スノウが寄り添っていた。小動物のように震えながら、王太子にしがみつくその姿に、周囲の貴族たちは同情の声を漏らす。
けれど、当のレティシアはうっすらと微笑んだまま、ひとこと。
「……それで、満足かしら?」
「なっ……お前っ!」
文字数 12,683
最終更新日 2025.07.02
登録日 2025.07.02
王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。
私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。
「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」
唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。
婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。
「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」
ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。
文字数 12,926
最終更新日 2025.06.20
登録日 2025.06.20