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世界が裂け、異界の『門』が開く。
その歪みから現れる異形の化物「禍滲」は、絶えずこの世界を脅かしてきた。
識島では、その脅威に抗うため、四大武家が長く戦いの要を担っている。
風斎、妻鳥、雪簇、月渓。
選ばれた血を保ち、継いできた彼らは世界の根源に満ちる力『綾』を掬い、織り、武具と術に変えて、禍滲を斬り、国を守る。
そしてこの世界にはもうひとつ、理不尽に「選ばれて」しまう者たちがいる。
人智を超えた力を宿し、代償として何かを奪われて生まれる者――『天宿り』。
それは天の祝福ではなく、只人の生を歪める災禍であった。
禍滲との終わりなき戦い。
家のために生き、国のために死ぬ者たち。
そして、望まぬまま与えられる、過ぎたる力。
識島は、そうした理不尽の上に、かろうじて均衡を保っている。
◆◆
■花晨月夕――風斎の章
風斎本家の姫付きである朝凪には、秘密がある。
かつて本家が忌子として雪に棄てた本来の長子・美菊を隠し守っているのだ。
産まれた瞬間に風斎の滅びを予言し、風斎の血の証である赤毛と青眼をもたなかった美菊。
それは、不可避の死を予言する天宿り『件』だった。
朝凪だけがそれを知っている。知っていて、隠し続けている。
予言の果て、滅びの日に彼とともに死ぬために。
文字数 124,940
最終更新日 2026.05.18
登録日 2026.05.17
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