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「一年、うんと可愛がらせてもらいますでな」
十九歳の透子が嫁いだのは、山あいの村・御山内。
贄嫁として。一年後の秋祭りに、オヤマサマへ捧げられるための嫁だった。
両親を亡くしてから八年、透子はいくつもの家を回ってきた。どこでも親切にされ、どこでも必要とされなかった。だから覚悟はしていた。冷たくされても構わない。物として扱われてもいい。八年ぶりに、自分に使い道ができたのだから——。
けれど、車を降りた透子を待っていたのは、村の全員が腰から折る深い礼だった。
当主の鎮ヶ谷灯真は、彼女の鞄を壊れ物のように土間へ置いた。
膳に出された栗ご飯は、誰にも話したことのない、亡き母の味だった。
大事に、大事にされる。
村の誰ひとり、例外なく。
こんなに幸せでいいのだろうかと思うほど、透子は満たされていく。
——なぜ、私だったのか。
——なぜ、位牌には戒名しかないのか。
——なぜ、村を出る道は、一年中工事中なのか。
答えの手前で、透子はいつも足を止める。もう、この家を疑いたくない。ここが、初めて自分を必要としてくれた場所だから。
そして、残された時間は一年しかない。
「愛してるって、あなたの気持ちですか。それとも、役目ですか」
その問いに、灯真は答えられなかった。
三百年続く因習と、嘘ひとつない溺愛。
その二つが同じものだと知ったとき、透子の一年が動き出す。
和風因習ホラー×溺愛。全110話予定。
文字数 207,273
最終更新日 2026.10.29
登録日 2026.09.05
地図にも載らず、看板もない。紅葉の季節にしか開かない山奥の店の名物は、「幻のもみじ鍋」。
再生数が落ちて焦るグルメ系インフルエンサーの七瀬は、一年前にその店を紹介したきり更新を止めた同業者のゆいに、ダメもとでDMを送る。翌朝届いたのは、地図のピンと短い一文だった。
〈誰にも言わないでね。おひとりでどうぞ〉
自分だけのネタにするため、七瀬は誰にも告げずに紅葉の山へ向かう。
※1話完結の短編ホラーです。
文字数 7,870
最終更新日 2026.10.17
登録日 2026.10.17
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