大学生の信司は、仲間と心霊スポット巡りをしている。
その夜は「首つり屋敷」に行く予定だったが、熱を出した彼女を看病するために予定を外れ、彼女の実家で一晩を過ごす。
深夜、外の騒ぎが止んだ瞬間、彼女の首が不自然に“上へ伸びる”。
影も異様に長い。
翌朝、彼女の熱は下がり、信司は大学へ向かう。
そこで仲間から見せられたのは、昨夜の「首つり屋敷」で撮った写真。
そこには――
信司と、顔のない女が寄り添って座っていた。
文字数 1,259
最終更新日 2026.07.27
登録日 2026.07.27
かつてサッカー界の英雄だった大内洋二郎は、癌で余命わずかとなり、唯一の生き甲斐は才能ある甥・清司郎だった。
しかし事故で清司郎の右足は粉砕され、サッカー人生は絶望的になる。
洋二郎の旧友が研究していた禁断の技術「人間接ぎ木術」により、事故死した若手選手の右足を移植した清司郎は、以前よりも強く速くなる。
だが名門・霧ヶ峰学園の受験を前に、清司郎は勉強ができず泣き崩れる。
その願いに応えるように、洋二郎は自らの“頭”を少年の体へ接ぎ木させるのであった。
文字数 776
最終更新日 2026.07.26
登録日 2026.07.26
主人公は、夏の夕立に襲われながら自転車で帰宅する途中、全身ずぶ濡れになり、長い髪と服が肌に貼りついて“ほとんど裸のような姿”になってしまう。視界も奪われ、必死で走る中、女子高生たちに悲鳴を上げられ、羞恥と混乱のまま逃げ込んだのは、地元で“女性の幽霊が出る”と噂される通称「おばけトンネル」だった。
トンネル内で髪を梳き、ようやく落ち着いた主人公は帰宅するが、後日「雨の夜に長髪の全裸の女幽霊が髪を梳いていた」という噂が広まる。それはまさに主人公自身の姿だった。
文字数 1,393
最終更新日 2026.07.25
登録日 2026.07.25
十年前に都会で孤独に働いていたはずの男・田所共作。
しかし、事故で五年間昏睡していたと告げられ、夢で見た“都会の十年”と、目覚めてからの“家族との三年”がどちらも現実のように重なり始める。
ある日、夢の中で働いていたはずの派遣会社から封筒が届く。
それは、夢と現実の境界を破る“裂け目”だった。
封を切れば、どちらかの現実が崩れる。
切らなくても、今の生活が薄膜の向こうで揺らぎ続ける。
自分が立っている“現実の所在”は、どこなのか。
静かに侵食していく恐怖と、戻れない日常の物語。
文字数 1,280
最終更新日 2026.07.24
登録日 2026.07.24
山深い村には「産女」の伝承があった。
子を抱けぬまま死んだ女は産女となり、夜の闇から現れて赤子の命を吸う。
ゆえに村では、赤子を母の胸から一刻たりとも離してはならないという掟が守られていた。
長年、村の産婆を務めてきた入江時子は、母子の命を救ってきたはずだった。
だが、彼女が取り上げた赤子は、なぜか皆、翌朝には冷たくなっていた。
原因は分からない。ただ、静かに息が止まっている。
やがて村は時子を遠ざけ、彼女は古い産小屋に身を潜める。
そこで鏡を見た時、時子は気づく。
自分の顔が、生者のものではないことに。
文字数 1,591
最終更新日 2026.07.23
登録日 2026.07.23
男の厄年は二十四・四十一・六十歳。
しかし村には、ほとんど知られていない“十三歳の厄年”が存在する。
十三歳の秋、少年十五人が白装束で集められ、巨大な「厄受けの鐘」の下を歩かされる。
鐘は最後にひとりの頭上へ落ち、選ばれた少年はそのまま閉じ込められ、厄を背負い続ける。
残りは生き残り、次の厄年まで怯えて暮らす。
二十四歳になった崇のもとへ、再び村から「厄落とし」の招集が届く。
拒否すれば村から完全に絶縁されるため、参加は強制だ。
広場には十一年前に落ちた古い鐘がそのまま残り、
新しい鐘が吊るされている。
十二人の男たちが念仏のような声を合わせて歩き始める。
文字数 1,395
最終更新日 2026.07.22
登録日 2026.07.22
千葉の海に面した小さな岩場で、少年は毎年夏になると一匹の“大きなカレイ”を追い続けていた。
潮が引くと姿を現すそのカレイは、岩に溶け込むように動かず、まるで海底の守り神のように見えた。
五歳の夏から十二歳になるまで、少年はその場所へ通い続ける。
ある年、地元の少女が現れ、少年の手を引いて海へ誘う。
「少し潜れば、すぐだよ」
少女の囁きに導かれた先には、鯛やヒラメが光の中で舞い踊る、美しくも異様な世界が広がっていた。
だが、気づけば足の届かない深み。
少年は恐怖に駆られ、少女の手を振りほどいて岩場へ逃げ帰る。
少女は海の中に消えた。
十二歳の夏、少年は再びその場所を訪れる。
しかしそこには水がなく、干上がったタイルの底に“カレイの絵”が乾いて貼りついていた。
すべては、かつての海洋レジャープールの残骸だったのだ。
文字数 1,155
最終更新日 2026.07.21
登録日 2026.07.21
山間の小さな村では、八十歳を迎えた者は「傘寿の儀」で盛大に祝われる。
紫の日傘と黄色いちゃんちゃんこを贈られ、村中から祝福されるが、その祝宴は“柔らかくするための前処理”でもあった。
強い酒を浴びるように飲まされ、涙と熱気に包まれたまま、老人たちは「温め処」へと導かれる。そこでは大釜が沸き、村は八十歳を“冬を越すための食糧”として処理するのが古い掟となっていた。
主人公・池田ハツは、母も同じように連れていかれたことを思い出しながら、静かにその運命を受け入れるのであった。
文字数 1,630
最終更新日 2026.07.20
登録日 2026.07.20
毎年お盆に帰省し、祠の火を家に持ち帰る――
母が生前繰り返していた“しきたり”を、健一はただの迷信だと思っていた。
母が亡くなった年、初めて帰らなかった夜から、
彼は“自分の後ろ姿”を追う奇妙な夢を見るようになる。
夢の中の背中は日ごとに遠ざかり、ついには母の声が彼を引き戻す。
不安に駆られて村へ戻った健一は、
祠の青白い火を分けてもらい、仏壇に灯す。
そこで隣家の老女から、村の血筋にまつわる真実を聞かされる。
文字数 1,227
最終更新日 2026.07.19
登録日 2026.07.19
野呂平助は、生まれつき“のろま”と呼ばれてきた。
しかしそれは動作の遅さではなく、世界が必ず彼を最後に選ぶという奇妙な不運だった。逃げても、隠れても、危険は必ず彼に追いつく。
そんな平助の前に、さらに鈍い男・牛島鈍平が現れる。
平助は初めて“自分より下がいる”という甘い優越感を覚え、彼を親友と呼ぶことで安心を得る。
だが夕暮れ、赤い目をした異様なポメラニアンが現れ、二人は逃げ出す。
平助は鈍平より速く走れた。その瞬間、彼は初めて“上に立った”と感じ、後ろを振り返って笑うのであった。
文字数 1,117
最終更新日 2026.07.18
登録日 2026.07.18
犬鳴ダムの完成で水没したはずの犬鳴谷。
公式記録では「無人化」とされたその場所には、
水没ラインをわずかに超えた高台に、三軒の家がひっそりと残っていた。
行政は補償交渉の難航を理由に、
その家々を“処理済み”として住民票を抹消。
結果として、記録上は存在しない住民たちが生まれた。
夏の終わり、大学生の和馬は
「犬鳴ダムの奥に灯りが見える」という噂を確かめに向かう。
廃道、旧トンネル、破られたフェンス。
そして、闇の中に浮かぶ三つの灯り。
そこにいたのは、
行政にも警察にも存在を認められない“生きた亡霊”たちだった。
文字数 1,790
最終更新日 2026.07.17
登録日 2026.07.17
幼なじみの春花と結婚し、娘の瑞穂と三人で穏やかに暮らしていた朝倉一郎。
家族の楽しみは、茨城の低山でのキャンプだった。
その夜、一郎は罠にかかったハクビシンの親子を助ける。
しかし深夜、テントごと崖下へ落下する事故が起き、妻と娘は帰らぬ人となる。
瀕死の一郎の前に、再びハクビシンの親子が現れ、涙を拭うように寄り添う。
手に握られていたのは、夢で“クラッカー”として見た発煙筒だった。
文字数 1,206
最終更新日 2026.07.16
登録日 2026.07.16
関東高校サッカー大会で優勝した霧ヶ丘高校。
中でも 大地翔 と 柘植隼斗 は一躍スターとなるが、隼斗だけは異様に注目を避けていた。
隼斗の故郷は、岐阜の山奥に残る小さな集落。
村の中心はダムに沈み、残った者たちは古い因習を守り続けている。
村には禁忌があり、破った者は 「静養舎」 に送られ、
“再教育”された 別の人間 として戻ってくる。
隼斗は「有名になってはいけない」という掟を破ったため、
村に戻れば“入れ替え”られると恐れていた。
文字数 1,578
最終更新日 2026.07.15
登録日 2026.07.15
四歳の夏、主人公は保育園の散歩中に用水路へ落ち、死にかけた。
そのとき感じた“胎内のような安らぎ”は、成長後も彼を離さず、息止めの記録を伸ばすほどの執着となる。
やがて十二分を超え、ついに境界を越えた夜、彼は七日間、時間の外側に沈み続ける。
文字数 907
最終更新日 2026.07.14
登録日 2026.07.14
赤城山南麓の原野に生まれたマタギ・赤城源蔵は、戦争で家族を失い、
「赤城の血を絶やさぬため」に生き残った男だった。
貧しさの中で家族を守るため、彼は“嘘を育てる”ことを決意する。
古文書を偽造し、小判を埋め、仏像を錆びさせ、坑道を掘り、
五十年かけて赤城山の埋蔵金伝説を“本物のように”育て上げた。
そして1993年、埋蔵金ブームが再燃し、
源蔵の仕掛けた嘘はついに一万坪三十億円となって実を結ぶのであった。
文字数 1,530
最終更新日 2026.07.13
登録日 2026.07.13
地方のIT企業「アカギ・ラボ」に入社した賀来竜助は、
破格の待遇の裏に隠された“家”の掟に縛られ、
儀式と洗脳によって人格を奪われていく。
社員たちの本当の仕事は、ITではなく、
小栗家が百五十八年守り続けてきた“埋蔵金”を掘り続けることだった。
退職は許されず、外界との接触も禁じられ、
最後には竜助自身が“掘る側”の一員となり、
次の新入社員を迎える存在へと変わっていく。
文字数 1,797
最終更新日 2026.07.12
登録日 2026.07.12
夏休み、両親の事情で祖母の家に預けられた少年・良次は、竹林の奥にある舟形地蔵と無数の風車に惹かれる。そこで出会った“良介兄さん”は、自分の兄だと名乗り、優しく風車をくれる代わりに、良次の体の一部を少しずつ求めた。
爪、髪、歯、耳たぶ──言葉の約束だけで痛みもなく奪われていく身体。
しかし祖母がその名を聞いた瞬間、恐怖に染まった顔で良次を竹林から遠ざける。
文字数 1,269
最終更新日 2026.07.11
登録日 2026.07.11
町外れにある、誰にも顧みられない古い倉庫。
七歳の頃は秘密基地だったその場所に、十歳の夏、僕は初めて二階へ足を踏み入れた。
そこで見つけたのは、ガラスケースに収められた精巧なドールハウス──僕の家を完全に再現した模型だった。
文字数 1,337
最終更新日 2026.07.10
登録日 2026.07.10
二卵性双生児の兄弟、邦宏と靖彦。
背丈も性格も正反対の二人は、ただ一つ――底知れぬ貪欲さだけを共有していた。
古い地主の屋敷に眠る金塊。
台風の夜なら、濁流がすべてを消してくれる。
三年待ち続けた末、二人は三軒の屋敷から二十キロを超える金塊を奪い、冠水した道路を逃走する。
だが、橋に差しかかった瞬間、車は濁流に呑まれた。
靖彦は脱出したが、邦宏は金塊の詰まったリュックを抱えたまま沈んでいった。
文字数 1,522
最終更新日 2026.07.09
登録日 2026.07.09
長野の山奥にある工房で作られる「虹の箸」は、七色を重ねて塗り、使い続けて色が剥がれ、最初の紫が現れると死を招くとされる呪いの箸。友人の知美は夫の浮気に耐えかね、この箸を夫に使わせるため、語り手とともに工房を訪れる。
知美は夕食の席で夫に箸を渡し、色が赤から橙、黄へと剥がれていくにつれ、夫婦関係はむしろ改善していく。しかし青が剥がれ始めた頃、知美は急に罪悪感を覚え、箸を取り上げて使用をやめさせるのであった。
文字数 1,104
最終更新日 2026.07.08
登録日 2026.07.08