1
件
『Schwarzfeder ― Zwei Flügel, Ein Himmel』
帝国と連邦。ふたつの国家は、戦争に対してまったく異なる思想を掲げていた。
自律統合帝国は説く——
「人間の判断は遅く、感情は戦場のノイズである」
戦場に立つのは人ではなく、自律思考する人型兵器・AHU。個の命よりも、戦線維持率と国家存続確率がすべてを決める。
対する自由統合連邦は譲らない——
「戦争においても、判断の責任は人間が負うべきである」
機械は補助に過ぎず、決断も責任も、常に人の手の中になければならない。SHUと呼ばれる完全手動の機体が、その思想を体現していた。
この対立の最前線に、生き別れた姉妹がいる。
帝国軍AHUパイロット、黒羽玲。十八歳。政治的思惑から養子に迎えられた副司令の娘であり、唯一の有人指揮官機・AHU-01Σに乗る。撃たず、壊さず、都市機能だけを止める――その異例の戦い方で初陣を制するが、その功績は本人の意思とは無関係に、政治の広告塔として利用され始める。
連邦軍士官学校生、黒羽澄。玲の実の妹でありながら、互いに相手が生きていることさえ知らない。彼女もまた、SHUに乗り、戦場に立つ道を選んでいく。
姉は数値と自律の論理の中で。
妹は責任と手動の論理の中で。
同じ空の下、少しずつ距離を詰めながら――それでも、姉妹はまだ、互いに名乗ることができない。
撃たずに勝つ帝国の戦術は、やがて政治の道具として姉を追い詰め、正しくあろうとした判断が、彼女自身の立場を脅かしていく。それでも戦場は止まらない。新型機の開発、鹵獲機を巡る駆け引き、そして再び交わることのないまま重なっていく、姉と妹の戦線。
これは、銃声よりも静かな決断が、歴史を動かしていく物語。
そして、同じ空の下にいながら、まだ出会えない姉妹の物語。
二つの翼は、いつ、一つの空で交わるのか。
文字数 4,502
最終更新日 2026.08.29
登録日 2026.08.29
1
件