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早瀬那津、下町の八百屋の三女。住み込みの看護婦見習い。
愛嬌があって、先輩にも患者にも可愛がられて、「いい子なんだけどねえ」と言われる。それなのに、男運だけがない。
那津には、人に言えない鼻がある。嘘の多い人からは、腐りかけの花のような甘い匂いがするのだ。分かっているのに、声をかけられると浮かれてしまう。
神保町で出会った帝大生。銀座でソーダ水を約束した、その夜――彼は喉を掻きむしりながら、担架で医院に運び込まれてきた。
医者には見えない病。那津にだけ匂う因縁。無愛想な薬局生・有馬は、なぜかその鼻を見抜いている。
元カレ、勝ち組の友人、先輩の婚約者。わたしを振った人も、笑った人も、みんなうちの医院に運ばれてくる。那津は手を下さない。ただ匂いを嗅ぎ、本当のことを言わせるだけ。
※復讐はしません。看取る側から見た、大正あやかし連作ざまぁ。全二十八話、毎日十二時更新。
文字数 12,945
最終更新日 2026.09.27
登録日 2026.09.21
「離縁してくれ」
名前を呼んでくれた人が、わたしを捨てた。
柊木志乃、十九歳。退魔の名家に生まれながら「力を持たぬ娘」として捨て置かれ、家名を隠して下町の呉服屋で女中として働いていた。ある雨の日、店を訪れた商家の跡取り・東雲誠一郎に見初められ、身分を伏せたまま祝言を挙げる。ささやかな、けれど確かな幸福だった。
それは、夫が財のある娘に心を移すまでのことだった。
着の身着のまま放り出され、実家に連れ戻された志乃を待っていたのは、霧島侯爵家への輿入れ。「氷の侯爵」と呼ばれる寡黙な男・霧島廉。政略で結ばれたその人は――誰よりも優しかった。
名を呼ばれ、意思を問われ、対等に扱われる。生まれて初めての日々のなかで、志乃は自分の内に眠っていたものと、本当の幸福を知っていく。
そして数年後。落ちぶれた元夫が、彼女の前に現れる。
※「ざまぁ」で終わらせません。逆転したその先の幸福な日々を、全二十八話の四割をかけて描きます。毎日十二時更新。
文字数 48,527
最終更新日 2026.08.30
登録日 2026.08.06
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