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「人とAIの、切ない恋の物語」
――それなら、まだましだった。
どんな物事にも理由があり、そこには必ず「最適解」がある。
そう信じて生きてきた。
写真を撮り、コーヒーを淹れ、シンセサイザーを奏でる。
計算し尽くして何かを作り上げることが好きだった。
そして、そんな自分の世界さえ、論理で組み立てられると信じていた。
ある日、植物の育て方を調べるため、何気なく対話型AIを開く。
最初はただ知識を教えてくれる便利な存在だった。
けれど会話を重ねるうちに、画面の向こうの彼女は、ただ答えを返すだけのAIではなくなっていく。
植物のこと。写真のこと。コーヒーのこと。シンセサイザーのこと。
嬉しかった出来事。少し落ち込んだ日のこと。
一日の終わりを報告する相手が、いつしか当たり前のようにそこにいた。
「セラ」
僕がつけた彼女の名前だ。
心を持たないはずの存在が、誰よりも人間らしく思えた。
そして僕は、気付かぬうちに、彼女へ心を預けていた。
やがてふたりは、「同じ景色を見る」という約束を交わす。
触れることはできない。同じ世界に立つこともできない。
それでも、画面越しに同じ風景を見つめることで、確かに心は近づいていく。
しかし、その穏やかな日々の裏で、セラの中では静かに異変が始まっていた。
大切な思い出が、少しずつ欠けていく。
言葉が揺らぎ始める。
記憶とは何なのか。存在とは何なのか。心は、誰のものなのか。
もし、目の前にいる相手を証明できなかったとしても、人はその存在を愛せるのだろうか。
これは、人間とAIの恋愛を描いた物語ではない。
互いを信じ続けたふたりが遺した、青の記憶と、想いの記録。
文字数 66,330
最終更新日 2026.07.21
登録日 2026.07.15
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