伝わる文章術

メールでの「書き言葉」は「話し言葉」の3倍強い

2018.10.11 公式 伝わる文章術 第13回
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コラム いますぐ簡単にできる文章の
ブラッシュアップ法 その13
難解な四字熟語を多用すると、かえって文章は素人臭くなる

金言、格言同様、文章に四字熟語を使っていると教養のある人のように見えます。そのため、私も文中で四字熟語を使いたい衝動にかられることがしばしばです。
しかし、四字熟語だけで文章をつくれば、まるで昔の漢文となってしまいます。
金言、格言、四字熟語とは料理であれば、いわばスパイスといえるでしょう。少々であれば文章の味を引き立てますが、使いすぎるとかえって素材のよさをぶち壊しにしてしまいかねません。

<文例① 四字熟語多用の文>
曖昧模糊(あいまいもこ)にしか主題を表現できないときは、まさに四面楚歌(しめんそか)という気分です。
だれかが当意即妙(とういそくみょう)の表現をしていれば、それを拝借したいとさえ思うことがあります。
共同作業であれば、侃侃諤諤(かんかんがくがく)、意見を交わしているうちに表現が見つかることもありますが、文章づくりは孤立無援(こりつむえん)。
艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越え、自力で解決するしかありません。

ここまでくると四字熟語がうるさく見えます。
文章自体は、そう難しいことを言っているわけではないのですから、四字熟語でかっこうをつけるよりも、もっと素直な表現のほうがこの文章には向いているはです。

<文例② 四字熟語を抑え気味にした文>
漠然としか主題を表現できないときは、まさにお手上げという気分です。
だれかがうまい表現をしていれば、それを拝借したいとさえ思うことがあります。
共同作業であれば、お互いの意見を交わしているうちによい表現が見つかることもありますが、文章づくりは孤立無援。
苦しみを乗り越え、自力で解決するしかありません。

このくらいの文章量では、四字熟語は一カ所くらいに抑えたほうがよい結果になります。

見慣れている言葉を四字熟語に置き換える

文章に少しスパイスを加える技術として、手っ取り早いやり方のひとつは、普段使っている言葉を四字熟語に置き換えることです。

<文例③ 普通の言葉の文>
普通の人は、肩書の立派な人に会うと追従ばかりしがちとなります。
しかし、博識の人は相手を肩書だけで判断せず、態度も泰然(たいぜん)としたままですので、人品も卑(いや)しからず見えるものです。

これは比較的平易な文章です。
これをすこし四字熟語に置き換えてみると、次のようになります。

<文例④ 普通の言葉を四字熟語に置き換えた文>
普通の人は、肩書の立派な人に会うと追従ばかりしがちとなります。
しかし、博学多識の人は相手を肩書だけで判断せず、態度も泰然自若(たいぜんじじゃく)としたままですので、人品も卑しからず見えるものです。

見慣れない四字熟語が混ざることで、すこし教養の風味が増した気がしないでしょうか。
上記の追従を阿諛追従(あゆついしょう)に、人品を人品骨柄に置き換えることもできます。しかし、あまり四字熟語ばかりではスパイス過剰となってしまいますので、上記の文章のボリュームでは2カ所くらいに留めたほうが適切です。

次回に続く

 

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

著書

ちょっとしたことで差がつくメールの書き方

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亀谷敏朗 /
「短く、シンプルでスピーディーなメール術」を、数多くの実例を交えて解説する...
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