伝わる文章術

デキる人はメールの件名をおろそかにしない

2019.02.28 公式 伝わる文章術 第22回
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文章を短く切る技術

文章を箇条書きにすることができない場合には、あえて思い切って文を途中で切るという方法もあります。文例Eの本文を短く切った例が下記です。

<文例G あえて思い切って文を短く切ったメール>
件名 ムダな会議の代表例

ムダな会議としてよく見かけるのは、部門間の連絡会議を同じ議題なのに別々に何度も開いているケースです。
メール等で個々に伝達できることを全員が集めて行うこともムダといえます。
また、無用な会議資料を過剰に用意することも会議に関する大きなムダです。

ひとつの文がどんなに長くても、短く切り分けることは可能なのです。

コラム いますぐ簡単にできる
文章のブラッシュアップ法 その22
読む人の世代によって言葉を使い分ける

文体の印象は使っている語彙によって概ね決まりますが、語彙には読者に向いたものと不向きなものがあると思います。昔は、年配者向けの文ではカタカナを多用するなとよくいわれました。いまでも、年配者に「私たちもアップデートしましょう」と言ったらほぼ通じないはずです。

年配者には格調を感じさせる語彙がフィットしますし、若い人に向かってはより平易で今日的な語彙を使うことが基本でしょう。相手に何らかの手間をかけてしまったとき、年配者には「余計なことで煩わせてしまいまして申し訳ございません」でも、若い人には見慣れない「煩わしい」という言葉を使うより、「余計なことでご面倒をおかけしすみませんでした」のほうが気持ちは伝わります。

過去のエピソードを語るときでも、読者の年代によって語り口は変わります。

<文例① 年配者が読むと想定されるときの文>
「責任はオレがとる。お前は現場でやるべきと思ったことを迷わずやれ」
当時、上司だった〇〇さんのこのひと言で私の心は重圧から解放され、同時に力強く鼓舞されました。
いまでも大変うれしかったことを鮮明に憶えています。

同じエピソードを若い人に向けて書くとこうなります。

<文例② 若い人が読むと想定されるときの文>
この大ピンチのとき、助けてくれたのは上司の〇〇さんでした。
〇〇さんの「責任はオレがとる。お前は現場でやるべきと思ったことを迷わずやれ」というひと言で、私の心はすーっと軽くなり、そしてもう少し頑張ろうと思いました。
そのときのことは、いまでもはっきり憶えています。

たどたどしさも、ときにはアリ

若い人に向かって語る文章の文体は、必ずしも格調高く流麗である必要はありません。むしろ、少々たどたどしいくらいの文章のほうが、読者は親近感を抱き、共感しやすくなることもあります。

<文例③ 年配者向けの格調重視の文体>
私は上司の責任のとり方を○○さんから学んだ。
大ピンチのときに自ら責任を引き受ける覚悟が、〇〇さんをして事態の矢面に立たせたのだろう。その覚悟こそ上司の責任感であると、私は部下を持つ身になったとき自身の戒めとした。

上記の文章を若い人向けに改めるとこうなります。

<文例④ 若い人向けの文体へ改変した文体>
○○さんは、大ピンチのときに自ら矢面に立って私たち部下を守ってくれました。
私は〇〇さんから、上司としての責任のとり方を教えていただいたと思っています。その教えが、私が部下を持つようになったときに生きたと思います。

よい文体に定型はありません。語るべきテーマと伝えるべき相手に、最もふさわしい文体がよい文体なのです。

次回に続く

 

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プロフィール

亀谷敏朗
亀谷敏朗

1984年中堅ビジネス書出版社だった中経出版に入社。本づくりのかたわらセミナー事業、コンサルティング・ビジネスにも携わる。また、在職中は中小企業から一部上場企業までを横断した、企業内の教育担当者の異業種交流会を主催した。
2004年フリーの出版プロデューサーとして独立。主にビジネス書作家のデビューを支援する。
支援の一環として、新人作家の原稿づくりのアドバイスを手掛けたことから、改めて伝わる文章の研究を始める。
「名文は要らない」、「読者と編集の立場から見たわかりやすい文章」に軸足を置いた方向で、新人作家には文章の書き方をアドバイスしている。

著書

ちょっとしたことで差がつくメールの書き方

ちょっとしたことで差がつくメールの書き方

亀谷敏朗 /
「短く、シンプルでスピーディーなメール術」を、数多くの実例を交えて解説する...
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