真中流マネジメント

三木肇ヘッドコーチが語る真中ヤクルト②
~ヘッドコーチは監督とどう向き合うべきか~

2017.05.26 公式 真中流マネジメント 第28回

「イエス」と「ノー」の上手な使い分け

何でもかんでも「ノー」というのではなく、
大切なのは適切に「イエス」を使うこと

監督ご自身が「イエスマンばかりでは組織は成り立たない」という考えを持っているからこそ、僕もはっきりと「ノー」と言うようにしています。その際に大切になるのは、自分の中に「これは正しい、これは正しくない」とか、「これは譲れる、これは譲ってはいけない」という明確な価値基準を持ち、それに基づいて「言うべきことはきちんと言う」という姿勢だと思います。

ただし、ひとつ誤解してほしくないのは、何でもかんでも、「ノー」と言えばいいというわけではないということです。むしろ、ある程度はイエスマンでいることのほうが大切だと、僕は思っています。

たとえば、監督がコーチ陣から意見を聞き、さんざん悩んだ末に思い切って決断を下したとします。そんなときは、たとえ多少気になるところがあったとしても、決してノーとは言わず、「そうですね。それでいきましょう!」と背中を後押しするよう意識しています。まるであら探しをするかのように、いちいち細かいところまで「ノー」と言っていては、監督だってやりづらいでしょうし、そもそも物事がなかなか前に進みません。

大切なのは、決断を下すまでには、「ノー」を含めたいろいろな意見を口にするけれども、一度、決断をしたのならば、そこではむしろ、「ノー」はいらない。ヘッドコーチとして監督の背中を後押しするように全力で取り組むべきだと思っています。これは言い換えるならば、「何でもかんでもノーと言うこと」が大切なのではなく、「適切にイエスを使うこと」が重要ということなのだと思います。

監督と同じビジョンを共有することの大切さ

我々の目標は「勝つこと」であると同時に、
選手を含めた全員の「人間的成長」でもある

真中監督はコーチ陣に対して、「監督と同じビジョンを持っていること」を求めています。プロ野球チームですから、目指すものは勝利であり、リーグ制覇であり、日本一奪還です。すなわち、我々の最大の目的は「チームが勝つこと、チームを勝たせること」であるのは明白です。これは、企業の場合で言うのならば「業績や売り上げを伸ばすこと」が組織としての最大の目標になるのと一緒でしょうか?

しかし、「チームを勝たせること」だけを唯一の目標にするのではなく、そこに「チームの成長、選手個人の成長」も、一緒に追い求めたいと僕は思っています。企業で言えば、「自社の発展」だけを追い求めるのではなく、「社員の幸福」や「社会貢献」も同時に目標にしていく姿勢と通じるものがあるかもしれません。

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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