ビジネス書業界の裏話

有名になって本を出すか、本を出して有名になるか

2016.12.22 公式 ビジネス書業界の裏話 第22回
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作家は大物・有名人の専権事項ではない

長いことビジネス書づくりに携わってきた仕事がら、これまで多くの財界の大物、有名人といわれる人たちに会ってきた。アメリカ人作家のナポレオン・ヒルは鉄鋼王カーネギーに会って、鉄鋼王直伝の成功法則を本にまとめたが、わたしの場合、そのような成果物を生み出すことはできなかった。

大物・有名人に会って、わたしがわかったことといえば、大物・有名人といわれる人たちが、意外なことに実はあまり大物ではなかったということだ。割合、フツーの人が多かったのである。

格別に立派だったという人は、本当に数えるほどしかいない。こちらの見る目のなさを棚に上げていえば、そう大したとりえのない人ばかりだったのである。しかし、考えてみればこれは驚くことではない。なぜなら、有名人の半分は、フツーの人が何らかの理由で有名になったに過ぎないからである。元を正せばフツーの人なのだから、こちらの印象が「なんだフツーじゃないか」となっても当然といえよう。

出版相談を受けていると、よく「本は立派な経歴の人しか出せないんじゃないか」という質問を受けることがある。目立つ本というのは、概ねネームのある作家の本であるから、世間の人からは、本は立派な経歴の人が出すものという風に見えるのも無理はない。そもそも本を出しているという実績も、立派な経歴のひとつである。立派だから本が出ているのか、本が出ているから立派なのかといえば、実際のところ後者のほうが多い。

有名作家といわれる人は、有名だから本を出したのではなく、ほぼ例外なく本を出したことで有名になった人である。遠くは長谷川慶太郎氏、近くは池井戸潤氏も、本を出す前は無名の人だった。したがって、先の相談者の質問への答えは、常に「ノー、フツーの人で何ら問題ありません」である。

大物・有名人というとき、ビジネス書に限っていえば、次の2つのタイプに分かれる。
Aタイプ:本を出す以前に大物・有名人であった。
Bタイプ:本出したことで大物・有名人になった。

Aタイプは、財界のトップを務めたような大物経営者であったり、何らかの大きな実績をあげた人である。大企業の経営者もAタイプに入る。有名になった経緯がAかBかはともかくとして、大物・有名人作家の下には出版社が群がってくる。その結果、書店には大物・有名人の本が氾濫するため、世間の人々は、ますます本は大物・有名人が書くものかと思ってしまう。

しかし、Bタイプの大物・有名人は本を出す以前には無名の人で、本を出したことによって有名になったのである。そういうタイプの大物・有名人も有名人の半分はいるのだから、作家というポジションは大物・有名人の専権事項ではない。

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プロフィール

ミスターX
ミスターX

ビジネス雑誌出版社、および大手ビジネス書出版社での編集者を経て、現在はフリーの出版プロデューサー。出版社在職中の25年間で500人以上の新人作家を発掘し、800人を超える企業経営者と人脈をつくった実績を持つ。発掘した新人作家のうち、デビュー作が5万部を超えた著者は30人以上、10万部を超えた著者は10人以上、そのほかにも発掘した多くの著者が、現在でもビジネス書籍の第一線で活躍中である。
ビジネス書出版界の全盛期となった時代から現在に至るまで、長くビジネス書づくりに携わってきた経験から、「ビジネス書とは不変の法則を、その時代時代の衣装でくるんで表現するもの」という鉄則が身に染みている。
出版プロデューサーとして独立後は、ビジネス書以外にもジャンルを広げ文芸書、学習参考書を除く多種多様な分野で書籍の出版を手がけ、新人作家のデビュー作、過去に出版実績のある作家の再デビュー作などをプロデュースしている。
また独立後、数10社の大手・中堅出版社からの仕事の依頼を受ける過程で、各社で微妙に異なる企画オーソライズのプロセスや制作スタイル、営業手法などに触れ、改めて出版界の奥の深さを知る。そして、それとともに作家と出版社の相性を考慮したプロデュースを心がけるようになった経緯も。
出版プロデューサーとしての企画の実現率は3割を超え、重版率に至っては5割をキープしているという、伝説のビジネス書編集者である。

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