cueのププププレゼン力

第16回 2016.11.23

休憩チャージ❤I LOVE 湯

海門寺温泉から美食を喰らう

翌日。昨夜はさまざまな人たちと一期一会の乾杯をさせていただき、地元の美酒美食を堪能し、気持ちよく酔ったところを、地元の学生さんに宿まで送ってもらいました。

二日酔いで気だるい身体を起こし、チェックアウトぎりぎりの時間に宿を出て、近くの海門寺温泉へ向かいます。入浴。ふーっ。身体を湯が包み込みます。さて、今日はどんなふうに過ごそうか……まずは腹ごしらえへとGO!

資生堂に入社したばかりの頃、オフィスが銀座だったこともあり、上司のクリエイティブディレクターや部長によく食事に連れて行っていただきました。「成田君。美味しいものを食するのも、クリエイターにとって大切なことです」と教えられたものです。長年キャリアを積み重ねてきた上司たちのもとで、仕事の経験はもちろん、舌もしっかりと磨かせていただきました。

この上司たちには、いわゆる“一見さんお断り”のお店もたくさん教えていただきました。庶民的なたたずまいのところから、いかにも高級そうな雰囲気のお店まで、本当にいろいろなお店がありましたが、そうしたお店で出されるこだわりの料理を勉強させていただきました。そのため舌は肥えていると思います。この別府の地でも思わず舌鼓を鳴らす「美味しい!」に出会うべく、街を歩いていきます。

ふらっと永石温泉で ふらっとspicaで

冷麺が有名な「六盛」で食し、お目当てのお土産である某タオル屋さんへと向かっている先に、「永石温泉」を発見。もちろん入浴。地元のお爺さんたちと楽しく語らいながら、食後の入浴を堪能する至福。日常に溶け込むノスタルジックな浴場がたまらなく愛おしい。歴史ある日常の風景であります。

温泉を満喫して、ふー、さっぱりした。と思ったら……ヤバイ! なんか素敵なお店がある! と大興奮。お店の名前は「spica」。東京にあったらきっとものすごい込み具合になるだろうな、と思えるお店です。道に面した大きなガラスを通して店内を覗いてみると、ちょうど陶芸作家のご夫婦の展覧会が行なわれていました。店内に展示されたモノたちは、ものすご~くセンスよくセレクトされているようで、いつまで眺めていても飽きが来ない。店内を満たす優しく美しい空気に、自然と気分もMAXウキウキしちゃいます。

お店の方に聞いてみると、LUCKY★にも展覧会は今日から始まったとのこと。ちょうど、大切な方へのお祝いの贈り物を探していたので、並べられた器を1つ1つ吟味して、大ぶりな作品を2つ購入させていただきました。手触りや風合い、大きさのバランスを考えて決めたこれらの器は、日常の風景にぴったり合いそうです。「あの人に贈りたい」と想いながらプレゼントを探すのは大好きであります。

お店のオーナーである高野さんがいらしたので、ご挨拶をし、少しお話しさせていただくことに。「こちらのお店はどんなSTYLEでされているのですか? 展覧会をする作家は、どんなふうに決めておられるのですか?」などなど……質問の嵐。そう、僕は一目惚れ❤したのです。「この空間、この場所で展覧会がしたい!」と思ってしまいました。やりた~い❤❤❤

以前の連載でも書きましたが、10月に東京・青山で開いた僕の展覧会『青山でヘンタイ』を、全国各地の素敵な場所でも開催したいと考え、その構想を練り始めた矢先だったのです。このお店は、まさにぴったり!? と思い、勝手にLOVE❤コールしてしまいました。『別府でヘンタイ』ぜひ開催したいです!

人は歩くことで未知のものに触れ、自然と思いが溢れて、次の扉が開いていきます。生きているこの時間を大切に使いたい、過ごしたい。一期一会❤LOVEでございます。

彼女を通して知りました

spicaでの楽しいひとときを終え、お目当てのタオル屋さんでお土産用と自分用のタオルを購入(ふらっと立ち寄った温泉に入るので、この街ではタオルは欠かせません)。そのあとは、「Platform 04」を数年ぶりに訪れました。タオル屋で買った同じタオルのイラストと一緒のTシャツをGETしたかったためです。

スタッフの方に、以前ここで働いていた宮川さんを知らないか? と聞くと、なんと知り合いのベトナム人と2人で別府市内にエスニック料理屋をオープンしたとのこと。宮川さんは、前回の別府旅行で最初に出会った方です。彼女を通じて、僕はこの地を好きになったのでした。

東京の美大で建築を学んで、別府に移住し、「Platform 04」に勤めたあとエスニック料理屋「スパイス食堂 クーポノス」を始めた彼女。美大出身の友人には、食の仕事に就く人が大勢います。パン屋を開業した友人夫妻や料理家、食にまつわるお店を経営している人もいます。アートクリエイションも料理も、“何かを生み出す”という点では同じです。料理の場合は、さらに「美味しさ」も付いてくるので、とても幸せなクリエイションだと思います。

「Platform 04」をあとにし、バスに乗って明礬温泉へ。入浴後、商店街で行なわれていた地元クリエイターによるポエトリー(詩)リーディング『おじぎ★ポエトリー ロック・フェス』というイベントを、舞台ソムリエとして観劇しました(いや~熱いです。ユニークで素敵な表現者を、何人も発見しました)。

早いもので、今夜は別府でのラストナイト。食べるなら……やっぱりお鮨。ということで街のお鮨屋にて地酒を楽しみながら、カウンター越しに大将と語らいました。美味しいお鮨をお腹いっぱいいただいたあとは、久しぶりの再会をしに、友人がやっている食堂へ。こうして、別府最後の夜は更けていったのであります。

LOVE❤別府 LOVE❤休息

11月6日。最終日となりました。昨晩泊まったのは別府湾沿いのホテル。朝早く起きて部屋の窓を開けると、今日も気持ちのいい晴天です。太陽の降り注ぐ海岸を散歩していて、ふと視界に入ったのはタワー展望台。別府の街を一望できる「別府タワー展望台」です。あの場所で書きたい! ということで展望台まで歩き、併設のカフェで、キラキラ光る海を眺めながら最高の気分で執筆することにしました。

なんて素敵なロケーションなのだろう。毎日、ここで考えごとをしたい。めちゃくちゃ贅沢な空間、時間です。空港行きの高速バスに乗る前、夕暮れどきにまた来ようと決めました。さてそれまでは……鉄輪温泉に向かうとしよう。

こうして――休息を兼ねた3泊4日の執筆&プランニングの旅を湯の国・別府で満喫したのでした。

普段は東京銀座で毎日を可愛く慌ただしく、クリエイションにアイデア出しにと励み&週末はプライベートな制作に「キュキュキュカンパニー」の運営にと、楽しく走っています。そんな日々から離れて、頭と身体をリフレッシュすべく非日常の地に旅に出かけたのは本当に久しぶり。日常から解放され、見知らぬ人に会い、その土地の料理を食し、その地の景色に触れることは、ものすごいインプットになります(たくさんの方に出会い、お世話になりました。本当にありがとうございました)。日常の中でアウトプットを続けてきた頭と身体に、新鮮な体験が染み渡りました。

これまで仕事や舞台をきっかけとした旅で、日本各地、北海道から沖縄の与那国島まで足を運んできました。日本は本当に美しい❤❤❤

大満足の執筆の旅に、また飛んでいきたいと思います。LOVE❤別府。LOVE❤休息。

さ、東京に戻ったら、やるぞ! クリエイション、クリエイション。

 


本連載が書籍に? 資生堂アートディレクター成田久氏が、銀座一丁目の森岡書店にて「ププププレゼン力」展を開催中! 2017年12月19日(火)~28日(木)まで。詳細はこちら

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プロフィール

成田 久
成田 久

アートディレクター・アーティスト。1970年生まれ。多摩美術大学・東京藝術大学大学院修了し、1999年に資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、ベネフィーク、HAKU、インテグレート、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
社外活動では13年NHK大河ドラマ「八重の桜」のイメージポスターのアートディレクションを担当するほか、多数のアーティストのCDジャケットやMVのアートディレクション等を手掛ける。更に雑誌「装苑」にて演劇レビューを連載するなど活動範囲は留まるところを知らない。

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