cueのププププレゼン力

第19回 2017.01.11

LOVE❤謹賀新年。一年の計は元旦にあり

インビテーションは僕のマジプレゼンテーション

さて、さきほども触れたように僕は年賀状を出さないのですが、展覧会のインビテーション(DM)は毎年送らせていただいています。

初のDMを創ったのは大学3年のとき……あれから早22年。昨年の『青山でヘンタイ』展に至るまで、いくつ制作してきたかわかりません。

DMは毎回、展示する作品のコンセプトを元にビジュアルイメージを考えてクリエイションします。たくさんの方にお越しいただきたいので、展覧会の説明をできるだけ詳細に記載するよう努めています。さらにここ数年は、DMで使用したコンセプチュアルなメインビジュアルを大きく引き伸ばしてプリントし、展覧会会場でダイナミックに展示するなどしています。

また、受け取った皆さまに「今回はこう来たか!」「わ! すごくステキ!」と感じてもらえて、展覧会に来られなかった方にも「お洒落なDMだな、行きたかった!」と思っていただける……そんなDMのクリエイションを心がけています。聞けば僕が発送した過去のDMをコレクションしている方もおられるそうで、とても嬉しく思います。

「たかがインビテーション」なのかもしれませんが、それでも、受け取った瞬間にいい印象を与えられないと展覧会にまで足を運んでいただけません。そのため、毎回ハッと素敵に感じていただけるコンセプチュアルなクリエイションを楽しんでいます。

人に何を伝えるのか? 伝えられているのか?

ただ、若い頃は猛烈にカッコつけていて、DMもトリッキーな形・デザインが多かったように思います。装いに凝り、形も「定形外」なので1枚につき120円以上の発送費がかかっていたはず。そのうえ、肝心の展覧会の説明がまったく記載されておらず、どんな主旨のイベントなのかさっぱりわかりません。もちろんビジュアルはお洒落なものでしたが、若気の至りでカッコばかりを追った、不親切なインビテーションだったと思います。

その後、資生堂でアートディレクター経験を積むうちに、「人に何を伝えるのか? 伝えられているのか?」という考えを持ち始め、そのポリシーは徐々にクリエイションにも反映されるようになりました。

これにともない、展覧会のインビテーションは定型サイズのハガキに変更することにしました。ビジュアルのみに偏ることなく、「しっかりと相手に伝わる」ことに重点を置いて僕の世界★を表現した、親切なインビテーションをお送りしております。

一目で人を惹きつけ、わかりやすくメッセージが伝わるデザインを、制作予算やスケジュールなどの制約条件も考慮しながら創り上げるためには、相応のクリエイションスキルが必要となります。同時に、仕事として自分のデザインを世に送り出すことに対する責任も、強く求められるのです。

「美しい」をお贈りしたく

年賀状の他に、新年のご挨拶としていただくことが多いのは「カレンダー」です。今年も、大変立派なものからキュートなものまで頂戴しました。ありがとうございます。この、カレンダーのクリエイションも、実は3回ほど経験したことがあります。

資生堂では毎年、化粧品をご愛用いただいている一部のお客様へ、感謝の気持ちを込めてカレンダーをお贈りしているのですが、そのカレンダーを自社クリエイターがクリエイションしているのです。

カレンダーのタイプは2種類。資生堂の顔となっている女優・モデルが出演する「モデルカレンダー」と、スケジュールなどを書き込みやすい実用的な「日玉カレンダー」の2つです。どちらも、壁掛けタイプと卓上タイプがあります。

美の日本の12ヶ月を装わせて

僕が携わったのは、モデルカレンダーで2度、日玉カレンダーで1度です。それぞれデザインを担当したのですが、モデルカレンダーでは、モデルを6名起用し、12ヶ月ぶんのビジュアルをそれぞれクリエイションしました。

このモデルカレンダーのテーマは「月を装う」。1度目は、モデルが着用するブラウスをキャンバスに見立て、そこに「絵」を表現するという企画です。まず各月に合った絵柄を僕が描き、それを刺繍作家の橋本栄子さんが華やかに刺繍で表現し、コスチューム制作の小野りかさんが美しいブラウスに仕上げてくれました。

こうして、それぞれの“季節”を着た6人のモデルが12ヶ月を彩るビジュアルカレンダーが完成。1月は富士山、2月はバレンタイン、5月は鯉、8月は花火、9月はお月見、12月はクリスマスツリー……オリジナルオーダーメイドのコスチュームはとても可愛く、手が込んでいて、圧巻でした。美しい。

また、2度目は「色」に重点を置きました。各月を象徴する色のヘッドアクセサリーをアーティスティックにクリエイションし、モデルの顔をクローズアップしたカレンダーに仕上げました。ヘッドアクセサリーはペーパーをカッティングしたもので、アーティストの草薙涼子さんがセンスよくダイナミックにクリエイションし、モデルは伊東美咲、弥生、松浦亜弥、鈴木えみ、美波、仲間由紀恵の6名でした。

この2度目のクリエイションでは、前回の経験もあってヘアメイクのディレクションやモデルへの指示をスムーズに行なうことができ、彼女たちのいい表情で彩られた素敵なビジュアルカレンダーがクリエイトできたと自負しています。

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プロフィール

成田 久
成田 久

アートディレクター・アーティスト。1970年生まれ。多摩美術大学・東京藝術大学大学院修了し、1999年に資生堂入社。宣伝・デザイン部に所属。アネッサのCMで蛯原友里を起用し、楽曲にBONNIE PINK「A Perfect Sky」を使用したことで一躍話題に。そのほかマシェリやマキアージュ、ベネフィーク、HAKU、インテグレート、unoなど多彩なブランドのアートディレクションを担当。更にTSUBAKIで初めて男性キャストとして福山雅治を起用するなど、資生堂商品のブランディングに大きく貢献する。
社外活動では13年NHK大河ドラマ「八重の桜」のイメージポスターのアートディレクションを担当するほか、多数のアーティストのCDジャケットやMVのアートディレクション等を手掛ける。更に雑誌「装苑」にて演劇レビューを連載するなど活動範囲は留まるところを知らない。

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