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上司は許しても人事は絶対に許さない! 社内提出物の期限を破れば昇格・昇給はない!

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ルールを破る社員は、他部署からもブーイング

提出物の期限を破る、何度言っても提出しない、記入ミスが多い。こうした社員は、評価会議で必ず問題になります。たとえ人事が何も言わなくても、管理部門から「あの人どうにかなりませんか?」「すごく迷惑しています!」と大ブーイングが起きます。
さらに「うちは苦労して期限を守らせているのに、そっちはどうなっているんだ!」と、他の真面目にやっている部署からもクレームが出ます。

となると、成績優秀で上司からは高く評価されている社員であっても、上司もかばいきれなくなり、社長や役員からも是正が入り、厳しい評価が下されるのです。

社員の評価は、業績だけで決まるわけではありません。「成果」と「行動」によって、総合的に判断されます。
業績がよければ「成果」の評価は高くなりますが、「行動」に問題があれば、全体的な評価は低くなります。「行動」を判断する基準は多岐に渡りますが、提出物の遅延や書類の不備は以下に該当します。

・会社のルールや規則を破る、約束・期限・時間を守らない。
・人に対してストレスや不快感を与える
・謝らない、反省しない、自分の非を認めない
・周囲に協力せず、他者を助けない
・ケアレスミスが多い、現状を改善する工夫をしない
・状況を客観的にとらえず、主観的な理解にとどまっている

要は、自分のことしか考えていない、組織に不適格な人間と判断されるのです。

昇給も昇進もできず、将来の道は閉ざされる

業績のいい社員なら「成果」によって支給額が決まるボーナスが減額されることはないかもしれません。しかし「行動」に問題がある場合は、基本給を抑えて昇給させない、という措置が取られます。

また、組織に不適格な人間を昇進させる会社はまずありません。組織のルールを守らず、他人にストレスを与え、周囲に協力しない。そういう社員を昇進させたら、会社がそれを認めることになってしまうからです。

業績がよければ、たとえ問題のある社員でも会社側も雇用しているメリットがあります。しかし、業績が落ちたら、会社にとって有害なだけの存在と見なされるようになります。

その後に待っているのは、退職勧奨やリストラです。

「経費の精算なんて、ちょっとくらい遅れても平気」

そんな風に甘く考えていると、昇給も昇進もできなくなり、絶望的な未来が待っています。経費精算に限らず、異動希望などについて意思確認を行う「自己申告制度」のアンケートなどに記入がない社員も、「やる気なし」と判断されます。
たった一枚の書類であっても、組織で働くうえでは極めて重要なのです。

仕事は実力がすべて、提出物で判断されるなんてバカバカしい。そう思う人もいるでしょう。それなら、会社を辞めて独立すればいいのです。他人に迷惑をかけても許されるほどの業績をあげられる人なら、独立しても成功できるかもしれません。
(でも本当は、独立した方が、このような「お約束事」はきっちり守らないと、仕事が来なくなってしまうんですけどね)

いずれの道を選ぶにしても、提出物の期限を守って、不備のないように記入しましょう。
些細なことかもしれませんが、そんなことがあなたの将来のためでもあるのです。

次回に続く

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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