人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

管理職でなくても、「若手の育成」で会社の評価を得るちょっとしたコツ

能力開発に必要なのは「コンピテンシー 」「スキル・ナレッジ」

キャリアビジョンとライフビジョンを確認したら、本人の志向に添った能力開発をしていきます。ここで重要なのは「コンピテンシー」と「スキル・ナレッジ」です。

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③コンピテンシー
コンピテンシーとは、成果につながる行動です。たとえば、1人で仕事が回せるようになり「今度はチームを任せられるようになろう」が次の目標だったら、チームのPDCAを回す行動が必要になってきますよね。目標設定、計画立案、進捗管理といったコンピテンシーが必要ですし、チームワークや動機づけ、傾聴力も求められます。

次に獲得すべき行動を具体的に示したら、ティーチングとコーチングを交えて指導していきます。ティーチングとは、まずは自分でやってみせ、本人にもやらせてみて、修正し、身につけさせていくこと。コーチングとは、都度「どう思う?」と問いかけながら、本人に考えさせること。

社員には等級ごとに求められている行動があります。次に必要となる具体的な行動を示して「次はちょっとプレゼンうまくなろうか」「問題分析もできるようになろうか」などとアドバイスしながら、ティーチングやコーチングをしていきます。

④スキル・ナレッジ
スキルとは技術、ナレッジとは知識。成果につながる行動をしていくためには、そのための技術や知識を身につける必要があります。

たとえば営業には、アプローチ、ラポール、ヒアリング、企画提案、クロージングといった基本的なスキルや商品や顧客に関する知識が必要です。掴みの会話から入り、お客様と共感し、自己紹介を簡潔に行い、相手の課題を掘り下げていく。このような専門的な技術や知識で足りないものはないかを確認し、不足しているものがあったら補っていく。

スキルに関していえば、「自らやってみせる」と「本人にやらせてみる」が特に大事です。たとえば、営業同行で自らやっている姿を見せて本人にもやらせてみる。できていることは褒める。「いいじゃん、センス持ってるね」と褒め、足りない点は「ここはもっと頑張ろう」と指摘して励ます。

ティーチングは、褒めるべき点を見つけること、コーチングは「どう思う?」と都度問いかけることが大切です。年を取ると、どうしても教えたがりになり、ああしろ、ここしろと言いがちです。「こういう考えもあると思うけど、どう思う?」と投げかけ、本人に考えさせることが重要です。

「モチベーション」のリソースは何か?

⑤モチベーション
最後に、もうひとつ大事なポイントが「モチベーション」です。モチベーションとは、仕事に意欲を持って取り組むための動機ですね。モチベーションには、「仕事型・職場型・組織型・生活型」の4つのリソースがあると言われています。

<モチベーション:4つのリソース>
・仕事型…仕事の目的や内容など、仕事そのもの
・職場型…上司の評価、仲間との協働や競争意識
・組織型…組織への帰属意識、組織内での地位や責任
・生活型…家族からの期待や応援、生活の向上

その若手が仕事をするための動機となっているものは何か。そのリソースを知っておくことも、若手の指導においては特に大事なポイントです。

仲間と働くことが楽しい職場型の若手に、仕事の目的や内容を伝えるだけでは響きません。プライベートが大事な生活型の若手に、組織への帰属意識を力説してもモチベーションにはなりません。その若手は何のために働いているのか、どういうことにやる気を感じるのかを理解し、それに沿った助言をしましょう。

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キャリアビジョン、ライフビジョン、コンピテンシー 、スキル・ナレッジ、モチベーション、このように5つに分解して考えると若手の指導がしやすくなります。

知識も技術もあるけど、行動が不足している。動機はあるけど、知識や技術がない。仕事上の目標はあるけど、私生活で気になることがあり仕事に集中できない…。

若手が成長できない場合、どこかに必ずエラーがあります。その原因は、仕事内容なのか、人間関係なのか、動機なのか。技術や知識が不足しているなら、具体的な指導をしたり、役立つ本を薦めてみる。人間関係だったら相談に乗ってあげる。モチベーションが阻害されているのなら、その理由を探って一緒に解決策を考える。

指導者たる者、「なんとなくダメなんだよ、こいつ」ではNGです。相手の話を聞いて、5つの要素に分解し、適切なアドバイスをする。若手の指導は、このようにしてみてください。また、何かを教えるときは、簡潔に伝えることも忘れないようにしましょう。

次回につづく

 

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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