社員成長の決め手は、人事が9割

「管理職」に相応しい人材に共通するたった2つのポイント

2023.12.27 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第15回

困った上司にならない、リーダーに必要な条件とは?

管理職は、どんな人材であるべきか。人事担当者になる人は、考えておかなくてはならない重要な問題です。人事部門には管理職になる人を選んだり、昇進の判断をしたりする決定権はない会社が多いのですが、それに相応しい人材を見抜く目は必要になります。なぜなら経営者や各部門のリーダーが誤った判断をしそうになったときは、「ちょっと待ってください」と再考を促す役割を担っているからです。

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では、管理職にはどのような人材が相応しいのでしょうか。ある企業のアンケート調査では、「困った上司」の例として次のような特徴が挙げられていました。

人によって態度を変える、いざというときに部下を守ってくれない、指示・指導が曖昧、チームを引っ張る能力が低い、部下の失敗に厳しい、セクハラ・パワハラがひどい、上からの命令をそのまま部下に伝える、仕事に対する知識・スキルが低い、過去の体験だけで物事を判断する、明確な目標設定をしない、根性論・精神論で仕事を進めようとする、仕事への意欲やビジョンがない、仕事の裁量を与えてくれない…。

たしかに困った上司ですよね。部下としては腹立たしいでしょう。とはいえ、管理職になる前から、これらの傾向があるかどうかをすべて見極めるのは困難です。そこで私は、組織のリーダーの条件として特に2つのポイントに注目しています。

管理職に必要な条件①「中長期的な目線を持っているか」

まず1つは、中長期的な目線を持っているか。組織のリーダーには、ビジョンと戦略を策定する役割があります。3年後、5年後の組織のあるべき姿を思い描き、それを実行するための具体的な方針を示す。

「この部署は3年後にはこうしていこうぜ」といった指針を示し、「だから1年目には〇〇、2年目には〇〇をしよう」と具体的な行動を指示する。中長期的な視野を持ち、こうしたことができるか。これが管理職選びの大事なポイントの1つです。

上記のアンケートでも「困った上司」の特徴として、チームを引っ張る能力が低い、明確な目標設定をしない、仕事への意欲やビジョンがない…という声が挙がっていました。これらは、中長期的な目線がないことに原因があると考えられます。

ビジョンや戦略がないから、チームを引っぱることができない。明確な目標設定もできない。仕事への意欲もないように見える。管理職に相応しいのは、「3年後、5年後にはこうしていきたい」という中長期的な目線を持つことができる人材です。

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中長期的な視点を身につけるためには、ロジカルシンキングの勉強が必要です。また、マネジメントに関する知識や社会動向などを知っておくためには、ビジネス書や新聞を読み、絶えず知識をアップデートしていかなくてはなりません。

という意味では、勉強を欠かさないことも管理職選びの条件の1つとして挙げられます。管理職は、会社の資産である「ヒト・カネ・モノ」を預かります。寸暇を惜しんで勉強するような人でなければ、組織のリーダーを任せることはできません。少なくとも通勤電車でスマホゲームをやっている人には無理なのではないでしょうか。

もしそういう人材がいないのだとしたら、「それをやれ」と言わなくてはなりません。管理職は、仕事の目的をメンバーに伝えることも大事です。特に今の若い世代は、業務における意味やメリットを伝えないと積極的に動かないと言われています。中長期的な目線を持ち、ビジョンや戦略を示すことはますます重要になっています。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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