社員成長の決め手は、人事が9割

「経歴・学歴詐称」「モンスター中途社員」etc…押さえておくべき採用リスク

2024.01.24 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第17回

ミスマッチを避けるために注意すべきこと

経験豊かな採用担当者でも詐称やモンスター社員を100%見極めることは難しく、採用は常に失敗と背中合わせです。「人は採ってみないとわからない」というのが人事業界の共通認識になっていますが、石橋を叩きすぎると誰も採れなくなってしまうので採らざるを得ない場面もあり、採用はある種の賭けでもあります

とはいえ、「しかたないよね」で済ますことはできません。採用したら、たとえダメでも解雇することは困難です。モンスター社員が入社したら、他の社員の人材流出も引き起こします。ミスマッチの確率は極力下げなくてはいけません。

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まずは「求める人材像」を明確にし、面接でしっかりとコミュニケーションを取りましょう。中途採用の場合、特に重要なのは「前職の退職理由」です。前職を辞めた理由を会社や他人のせいばかりにする人は採用しない方がいいでしょう。他責型の人材は経営者が最も嫌うタイプであり、入社後にモンスター化しやすい傾向があります。

会社都合で繰り返し退職している人も、注意してください。原因は本人の会社選びに問題があると考えられ、自社でもミスマッチが起こる可能性大です。

また、「質問はありますか」と聞いて「大丈夫です」と答える人も採用は避けたほうがいいでしょう。本当に自社で働きたいと願っている人は、当然何か聞きたいことがあるはず。この会社に入って何をしたいのか、そのために何ができるのか。その人がやりたいことを深掘りし、興味関心の対象を探っていきましょう。面接で応募者にたくさん質問してもらうことは、採用のミスマッチを避ける有効な手段の1つです。

面接だけでは見抜けない。適性検査、試用期間も活用しよう

ただし面接だけでは、採用のミスマッチを完全に防ぐことは困難です。経歴詐称などは巧妙に嘘をつかれることが多く、基本的には騙されます。客観的な分析をするためには、SPIなどの適性検査を実施することをおすすめします。

適性検査とは、応募者の知能や性格などを客観的に分析するための診断ツールです。新卒の採用活動で使われるイメージが強いかもしれませんが、中途採用はもちろん、配属先の検討や職務の適性など、人事業務のさまざまな場面で活用されています。

適性検査にはさまざまなツールがありますが、「能力検査」と「性格検査」の2種類に大別できます。能力検査は、仕事に必要な知的能力や一般常識、思考力などを確認する検査。性格検査は、応募者のパーソナリティや価値観などを可視化する検査です。

これは両方やったほうがいいでしょう。特に「性格検査」の結果には注視してください。人の性格に良い悪いはありませんが、職務への適性や自社の組織風土に対する「合う・合わない」はあります。何らかの異常値があった場合は注意が必要です。

また、3〜6ヶ月程度の試用期間も設けることもおすすめします。労基法上の試用期間は2週間のため、この期間を過ぎると不採用にすることは難しくなりますが、ある程度の時間を設けたほうが応募者の適性を見極めやすくなります。

契約社員として採用して、半年間は有期雇用、その後に無期雇用に変える会社もあります。「お試し期間」を設けるのは有効な施策ですが、今の雇用情勢では半年間の契約社員という条件で人を採用するのは難しいかもしれません。試用期間は、大半の人が受け入れているので、そういう形でリスクヘッジをしたほうがいいでしょう。

いずれにしても「求める人材像」に100%マッチする人は難しいため、絶対に譲れない線を決め、それをクリアすることを採用条件にするのが最善の手段と考えられます。なおかつ、卒業証明証や前職の退職証明書、源泉徴収票などの証明書類を必ず提出してもらい、しっかりと精査し、採用リスクを軽減していきましょう。

次回につづく

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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