社員成長の決め手は、人事が9割

多くの会社が陥りがちな「無意味な新卒採用」とは――

2024.03.13 公式 社員成長の決め手は、人事が9割 第20回

新卒採用をするための条件とは?

新卒採用は、ただなんとなく始めるのはおすすめできませんが、明確な目的があるのならやってみる価値はあります。ただ、そのためには社内の環境をしっかり整えておくことが必要です。新卒採用をするなら、次の条件について確認してみてください。

① 入社後のキャリアステップはできているか
新卒採用を始めるにあたって重要なのは、「入社後のキャリアステップ」はできているか。キャリアアップのための道筋が明確に示されていないと、優秀な人材ほど「この会社にいても成長できない」と思ってすぐに辞めてしまいます。新卒採用をするのなら、キャリアアップの道筋を示す等級制度のようなものを整えておくことが必要です。

② 研修やOJTなど、育成の仕組みはできているか
研修やOJTなど、人材育成の仕組みを整えておくことも大事です。OJTは新人を育てることによって中堅が育つメリットもありますが、明確な指針もなく教育担当を任せてしまうと現場の社員が疲弊してしまいます。OJT担当者の業務は軽くする、人材育成を評価項目に加えるなど複眼的に捉えて、人材育成の仕組みを整備しましょう。

③ 中長期的な人員計画はできているか
コア人材を育てるためには、減耗率も考えておく必要があります。新卒社員は3年以内に3割が辞めるのが定説ですが、5割、6割というケースも少なくありません。優秀な人材を採用すればするほど、彼ら・彼女らはその優秀さゆえ「どこにでも行ける」わけで、離職リスクは高まります。10年後には全員が辞めている場合もあります。「5年後、10年後の社内の人員構成はどうなっているのか」「各部門にはどのような人材が何人必要になるのか」など、中長期的な人員計画を改めて練り直したうえで、採用人数を決めていきましょう。

時間もお金も手間もかかるのが、新卒採用です。よくよく考えて始めないと、すべてが無駄になってしまいます。すでに始めている企業の人事担当者の皆さんも、「ひょっとしたら自分たちが楽しいからやっているだけなんじゃないだろうか」と振り返ってみてください。

面接官の選定で気をつけるべきこと

新卒採用を始めるなら、面接官の選定も重要です。新卒社員に入社理由を聞くと「面接官が良かったから」「会社の雰囲気が良かったから」と多くの人が答えています。採用は仕事内容や待遇だけで決まるわけではありません。結局「人と人との相性」が最後の決め手になるのでしょう。社会人経験のない学生は、特にその傾向があります。

では、どのような人材が面接官に適しているのでしょうか? まずは「第一印象がいい人」。清潔感があり、誠実さが感じられ、礼儀正しいことが第一条件となります。

次に「コミュニケーション能力が高い人」。面接官は相手の話を聞くのがうまい人でなくてはいけません。もちろん自社の魅力について客観的に話せることも重要です。会社や経営者のことをよくわかっていて、なおかつ会社が好きな人が望ましいでしょう。

そして「感情表現を意識的にできる人」。応募者に対する好き嫌いが表情に出てしまう人や自分の思った答えが返ってこないとイライラする人は絶対にダメです。学歴や容姿などにコンプレックスがなく、誰でもフラットに接することができる人が望ましいでしょう。

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さらに、一定の優秀さやロジカルさも必要となります。面接官のレベルが低いと、レベルの高い人を見抜くことができません。優秀な人材を採用するためには、面接官も優秀な人材であることが求められるのです。優秀な営業マンのような人が、面接官としては理想的でしょう。

私は、人事も営業職と考えています。社外に対するのが営業職、社内に対するのが人事です。入社を決断させるためには、営業力が必要なのです。新卒採用に踏み切る場合は、このような観点からも人事担当者の選定を見直してみてください。

次回につづく

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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