小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

「96敗」からの「再起」、
そして「躍進」の2019年

目指すのは悲願の優勝のみ。
チーム一丸となって戦い抜く

――監督に復帰した昨年と、復帰2年目となる今年とで、監督ご自身の心境の変化などはありますか?

小川 昨年、監督になったときには、前年に96敗していたこともあって、口では「優勝します」と言っていても、実際にそこまでの強い思いがあったかというと、そこにリアリティはありませんでした。でも、今年は前年2位ということで、周りからも「さらに上を」と高い結果を求められているので、プレッシャーというわけではなく、「さらに上を」という思いは、僕自身の中でも強くなりましたね。

――一昨年はケガ人が続出し、さらにその穴を埋める若手もなかなか現れませんでした。しかし、今年はポジション争いも白熱し、一気に選手層が厚くなったように思います。監督はどのように感じていらっしゃいますか?

小川 確かに選手の層は厚くなったと思います。それでもレギュラー選手はまだまだ元気で活躍しています。ただ、こんなことを言ってはなんだけど、レギュラー選手たちの年齢層が非常に高いのも事実です。だからこそ、若い選手にはもっともっと自分をアピールしてほしいと思っていましたが、今年のキャンプでは期待を持てる若手選手が何人か出てきてくれたので、その点はよかったと思っています。

――具体的には誰でしょうか?

小川 野手で言えば、塩見(泰隆)であるとか、廣岡(大志)であるとか、村上(宗隆)ですね。去年と比べても、彼らはずいぶん変わったと思いますね。とはいえ、たとえば「塩見ありき」でスタメンを起用しようとは思っていません。レギュラー選手の調子がいいのに、「塩見のために」という理由で起用することはありません。例えば塩見ならば、足が武器ですので、代走や守備固めで起用していく中で、しっかりと結果を残すこと。その上で、レギュラー選手の調子が落ちてきたり、何かあったときにすぐに代われるように準備をしていてほしいと思っています。

――先日、「開幕一軍メンバー、そして開幕戦のスターティングメンバ―は、直前まで悩んでいる」と伺いました。

小川 ある程度は固まっているんです。ただ、悩んだのはキャッチャー、ショート、サードでしたね。キャッチャーに関しては2年目の松本(直樹)が伸びてきました。スローイングに関しては高いレベルで結果を出しています。サードは同じく2年目の村上が順調に成長しています。ショートは去年の開幕時同様、西浦(直亨)もいいし、廣岡もさらに成長しているし、悩みどころでしたね。

――その際の決め手となるのは何でしょうか?

小川 ひとえに他の打順との兼ね合いになると思いますね。昨年同様、一番の坂口(智隆)から、五番の雄平までは今年も機能しています。そうなると、八番・キャッチャー、九番・ピッチャーを除いた、六番と七番がポイントになってきます。たとえば、そこに「サード・村上」「ショート・廣岡」が続くと、完全に攻撃重視の打線になります。でも、はたしてそれでいいのかどうか。たとえば、村上にしても、廣岡にしても、仮に打率2割5分だとしたら、残りの7割5分は打てないわけです。1点を取りに行く、という場面の中でその2割5分に賭けるのは良策とはいえません。打線はあくまでもバランスですから……そのあたりが悩みどころですね。

――本連載のスタートは開幕戦当日です。小川監督が悩んだスタメンがどうなっているのか、期待して待ちたいと思います。投手陣については、次回改めてじっくりと伺います。最後にシーズン開幕の今の意気込みをぜひ聞かせてください。

小川 先ほどもお話ししたように、選手たちの頑張りによって、去年は2位に終わりました。当然今年は、さらにその上を目指して戦っていきます。みんながその思いを持って開幕することが第一条件だと思っています。そのためにも、開幕戦勝利、さらにスタートダッシュは絶対条件だとも考えています。そういう意味でも、まずは阪神タイガースとの開幕3連戦は必死に勝ちにいきます。最低でも2勝1敗で勝ち越しをして、神宮に戻ってきます。みんなが一丸となって戦えば、その先には「優勝」という大きな目標も見えてきます。みんなで戦い抜いていきます。ぜひ、ご声援をお願いいたします!


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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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