小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

好調を支える新しい選手の台頭――
采配ズバリ「選手起用」の妙

「選手のミスではなく、監督の責任」、
この発言に込められている真意とは?

――「各球団とひと回りした頃」というと、4月半ば、東京ドームでの対巨人3連戦辺りになりますね。

小川 そうです。このときの巨人3連戦で一度線引きをして、改めて村上については判断しようと思っていました。「判断」というのは、このままスタメンとして起用し続けるのか、一軍に残しながら代打として使うのか、二軍に落として経験を積ませるのかを判断しようということです。ところが、このときの巨人戦で(4月12日)村上は菅野(智之)から2本ヒットを打ったんです。そして、14日には第3号ホームランを打って、「もうしばらく起用しよう」と思っていたら、(16日の)松山では第4号スリーランを打った。これはもう、使わざるを得ないですよね(笑)。

――一方の廣岡選手は、開幕3戦目にはスタメンから外れ、4月19日にはファーム行きを命じられました。その直前の17日の対阪神タイガース戦では、同点で迎えた9回にスクイズ失敗に終わった場面もありました。

小川 もちろん、スクイズを失敗したから二軍降格を命じたわけではありません。彼の場合は、一軍で出たり出なかったりするよりは、きちんとファームで調整した方がいいだろうという判断です。そもそも、あのスクイズは廣岡の責任ではなく、サインを出した僕の責任ですから。廣岡は自分のすべきことをしただけです。必死になってボールに食らいついた。でも、結果的に空振りになった。これは結果であって、彼の責任ではない。空振りというリスクを覚悟した上でサインを出して、結果が出なかった。それも含めて、サインを出した監督の責任です

――これまでの監督の発言を聞いていると、「選手のミスではない、自分のミスだ」という発言がしばしば聞かれます。これは意識的に行っているのですか?

小川 前回監督だったとき(2011~2014年)は、その点を強く意識して、「自分のせいだ」とばかり言い続けていました。ただ、今回監督に就任した際には、「采配についてはいちいちコメントをする必要はないのかな?」という思いを持っています。要は試合に負けたのは監督の責任であり、勝つのは選手の頑張りであるのは当然のことだからです。だから、それをいちいちコメントする必要はないのかなと考えています。ただ、選手をかばう発言は、やっぱり必要なときがあるとは思っています。「かばう」というのは、ちょっと偉そうな言い方ですけど……。

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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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