小川ヤクルト 躍進へのマネジメント

好調を支える新しい選手の台頭――
采配ズバリ「選手起用」の妙

伝えるべきことがあるときは、
慎重にタイミングを見計らう

――たとえば、かつての野村克也監督は選手へのメッセージを直接本人に言うのではなく、しばしばマスコミを使って伝えるということをしていました。小川監督は、どのような手段で選手にメッセージを伝えていますか?

小川 僕の場合は、直接本人に伝えるようにしています。というのも、僕自身が現役時代にマスコミを通じたコメントを読んで、その発言を気にして、その後に悪い影響が出てしまうタイプだったので(笑)。ただ、「どのタイミングで、どのような言葉をかけるか?」ということは、すごく悩みます。その選手の性格やタイプによっても違うし、みんなが見ている場面で伝えるのはよくないと思うので、そのタイミングを計ることもいろいろ考えます。

――監督自身の中で、「これは声をかけるべきだ。この場面はその必要はない」という判断の基準はあるのですか?

小川 その点に関しては、いつもすごく迷っています。でも、行かねばならないときには自ら行って、必ず言葉をかけます。だから、迷ったときは行かないことの方が多いですね。でも、「行かなきゃいけない。きちんと言葉を伝えなければいけない」という思いは常に持っていますね。

――あのスクイズについて、廣岡選手には何か声をかけたのですか?

小川 そうですね。「スクイズのサインを出して悪かったな」ということと、「お前を信用してあげられなくてすまなかった」と。やっぱり、過去を引きずるのではなく、新しい気持ちで新しい試合に臨んでほしいというのが、監督としての率直な思いですからね。ただ、こちらが勝手に気を遣っているだけで、今の世代の若者は、そんなに引きずることなく、すぐに気持ちを切り替えられるのかもしれないですけどね(笑)。

――廣岡選手はどんなタイプなのですか?

小川 翌日の新聞でも、「決して当てられないボールじゃなかった。僕がきちんと(バットに当てて)転がしていれば勝てた試合だった」というコメントを残していたように、彼は彼なりに思うところがあったようだし、本人なりにいろいろ考えたことと思います。

――5月も中旬を迎えました。最後に、改めて今後の戦い方についてお聞かせください。

小川 ゴールデンウイークの連戦も終わって、選手たちの疲れもピークに達しています。その中で、開幕からいい流れできて、ここまでしっかりと戦えてきていると思います。これからも、とにかく自分たちのできることをきちんとやる。そうすれば、後から結果がついてくる。そう信じて、目の前の試合にベストを尽くして頑張るだけです。


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プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

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