人を育てるコツ

上司の言うことを聞かないが、成績は優秀な部下への対応

2017.01.10 公式 人を育てるコツ 第3回
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上司の事情を押し付けると部下は離れていく

こんにちは。ロールジョブの大岩俊之です。先日、新規開拓の営業が多く、実力主義を旨とする企業で、社員のモチベーションアップ研修を実施してきました。定時後に研修を開催するため、時間は短めの2時間です。この研修では、過去1年間を振り返り、自分自身のモチベーションの変化をグラフに書いてもらいます。その研修中に、気になる方(Hさん)がいました。

Hさんは、ほとんど変化のないグラフを書いており、他のメンバーにシェアする場面でも、「特に何もありませんでした」という回答しかしません。その後、次のテーマに移り、5年後、10年後の未来の夢を描き、やりたいことを書いてもらうワークをしたのですが、ここでも、ほとんど具体的な話は出てきませんでした。

Hさんは、研修中の受け答えは消極的ですし、個人でワークに取り組んでもらう時間でも、ほんの少ししか紙にアウトプットされていません。この会社の社長に、もっと研修参加に対する強い意識づけを、事前にお願いしておけばよかったと反省しつつ、上司の立場になって考えると、「Hさんは扱いにくい社員だろうな~」と考えながら研修を進めていました。

私は、Hさんの研修に取り組む姿勢から、「上司の言うことを聞かないタイプの社員」であるのは明らかなのですが、もしかしたら、「営業成績は悪くはないが、上司の言うことを聞かないタイプ」かもしれないと推測していました。

研修終了後、マネージャーと「振り返り」をする機会があり、研修中に気になったHさんの様子をお話ししました。やはり、マネージャーが口にされたのは、「営業成績は悪くはないが、指示や指導がしにくい社員」とのことでした。上司としても、「何もしなくても営業成績を上げてくるので、あえて何も言わず、そのままにしておいた方がいい」との考えで、あまり深入りはしていないようです。

そんなとき、私が会社員で課長職であったときの部下であった、Nさんという社員のことを思い出しました。

Nさんは非常に明るく活発で、お客さまからの評判も抜群でした。営業成績はよく、放っておけば、こちらが手をかけなくても定期的にお客様のところを訪問し、信頼関係を築いて案件を取ってきます。ですが、会社からの指示、上司からの指示が納得できるものでないと、一切、従おうとしないのです。

私も営業担当者だったころは、Nさんと同じように、自由に営業活動をするのが仕事のスタイルでした。営業成績はよく、自分でいうのもナンですが、お客様の評判も上々でした。ただ、会社や上司が「会議だ!」「資料だ!」「報告書だ!」と、管理するようになると、急に、テンションが下がって、やる気がなくなるという困った社員でした。

私が、管理されたくない「自由気ままな営業担当者」であったにもかかわらず、自分が課長職になると心配になり、部下の管理をしていたのです。会社からの指示、もしくは、上層部からの指示があると、どうしても、その指示を部下に徹底させようとして、いろいろと管理をしてしまっていたのです。

会社や上層部の指示としては、会社で新しく扱う商品が増えて、「その商品の商談件数が評価の対象になる」「新規開拓の指示が出て、新規開拓の件数が評価の対象になる」「営業レポートの内容や文章量の多さが、評価の対象になる」などがありました。

私は、課長である以上、部下に会社からの指示を徹底させなければなりません。月1回、上層部である役員と部長を含めた営業会議があります。私は、そこで発表する新商品の商談件数や新規開拓の件数が、目標値に達しているか気になり、事前に、部下の進捗を把握するための会議が多くなっていました。

部下の中には、事細かに私が管理することを不満に思っていない人もいました。ですが、Nさんのように自立しており、上司から管理されたくない人間からすると、「成果はあげているのだから自由にやらせてほしい」という気持ちになり、当然面白くありません。そんな部下の気持ちと向き合うことなく、私が会社や上層部の顔色ばかり気にしており、結果的に会議や書類を増やしてしまっていたのです。

Nさんは、会社や上層部から降りてきた私の指示に、従おうとはしません。管理したい私と、管理されたくないNさんとの間に亀裂が生じ、Nさんとの関係も悪くなり、営業成績も下がっていきました。Nさんの成績が下がれば、課としての業績も下がります。このままではよくありません。

そこで、私は、このように考えました。

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プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

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