こんな仕事絶対イヤだ!

日本語ラップの原点?――粟餅の曲づき

2017.12.24 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第87回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

日本語ラップの原点?

粟餅(あわもち)屋は、江戸の縁日でよく見かけるお店であった。にぎやかな場所ゆえ、いかにうまく客寄せをやるかが繁盛のための要点だった。『粟餅の曲づき』は、その成功例と言うことができよう。“曲づき”というのは一輪車の曲乗りなどと似た意味合いで、芸を交えながら餅をつくこと。餅をつきながら杵(きね)をぽーんと空中に投げたり、杵が振り下ろされる瞬間にこね手が餅を全部臼から取り上げ、カツンと空の臼をつかせるミニコントじみたことも行なわれた。

そのうえ、さらなるパフォーマンスの一環として韻を踏んだラップ調の歌もうたった。「そりゃいくやれつく、つくつくつく何をつく、麦つく米つく稗(ひえ)をつく、証文手形に判をつく、旦那の尻へ供がつく、女郎はお客の襟につく」といった具合。これで、向かいのライバル店とフリースタイルバトルなんかやったりしたら、さぞかし盛り上がったことだろう。ラップでライバル店の食材をけなしたりとか、私生活や身体的コンプレックスを攻めたりとか。

そんなこんなで餅がつきあがると、今度は適度な大きさにちぎった餅を3メートルほど離れた容器に次々と投げ入れる。これをテンポよくノーミスで続けるわけだから、これまた観衆の目は釘付けという寸法だ。餅を投げ入れる容器にはあんこやゴマが入っているので、そのまま売り物の餅が完成していくことになる。ここまで付き合った観衆ならば、ひとつやふたつは買いたくなるというもの。それでも買わない人は、餅だけにつきあいが悪い、と。お後がよろしくねぇようで。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

著書

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