こんな仕事絶対イヤだ!

医者だけでは食っていけない!?――治療床屋

2017.03.19 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第7回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

いつもは床屋、すわ救急時には医者に変身!

パッと見意味不明の職業名だが、実はかなり的確に内容を表わしている。つまり、『治療床屋』は医者と床屋さんの仕事をダブルで請け負っていたのである。中世ヨーロッパでは刃物を用いる職業がギルドによって管理されていたため、刃物つながりで2種類の職業がまとめられていたのだ。それに、医療保険など存在しなかったご時世である。手術費用は現代よりも割高で、そう頻繁に患者は訪れてこなかったから、安定した生活費を稼ぐ手段として普段は床屋をしていたのだ。

彼らにはなぜか占星術の心得も必要だった。当時の医学は人体の組成を“土・空気・火・水”と分類しており、治療の際患者に不足している要素はどれかを占星術の知識で見極める必要があった。患者のカルテと症状、さらには検尿の臭いと味を総合した結果、治療法が決定されたのだ。例えば、頭痛や湿疹には“瀉血(しゃけつ)”なる治療が行なわれた。患者に針を刺したり蛭(ひる)を這わせたりして、悪い血を排出させようというものだ。無論この治療法に効果はなく、ただでさえ衰弱している患者をさらに弱らせる結果になった。また、胃が悪い患者のためにはラッパ型の浣腸で食べ物を流し込んだりもしたが、やはりこの治療も患者のアナルを開発する以外の効果を成さなかった。ここまでやるともう刃物関係ねぇじゃん、という気もするのだがどうなのだろう。

現代医学を知る我々にとって、治療床屋の行なった施術には首を傾げてしまう部分が多い。しかし、当人たちは至極まじめであったし、患者からも信頼を置かれていた。医療技術の進歩に貢献した彼らに感謝しつつ、町の床屋さんから浣腸を流し込む阿鼻叫喚の声が聞こえてこない幸せを切に噛みしめたいところだ。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

著書

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