こんな仕事絶対イヤだ!

世にも怪しい村の女医――賢女

2017.03.26 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第9回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

かなり怪しいうんこ療法の伝道師

14世紀のイングランドにおいて、人々が健康に対して払う関心はただならぬものがあった。理由は、1348年に大流行したペストである。死者数は常軌を逸する勢いで増え続け、全人口の実に半数近くを死滅させたといわれている。人々は病気に怯えながら日々を過ごしたが、いざという時医者にかかれるほど裕福な人はごく少数であった。貧しい人たちは、近所に住む『賢女』のお世話になったのである。

賢女は、患者が訴えるあらゆる症状に民間療法で対応した。彼女自身も貧しく、“村の物知りおばさん”レベルの立ち位置だったから、薬が買えなかったのである。ゆえに、そこらへんの植物&虫や動物の死骸などオーガニック感あふれる素材を活用した。例えば、「虫歯になったら、痛い部分に叩き潰した猫の耳を3日貼る」、「イボができたら、ウナギの頭を切り落として血をイボに塗りこむ。ウナギの頭を土に埋めると、それが腐っていくのにあわせてイボが治る」などなど。

だが、真骨頂はこれからだ。彼女たちの治療法には、やたらと頻繁にうんこが登場するのである。曰く、「止血には温かい豚の糞を塗る」、「天然痘の予防には羊の糞とワインを混ぜたものをひと晩置いて飲む」、「耳が遠くなったら馬糞の中でウナギを腐らせ、それを耳に詰める」といった具合。これを実践させられた人々には同情の念を禁じえない。それにしても、うんことウナギ好きすぎだろこの人。

15世紀に入ると事態は急展開する。賢女たちの行ないが異端とみなされ、魔女狩りの格好の標的となったのだ。確かに彼女たちには充分すぎるほどの胡散臭さがあった。だが、その報いが絞首刑というのはあまりにも痛ましい。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

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金持ちの道楽として庭で飼われた「隠遁者」、貴族の吐いたゲロを素早く回収する...
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