欧米エリートが使っている人類最強の伝える技術

言い合いで負けないための、たった一つのポイント

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正義はセーフティネットである

交渉や説得に正義を持ち出すメリットの第二。
それは、こちらの意見や提案が結果的に間違っていたり、失敗に終わったりしても評判が下がりにくい、ということです。
これは個人のセルフブランディングを意識している人には、とくに大事な視点です。
勝っている時、調子のいい時のセルフブランディングは簡単です。放っておいても評判は上がるでしょう。難しいのは、失敗した時に他人にどう思われるのか。自分の評判を操作するためには、失敗した際のイメージダウンを最小限にすることが大事なのです。

その失敗した際の評判を守るのが正義です。
説得、交渉、プレゼンで、こちらの意見や提案が実は間違っていたということはよくあります。結果的にそれに賛同し、採用した相手に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。

こうした際、相手に「手柄を焦ってみんなに迷惑をかけた」と思われるのか、「みんなのためを思ってやったことだ」と思われるのかでは、個人の評判としては天と地の差があります。
だからこそ、説得や提案の際には正義を語っておくのです。「みんなのため」「社会のため」「会社のため」「未来のため」の意見であることをあらかじめ印象付けておくことが大事なのです。

勇気と正義はワンセット

前回、言葉に説得力を持たせるには、「勇気」を見せることが大事だと説明しました。これは「正義」と組み合わせることで完全なものになります。
というのも、勇気ある意見はリスクを伴います。ある意味では、それを採用すれば失敗はつきものなのです。だからこそ、こちらの意見や提案が失敗に終わったときに、周囲にどう思われるのかについても、同時に考えておかなくてはいけません。

そこで重要なのが、今回見てきた正義を語る行為です。
説得や交渉で勇気を見せたいのなら、そこで必ず自分の意見や提案の持つ正義も語っておきましょう。そうすることで、仮に失敗に終わった場合のセーフティネットも同時に張っておく。
それをせずに勇気ある提案や意見を繰り返し、結果として失敗を繰り返せば「自分の手柄のために周囲を巻き込むヤツ」「目立ちたいだけのヤツ」だと思われて評判は下がる一方です。
「勇気」と「正義」は必ずセットで使うべき武器なのです。

 

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プロフィール

高橋健太郎
高橋健太郎

横浜生まれ。古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける。近年は特に弁論と謀略がテーマ。著書に、アリストテレスの弁論術をダイジェストした『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、キケローの弁論術を扱った『言葉を「武器」にする技術』(文響社)、東洋式弁論術の古典『鬼谷子』を解説した『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社)などがある。

著書

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