前回は、チームマネジメントの視点から、父親として家庭内でどういう雑談をしたほうがいいか、とりわけ、子どもとの会話の始め方について書きました。
今回はさらに進めて、子どもとの関係を深めるための、会話の広げ方・盛り上げ方について書いてみたいと思います。
まず、子どもと会話を広げるにはどうしたらいいでしょうか。
子どもと話し始めてみたものの、なぜか話が広がっていかない。質問をたくさんしたり、失敗談を面白おかしく話したり、子どもが好きなことを話題にあげてみても、子どもが思うように乗ってこない。そんな経験は、だれしもあるのではないでしょうか。
会話が続かないのは、子どもとの会話を広げたり、盛り上げたりする技術がないからかもしれません。子どもとの会話を楽しくする技術について考えてみましょう。
では、まず「会話の広げ方」について考えてみます。
私たちビジネスパーソンは雑談の中で、共通点を探してしまうクセがあります。自分と同じようにゴルフをやるのか、自分と同じような年頃の子どもがいるのか、自分と同じような課題・悩みを抱えているのか。
もしそうした共通点が見つかれば、そこを足がかりに会話は自然と広がっていき、互いの共通点から関係性も深まっていくことも少なくありません。
ですが、こうした会話に慣れすぎたためか、子どもと話すときにも自分との共通点を探してしまいがちです。
たとえば、自分が野球が好きだからといって、子どもが野球に興味を示したとたんに前のめりで話してしまったり。子どもに勉強好きになってほしいという理想を持っているため、勉強の話題だけ熱心に話してしまったり。
また、親は子どもが生まれてからずっと一緒にいるのだから、子どもが自分と同じような感じ方をしている、と思いこんでいるところがあります。
ですが、親子であっても人生経験も違いますし、感じ方も大人と子どもではまったく違うでしょう。
子どもは、「違い」に気づいてもらうと喜びます。「知らないので教えてほしい」と言うと、喜ぶのです。そのため、子どもとする話の中で、親である自分と子どもで感じ方が違うところを見つけ、そこをくわしく聞いてあげると、会話は広がっていきます。
「電車が好きだよね。どんなところが好きなの?」
「僕はあまり興味が持てていなかったんだけど、電車の面白さを教えてもらえる?」
「電車はどんな楽しみ方をしている人が多いの?」
そんなふうに、大人である自分はわかっていないが、子どもが知っていることを掘り下げていくのです。そういう会話の広げ方ができるようになれば、自然と子どものほうから話してくれるようになるでしょう。
人は褒められると嬉しいものです。子どもの場合さらに顕著で、褒められればよりテンションが上がり、話は広がっていきます。
褒める際に、他人との比較で褒めるのはNGです。そうしてしまうと、上には上がいますから、褒めることができなくなります。また、比較によって変な自信をつけてしまい、周りを見下したりするようになってしまう危険性もあります。
褒める際のポイントは、ビフォーとアフターを比較することです。これなら、誰も傷つけることなく褒めることができます。
絵が描けるようになった、足が速くなった、勉強ができるようになった。そのときに他人との比較で褒めるのではなく、以前と比べてできるようになったことを褒めます。
このビフォーアフターを褒めるというのは、親であれば難しいことでないでしょう。親は子どもの生まれたての頃を知っているわけです。ビフォーアフターのビフォーを生まれた瞬間に置けば、生まれたては何もできなかったわけですから、あらゆることを褒めることができます。「生まれたころはできてなかったのにね、立派だね」とどんなことでも褒めてあげられるのです。
続いて、話の盛り上げ方です。「話の広げ方」は、子どもに会話を継続してもらうテクニックでしたが、「話の盛り上げ方」では、子どもを会話に引き込み、夢中にさせる方法です。
以前も話題にあげた、息子の担任のかっちゃん先生が、授業の中で、UFOキャッチャーで取ったスヌーピーの人形の話をするそうです。
その人形がいかに取るのが大変だったのか、取ったときにどんな気持ちだったのか、その人形に「スヌお」と名前を付けて大切にしているとか、そんな話をしたうえで、そのスヌおを使って授業をしているらしいのです。その授業が、小学生たちにとにかく大ウケとのこと。
うちの子もスヌーピーのぬいぐるみを見て「スヌおだ」と言いだしたり、スヌおをUFOキャッチャーで取りたいと言ったりしていました。
なんでもない話のようですが、かなりテクニカルな話術です。
かっちゃん先生は、ただ授業をするのではなく、子どもたちとスヌおとの出会いにまつわる波乱万丈の物語を共有したうえで、そのスヌおを使って、子どもたちを授業にも夢中させているのです。
このように、上手に面白い物語にして話すことができれば、退屈な話題であっても、子どもを夢中にさせ、盛り上げることができます。
たとえば、車に乗るには免許が必要だという、社会の仕組みを教えるような話をしたいと思ったら、
「〇〇くん、車運転できるようになりたい? 運転するには免許がいるんだけど、どうやって取るか知ってる? 免許の試験があってね、その試験のときパパはピキーンって緊張しすぎてさ、オニみたいな怖い顔をした試験官がね、パパに向かって……」
といったように、ストーリー仕立てで話すと、難しい話でも引きこむことができます。
「ピキーン」のような擬音や、「スヌお」のような響きの面白いワード、「オニみたいな怖い顔をした試験官」のようなキャラづけ、そして1人2役の話術などを使って話すと、どんなことも話すネタになり、盛り上げることができます。
複数人で話をするとき、「まわす人」「話す人」「聞く人」この3つの役割を担う人がいると、会話はとても盛り上がるそうです。なお、その役割は固定するのではなく、状況に応じてどの役割も担当できるのが雑談力の高い人の特徴です。
つまり親としては、子どもが話したいのか、聞きたいのか、その状況に合わせて、自在に役割を変えてふるまえるのが理想でしょう。
とはいえ、親は子どもに対して、聞き役にまわることが多いのではないでしょうか。
子どもは自分が話したいという欲求のほうが強いものです。そのため、聞き役ができるのはとても重要なことです。
それに加えて、かっちゃん先生のように、ときに話し役になっても子どもたちの爆笑をかっさらえる盛り上げ力を持っておくことと、子どもとの関係を築くうえでとても役に立つでしょう。